July 23, 2018 / 3:48 AM / 24 days ago

焦点:日本生命、石炭火力事業への新規投融資を停止 気候変動で

[東京 23日 ロイター」 - 日本生命保険は、石炭火力発電事業への新規投融資を国内外で停止する方針を決めた。日本生命がロイターの取材に答えた。環境問題への積極的な関与が世界の機関投資家の間での潮流となる中、日本勢も本格的に動き出した。

 7月23日、日本生命保険は、石炭火力発電事業への新規投融資を国内外で停止する方針を決めた。日本生命がロイターの取材に答えた。環境問題への積極的な関与が世界の機関投資家の間での潮流となる中、日本勢も本格的に動き出した。写真は2009年7月都内で撮影(2018年 ロイター)

ただ、日本の場合、政府が石炭火力を重要な電源と位置づけ、高効率な設備に置き換えることで環境負荷を軽減する方針も打ち出している。このため銀行などの金融機関が石炭火力関連から即座に撤退するには、残されたハードルもある。

「難しい議論だというのは認識している」──。日本生命・財務企画部の高石裕介担当課長は、社内での検討過程を振り返る。

同社では今年度から「ESG(環境・社会・ガバナンス)投融資ワーキンググループ」を立ち上げ、気候変動への対応の一環として石炭火力の扱いを議論してきた。

そこでは、石炭火力への投融資は止めるべきだという声とともに、電力の安定供給や国のエネルギー政策といった観点からどのような影響があるかなどについて、意見が出たという。

高石氏は、今回の見直しは気候変動への対応が目的で、石炭火力の否定を前面に打ち出すことを意図しているわけではないと説明する。そのため将来の石炭火力案件も、CCS(二酸化炭素の回収、貯留)技術を伴ったものならば、投融資の検討をするという。

日本生命は、石炭火力関連への投融資残高については非開示としている。ドイツの環境NGO・ウルゲバルトによると、日本生命による石炭火力関連企業の株式・社債投資の残高は約13億ドル(1430億円)。これら企業には、東京電力(9501.T)などの電力会社や商社も含まれている。

地球温暖化防止のための「パリ協定」を受け、2030年における温室効果ガスの削減目標が国別に定められている。「われわれのような長期投資家にとって、30年は遠い将来ではない。今、投資する案件は30年以降に満期を迎えるものも多い」と、高石氏はこのタイミングで方針見直しに至った経緯を説明する。

同様の動きは他の金融機関でも広がっている。第一生命保険も今年3月、海外の石炭火力発電向けの新規プロジェクトファイナンスを実施しないことを決定。「海外では先進国を中心に石炭についての意識が高まっている。ESG投資に前向きに取り組んでいるなかでの判断」と同社は説明している。

三井住友信託銀行も「今後、新たに建設が検討される石炭火力発電プロジェクトファイナンスには原則、取り組まない方針」という。

石炭火力発電の投融資を抑制する動きは欧州を中心に広がりつつあり、こうした海外勢の動きに対して、日本の金融機関は消極的との批判もあった。

ただ日本の場合、政府は石炭を基幹電源の燃料とし、コストや安定供給の観点から優れているとしており、国内金融機関は社会インフラ資金の担い手として、簡単に石炭火力への投融資から撤退できない事情もある。

さらに高効率で二酸化炭素の排出が少ないとされる「超々臨界圧」と呼ばれる技術を使った石炭火力プロジェクトに関し、政府が新興国などへの輸出を後押ししている。

このためメガバンクなどは、石炭火力案件について一概に否定するのではなく、環境への影響も含めた審査の厳格化で対応する方針だ。

電力不足が深刻な新興国などでは「効率の極めて高い石炭火力発電へのニーズが、大きいのも実態。金融機関としてはこうしたニーズに応えるのが使命」(三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)の平野信行社長)との声もある。

世界的にESGを意識した経営が強く求められる中、国の政策という現実を踏まえどのような対応ができるのか。石炭火力を巡る問題は金融機関が直面する課題の象徴となりつつある。

浦中大我 編集:田巻一彦

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