[ソウル/東京 2日 ロイター] - 北朝鮮は2日、断続的に少なくとも23発のミサイルを海上に向けて発射した。かねて非難していた米韓軍の大規模訓練「ビジラント・ストーム」への対抗措置とみられる。うち1発は南北境界である北方限界線(NLL)の韓国側の海上に落下し、韓国の尹錫悦大統領は事実上の領土侵犯と批判した。
<韓国領海近くに初めて落下>
ミサイル発射は2日朝から始まった。韓国軍によると日本海(韓国名:東海)に向けて発射した短距離弾道ミサイル3発のうちの1発が南北境界である北方限界線(NLL)の南26キロメートル、韓国東岸から60キロ弱の公海上に落下したと発表した。
北朝鮮の弾道ミサイルが韓国領海の近くに着弾したのは初めて。 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮はこの3発を含む14発もの多様な種類のミサイルを東岸と西岸から発射した。
韓国の尹錫悦大統領は北朝鮮のミサイル発射は実質的な領土侵犯と断じた。
韓国軍はその後、NLLの北に向けて空対地ミサイル3発を発射したと発表。大統領府はこれに先立ち「迅速かつ断固とした対応」で北朝鮮に「挑発行為の代償を払わせる」と表明していた。
浜田靖一防衛相は、北朝鮮が少なくとも2発の弾道ミサイルを東と南東方向に発射したと発表。落下したのは日本の排他的経済水域(EEZ)外で、変則軌道で飛行した可能性がある。
1発目が最高高度約150キロメートルで約150キロ飛行し、2発目は最高高度約100キロで約200キロ飛行したという。北京の大使館ルートを通じ北朝鮮に抗議したと明らかにした。
岸田文雄首相は「これまでにない高い頻度でミサイルが発射が繰り返されている。断じて容認することはできない」と官邸で記者団に述べた。朝鮮半島での緊張の高まりが見て取れることから、早急に国家安全保障会議(NSC)を開催すると語った。
<一時空襲警報>
韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮東部の元山から発射されたミサイルのうち少なくとも1発が韓国東岸の江原道・束草からわずか57キロメートル、鬱陵島から167キロの海上に落下したという。韓国軍はミサイル発射前後に同島に空襲警報を発令した。
慶尚北道・鬱陵郡の当局者はロイターに、午前8時55分ごろに警報が聞こえたので職員全員が地下の避難所に入り、海上に落下したと伝えられたことを受けて9時15分ごろに戻ったと語った。
韓国軍はその後、鬱陵島に発令していた空襲警報を解除したと発表した。
<米韓合同訓練に反発>
北朝鮮の朴正天朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長は2日の談話で、米韓の大規模な合同航空訓練「ビジラント・ストーム」について、「攻撃的かつ挑発的」であり、北朝鮮を明確な標的にしていることが参加する軍用機の多さで分かると批判。「敵対勢力の軍事衝突に向けた異常な動きが朝鮮半島に深刻な状況を生じさせた」とした。
韓国軍によると北朝鮮は2日午後には100発以上の砲弾を発射。合同参謀本部は、2018年の南北軍事協定に違反すると指摘した。
米国務省のプライス報道官は1日、共同訓練は「純粋な防衛目的」と強調し、北朝鮮側には敵意を抱いていないことを明確にしていると述べていた。
韓国の朴振外相はブリンケン米国務長官との電話会談で、北朝鮮のミサイル発射を「前例がない」もので、「重大な軍事的挑発行為」と指摘。韓国側によると、両外相は発射を非難し、北朝鮮の脅威に協力して対応することで合意した。
韓国国土交通省は今回の発射を受け、北朝鮮と日本の間の海上における一部航空路が3日朝まで閉鎖されると発表した。
韓国軍の報道官は、ミサイルの飛行経路が意図的なものか、コースから外れたものかを確認するため、当局が分析中だと述べた。
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