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アングル:金正男氏暗殺の謎、北朝鮮「従来作戦」と異なる手口
2017年2月25日 / 01:17 / 9ヶ月前

アングル:金正男氏暗殺の謎、北朝鮮「従来作戦」と異なる手口

[ソウル 24日 ロイター] - 北朝鮮の指導者である金正恩氏と疎遠な関係にあった異母兄、金正男氏の奇妙な暗殺事件には、同国がこれまで海外で実行してきた作戦とは大きく異なる点がある、と専門家は指摘する。

 2月24日、北朝鮮の指導者である金正恩氏と疎遠な関係にあった異母兄、金正男氏の奇妙な暗殺事件には、同国がこれまで海外で実行してきた作戦とは大きく異なる点がある、と専門家は指摘。写真は北朝鮮の工作員だった金賢姫元死刑囚。1987年、大韓航空858便に爆弾を仕掛け、乗客乗員115人全員が死亡した。2009年韓国で撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

金正男氏は先週、マレーシア首都クアラルンプールの空港で殺害された。警察では即効性の毒物による攻撃を受けたと見ている。当局が実行犯として逮捕した2人の女性のうち、1人はインドネシア国籍、もう1人はベトナムのパスポートを持ち、ともに拘留されている。

韓国は、金正男氏の暗殺を計画したのは、「偵察総局(RGB)」と呼ばれる北朝鮮の謎の機関であると指摘している。

国際連合はRGBを北朝鮮の「中心的な情報機関」と位置付けており、北朝鮮の武器取引に関与しているとして、昨年3月に制裁対象に指定した。

だが、北朝鮮指導部に詳しい専門家のマイケル・マッデン氏によれば、自らの一族による王朝的な支配について公然と批判していた正男氏の姿勢が目立っていただけに、今回の暗殺はさまざまな機関による共同作戦だった可能性があるという。

「RGBは、たくさんある可能性の1つにすぎない。関与した機関を特定するには、少なくとも、もう1週間必要だろう」とマッデン氏は語る。

マレーシア警察は23日、北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル容疑者(47)を逮捕した。同容疑者は、漢方薬を扱う小さな会社に勤務しているとしてマレーシアの就労ビザを持ち、妻と2人の子どもと共にクアラルンプールで暮らしていた。

脱北者であるジャン・ジンスン氏によれば、リ容疑者のような海外在住の北朝鮮人を利用するやり方は、一流スパイの養成所である「35号室」による作戦の特徴だという。ジャン氏は、かつて朝鮮労働党内で「35号室」と並ぶ情報機関である「統一戦線部」に勤務していた。

「現実的な職業とスキルを備えた要員を育て、家族とともに海外に送り出して生活させる」とジャン氏は言う。「今回の金正男氏の事件のように緊急の機会が生じた場合に、そういう海外在住の要員を作戦で利用することになるので、かなり前から配置されている」

マッデン氏は、北朝鮮工作員の一部は所属機関を定めないフリーエージェントで、必要に応じて利用されるという。

また、北朝鮮の元駐英公使テ・ヨンホ氏が今月ロイターに語ったところによれば、大規模な海外作戦に際しては、北朝鮮国家保衛省、いわゆる「保衛部」の職員が少なくとも1人は配置されるという。

この保衛部職員は北朝鮮当局と直接連絡を取っているのが普通で、保衛部だけでなく、朝鮮労働党中央委員会からの指令も受けているという。

マレーシア警察は22日、北朝鮮大使館の高官を殺人事件の容疑者として特定した。

<シアン化合物入りタバコ>

北朝鮮による暗殺事件を計画するのが朝鮮労働党だとすれば、実行に当たるのは、公式には軍に属する偵察総局である。

これまでにも北朝鮮の情報機関は、ときおり暴力的な海外作戦を実行してきた歴史を持っている。通常は韓国側の標的に対する攻撃だ。

1968年、当時の「偵察局」第124部隊に所属する特殊部隊員が、韓国の大統領府である青瓦台から数百メートル以内に侵入した。彼らには当時の朴正熙大統領を殺害するという指令が下されていた。

マッデン氏は、北朝鮮の情報機関には「50年の歴史があり、機関・作戦に関する膨大な蓄積がある」と語る。「こうした人々は、厳しく無情なスパイ組織のリーダーや作戦指揮官のもとで学んでいる」

現在の北朝鮮スパイたちは、「北朝鮮情報機関の創設者たちから見て第2世代、第3世代に当たる」と同氏は言う。

しかし、金正男氏暗殺の実行犯とされているベトナム国籍やインドネシア国籍の女性たちのような外国人の手先を利用することは、北朝鮮による作戦の常道からは外れている。

1987年、北朝鮮の工作員だった金賢姫(キム・ヒョンヒ)が大韓航空858便に爆弾を仕掛け、ベンガル湾上空での爆発により乗客乗員115人全員が死亡した。

逮捕された金賢姫は韓国に引き渡され、その後謝罪して、軍事スパイとしての訓練の詳細を、1993年の回想録「Tears of my Soul」で暴露した。

金賢姫・元死刑囚はその回想録で、任務に向けて出発する際に、見たところ通常の「マルボロ」に見えるタバコを1箱渡されたと書いている。1本の煙草に少量の黒インクで印が付けてあり、ここを噛めば即死するようになっていたという。

逮捕されたときにこの煙草を噛んだが、仕込まれたシアン化合物による自害には失敗した。彼女は回想録で、北朝鮮建国時の指導者の名を挙げ、「金日成の忠実な娘として、従順な犬のように訓練された私は、この瞬間に死んだ」と書いている。大韓航空機爆破については、故金日成国家主席から直筆の命令書を渡されたという。

金日成主席は、殺害された金正男氏、現指導者の金正恩氏の祖父に当たる。

(翻訳:エァクレーレン)

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