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焦点:金正恩体制10年の北朝鮮、軍備増強の一方で深まる孤立

[ソウル 16日 ロイター] - 北朝鮮で金正恩氏が権力の座に就いて10年が経過した。若き指導者の行動により、経済改革や国際的な門戸開放への期待は高まったが、軍備が強化される一方で孤立を深め、中国への依存を強めている。

北朝鮮で金正恩氏が権力の座に就いて10年が経過した。写真は2018年6月、米朝首脳会談に関するニュース報道を見る店主。ソウルで撮影(2021年 ロイター/Kim Hong-Ji)

金正恩時代の最初の10年を特徴づけたのは同総書記による核兵器開発の推進だった。しかしアナリストらは、この道を選んだことが彼を孤立させ、おそらくこれまでで最大の試練に直面する羽目に陥ったと指摘する。

荒廃した経済を改善し、数百万の国民を飢えさせないためには政治面での大転換が必要だが、この核兵器の存在が障害になるかもしれない。パンデミック対策としてのロックダウンと経済制裁が続く中で、中国への依存が強くなりすぎているからだ。

金総書記は、独特の個性を発揮した父親とは違うスタイルを選んだ。すなわち、組織化とリーダーシップの委譲による北朝鮮の「正常化」、核武装と外国指導者との首脳会談による国際的なリスペクトの獲得、透明性と一般市民の生活向上への共感の提示である。

こうしたスタイルのおかげで、社会主義国家である北朝鮮の経済改革や、米国・韓国といった長年の宿敵との関係改善への期待が高まった時期もあった。

だが、体制全体にわたる変革はこれまでのところ実現していない。政治犯収容所や残忍な処刑から経済・社会に対する厳しい統制に至るまで、父親が行った最悪の実践の多くを金総書記が依然として継承しているからだ。

「一般の北朝鮮国民が味わった金総書記による統治は、最初の数年は束の間の期待を抱かせたものの、結局は元に戻ってしまった、というものだろう」と語るのは、ライデン大学(オランダ)の朝鮮半島専門家クリストファー・グリーン氏。

金総書記はこれから難しい決断を迫られることになろう。核兵器開発のどれかを諦めて制裁解除を勝ち取るか、それとも不信感はあるが不可欠な中国との関係を通じて、また政治的な統制を緩めないまま経済・社会のさらなる開放を認めることで経済にテコ入れする別の方法を見つけるか、という選択だ。

米中央情報局(CIA)の元職員で、現在、ワシントンに本拠を置くスティムソン・センターに在籍するロバート・カーリン氏は、「経済をどうにかしようとしても、(制裁のせいで)金総書記にできることは限られている。とはいえ、国民から見て現状よりもはるかに好ましい指導者になれないという意味ではない」と述べた。

パンデミックによる打撃が過ぎ去れば、「管理された開放」への要求が体制内エリートから出てくるかもしれない。しかし、国際的な状況を北朝鮮に有利な方向に変化させるという課題はこれまで以上に困難なものになっている、とグリーン氏は指摘。「海外からの投資が大幅に増えなければ、経済改革という目標はほぼ確実に失敗に終わる」と付け加えた。

<核兵器vs経済制裁>

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北朝鮮による6回の核兵器実験のうち、初の水爆実験と思われるものを含め、4回は金正恩体制下で行われた。最大で米国まで射程圏内に収める一連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)も開発された。

金総書記にとって、こうした兵器は、北朝鮮と自らの支配体制を外部の脅威から守る「伝家の宝刀」であり、北朝鮮に他の核保有国と肩を並べる地位を与えるものだ。

一方で、この核開発のせいで、2017年には対米戦争の瀬戸際まで進んでしまい、友邦である中国とロシアまでもが国連による厳しい対北朝鮮制裁を容認する事態となった。

制裁緩和と対米関係の進展を目指す金総書記の努力は、歴史的かつ前例のないドナルド・トランプ米大統領(当時)との首脳会談に結実した。だが、制裁緩和の前提として北朝鮮がある程度の兵器を放棄することを米国が要求しているため、その後の協議は行き詰まっている。

米国を本拠とする新アメリカ安全保障センターのドゥヨン・キム氏は、金総書記は核外交において強硬姿勢を取り続ける可能性が高いとの見方を示した。核開発をさらに進めれば、交渉を進めるにせよ膠着(こうちゃく)状態にせよ、自身の政治的影響力と交渉力が増大するからだ。

「特に核開発、経済、そしてパンデミックが収束すれば外交まで含む全ての分野において、金総書記は、自分自身、そして自国のイメージをノーマルかつ現代的・先進的なものにしていくものと予想される」と同氏は説明した。

北京の戦略安全保障専門家ジャオ・トン氏によれば、北朝鮮が核兵器・ミサイルの開発を優先し、中国政府による国連制裁の支持を厳しく批判したため、中国と北朝鮮の関係はこれまでで最悪の状態に落ち込んだものの、金総書記はすぐさま関係修復にこぎ着けたという。

北朝鮮の対外貿易は限定的だが、その圧倒的大部分は中国相手であり、両国の現政権は、社会主義イデオロギーの推進と西側諸国による影響力への対抗という目標を共有している、とジャオ氏は述べた。

同氏は「金総書記は、自国の国際的な協力関係を多角化したいと望んでいるものの、中国をはじめ、考え方の近い少数の国からの援助に深く依存し続ける可能性が高い」との考えを示した。

<統制の強化>

前出のグリーン氏は、金総書記が権力の座に就いたばかりの数年間、独裁支配を支える利益供与ネットワークを運用するのに必要な利潤を生み出すことを目的に経済改革を試みたと指摘。「だが当時、改革に伴うリスクと反対派の声があまりにも大きかったため、彼は巻き戻しを図ったようだ」と述べた。

国連の人権問題調査担当者は、経済と食糧状況が好転しない限り、北朝鮮における社会的弱者は飢餓のリスクにさらされていると警告している。

パンデミックにより、北朝鮮はさらに経済統制を強化しており、多くの国民が依存するようになっていたヤミ市場も、公認された民間企業と同様に、今後の存続が危ぶまれている。

金正恩体制下の北朝鮮では、携帯電話のような新しいテクノロジーも普及したが、人権活動家の見解では、金総書記はその一方で、監視や抑圧的な政治統制においてもよりハイテク志向の手法を採用し、他国からの影響や国内の抵抗の兆候を違法化・排除しようとしているという。

とはいえ、キングスカレッジ・ロンドンの朝鮮半島専門家ラモン・パチェコパルド氏は、金総書記が外交を重視するのであれば、北朝鮮人民の生活を改善するという約束を実現に移すのは今からでも遅くはないとの見方を示した。

同氏は「結局のところ、金正恩時代は、パンデミック収束後に、彼が一般の北朝鮮国民の生活水準をどれだけ改善できるかによって評価されることになるだろう」と述べた。

(Josh Smith記者、翻訳:エァクレーレン)

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