March 9, 2018 / 3:01 AM / 6 months ago

初の米朝首脳会談、5月までに実現へ:識者はこうみる

[9日 ロイター] - トランプ米大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の要請に応じ、5月までに史上初の米朝首脳会談を実施する意向だと、訪米中の韓国特使が8日明らかにした。

──関連記事:米大統領、北朝鮮の金正恩氏と5月までに初会談の意向=韓国特使

実現すれば、北朝鮮の核問題を巡るこう着状態を打開する劇的な展開となる可能性がある。

政府関係者や外交専門家、市場関係者の見方は以下の通り。

●失敗のリスクヘッジを

<クリントン政権で北朝鮮と交渉したペリー元国防長官>

これは、お互い侮辱し合うことで成り立ってきた外交の大きな前進だ。

だが、この会談では鍵となる疑問が2つある。まず何を話し合うのか、ということだ。つまり、米国は何を得ようと考え、何を差し出す意思があるのか。次に、対話が行われている間どうするのか。米国と同盟国は、北朝鮮に現在かけている圧力を維持するのか。北朝鮮は、ミサイル・核兵器の開発や実験を継続するのか。

最初の疑問点について、米政府の発表を見ると、米国の目標は、北朝鮮が核兵器を解体し、核の非保有国となることにある。北朝鮮にそこまでする意思があるのか疑う理由は十二分にある。仮に北朝鮮にその意思があったとしても、根本的な問題が残る。そのような合意の遂行を、どうやって確認するか、ということだ。

対話には十分な理由がある。だがそれは、合理的に確認でき、実行する価値があるものについて話し合う場合に限る。さもなければ、われわれは大きな外交的失敗のお膳立てをすることになる。そうした失敗のリスクをヘッジするには、対話が続く間は(核実験などの)良からぬ行為を制限する合意を事前に取り付けておくのが賢明だろう。

●中国は「蚊帳の外」を懸念

<カーネギー清華グローバル政策センターの北朝鮮専門家 趙通氏>

現時点で、北朝鮮には2つの目的がある。1つは、米国を含む国際社会に核の現実を受け入れてもらうこと。2つ目は、できるだけ早く経済的圧力を和らげることだ。それ故、金正恩氏はトランプ米大統領との首脳会談を急いでいる。

これまで米朝首脳会談が行われたことは一度もない。北朝鮮がすでに核兵器を手に入れた後で会談を行うことは、基本的にはそれを前提に米国は北朝鮮と交渉に臨む用意があるというシグナルを送ることになる。そうなれば、たとえ首脳会談で何ら進展がなくても、北朝鮮は1つ目の目的を果たすことになる。

制裁を強化しても、北朝鮮が現在保有する能力を手放すとは思えない。トランプ氏は制裁の効果を評価し過ぎている。

北朝鮮が核実験とミサイル実験を停止する代わりに、米韓も大規模軍事演習を中止するという、(中国が提案した)戦略を支持するようなことを北朝鮮が基本的に提案したという意味において、中国は非常に気分を良くするだろう。

米朝が直接会談し交渉を行うとなれば、中国はもはや最も重要なプレイヤーではなくなる。また、このように急速なペースで進展していることを考えると、中国は概してこの進展を支持しているものの、自国が蚊帳の外に置かれ、コントロールを失うことへの懸念が中国国内では高まっている。

●意外だが歓迎すべき進展

<ロバート・ガルーチ元国務次官補 1994年の北朝鮮危機で米国側の交渉役>

意外だが歓迎すべき進展だ。米朝両国の代表者が会い、最終的には首脳会談が行われれば、緊張と戦争リスクを低下させる上でかなり進展が見られることになるだろう。

交渉によって、北朝鮮による核兵器プログラムの放棄と長距離弾道ミサイルの開発停止を目的とする検証可能な取り決めがなされるならば、北朝鮮と米国、そして他の世界との間の緊張と敵対心の主たる原因も取り除かれることになるだろう。

●平和的解決に向けた希望に

<米共和党リンジー・グラハム上院議員のツイート>

トランプ大統領と何度も議論を経て、北朝鮮と核の脅威に対する大統領の断固とした姿勢が、この数十年で一番の平和的解決に向けた希望を与えてくれると私は固く信じている。

私はナイーブではない。過去が未来の指標だとするなら、北朝鮮は言葉ばかりで行動しないだろう。しかし北朝鮮はいま、トランプ大統領が必要に迫られれば軍事行動を起こすと考えていると思う。

北朝鮮の金正恩氏に1つ警告しておこう。トランプ大統領と直接会って、欺こうとするのは、最悪の行動だ。もしそれを試みるなら、あなたはとあなたの政権は終焉を迎えるだろう。

●リスクとチャンス両方が存在

<ボニー・グレイザー氏、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)で中国安全保障問題などを担当>

トランプ大統領はディールメーカーであり、恐らく独力で金正恩氏に核兵器放棄を説得できると考えているのだろう。トランプ大統領が正恩氏と会うことには、リスクとチャンスの両方がある。米国側は、極めて周到に準備して、何を達成したいのか明確に自覚する必要がある。見返りに何を提供する意思があるのかも、だ。

●米韓は圧力維持を

<米下院外交委員会のエド・ロイス委員長>

金正恩氏が対話の意欲を示したことは、制裁が効果を上げつつあることを示している。われわれは、外交を追求しつつ、圧力をきっちりとかけ続ける。

北朝鮮政権は、譲歩を引き出し時間を稼ぐために繰り返し対話や空約束を繰り返してきた。そうすることで、核とミサイルプログラムを前進させてきた。

このサイクルを破らなければならない。米国と韓国は肩を組み、この脅威を平和的に終わらせるために圧力を維持しなければならない。中国も、やるべきことをやらなければならない。

●米国は慎重になるべき

<ダニエル・ラッセル氏、米国務省の元アジア・太平洋担当次官補>

北朝鮮が何を提案し、何をする意思があるのか直接聞こう。これまでの経緯を踏まえれば、慎重になるべき理由は十分にある。次に、詳細な点まで綿密に点検しよう。北朝鮮はこれまでにも平和への歩み寄りを見せたことがあるが、結局は精査に耐えられなかった。

北朝鮮はこれまで何年も、米大統領と北朝鮮指導者とが核保有国同士として対等な立場で会談することを提案してきたことを、思い出す必要がある。今回新しいのは、(首脳会談の)提案ではなく、(それを受け入れた米側の)対応だ。

●非核化、過去の経緯から疑問

<SMBC日興証券 金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>

トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長と5月までに会談する意向を示したことが明らかになった。

平昌冬季パラリンピック終了後の米国の軍事オプション行使を警戒して、北朝鮮の「微笑み外交」が積極化している。経済制裁の効果が出てきている。

米朝会談でトランプ大統領は、非核化について要求を突きつけるはずだ。会談が行われるまでは緊張が緩和した状態が続くと思うが、会談で非核化に関して議論が決裂すれば、その後のリスクは高まるだろう。

米朝が合意して朝鮮半島の非核化が進むかという点は、過去の経緯を考え合わせると、疑問符が付く。

●ドル安基調転換には至らずも安心材料

<みずほ証券 チーフFXストラテジスト 鈴木健吾氏>

金正恩・朝鮮労働党委員長が今後、核・ミサイル実験を控えると表明したと伝わっている。現在、地政学リスクは旬のテーマではなかったが、去年はたびたびこの問題でリスクオフになったことを考えると、為替市場にも悪い話ではない。とりあえずは円安材料と言えそうだ。

旬なテーマの米通商政策も、トランプ政権のやり方が見えてきた。当初、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税について「どの国に対しても例外を認めない」と発言していたが、だいぶ例外がある話になってきた。国内経済に保護的な姿勢を示しながらも、例外などを散りばめて、世界経済への影響や貿易戦争への突入は避けようとしている。

今回の鉄鋼・アルミ関税措置も、有権者へのアピールや北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡る取引材料として打ち出した可能性がある。今後も選挙を控えて保護主義姿勢を強めることには警戒が必要だが、世界を巻き込んだ「貿易戦争」には至らず、その都度の瞬間的なドル売り材料にとどまるのではないか。

貿易戦争の先鋭化を背景としたドルの105円割れはいったん回避できたとみるが、107円台にしっかり乗せ、108円を試すような展開にならないと、ドル安トレンドが完全に転換したとは言えない。

●緊張緩和より米関税懸念の後退が日本株支援

<野村証券 エクイティ・マーケット・ストラテジスト 伊藤高志氏>

昨年から北朝鮮の態度は強硬なものとなっていた。北朝鮮がミサイルを発射した後の日本株の反応を振り返ると、一回だけ大きく下げた時があったが、ほとんどなかったと言っていい。北朝鮮情勢を憂慮して株価が下落し、緊張緩和により(下落分を)取り戻す動きがあるかというと、そもそも取り戻すものがない。

北朝鮮という国家が存続するという前提で、これからも市場は動いていかなければならないが、何か強いリスクを市場が感じた際にはリスクの低い資産に資金が流れる。過去を見ても条件反射的な円買いが頻発してきた。足元では円安が進み、日本株も動きやすくなっている。

ただ、今日の株高・円安の動きは、米国の関税の問題が思ったよりは交渉の余地がありそうだ、といった見方によるところが大きい。直近の株価が、関税を巡る米トランプ大統領の姿勢と、EU(欧州連合)と中国による対抗姿勢を嫌気していたのは明白だった。

通商リスクと地政学リスクは同じリスクでも性格が異なる。地政学リスクが完全になくなり、本当に安心して投資できる環境が実現したことなど人類の歴史上存在しない。永遠に付き合わなければならないリスクに対し、株式市場は鈍感にならざるを得ない。

通商リスクは国家間の交渉など、ある程度先が読める側面がある。報復の応酬やブロック経済化など最悪のシナリオに対し市場は身構えていたが、米国があくまで交渉の材料として使っていたと確認できたことで、投資家の心理的な負担が軽くなったとみている。

●「コリア・ディスカウント」を緩和

<韓国財務省ディレクター KO KWANG-HEE氏>

市場にとっては安心材料となり、センチメントを押し上げることは確かだが、外国の投資家は、(米朝首脳会談で)実際に何か進展が示される5月まで大きな投資判断を行うのは控えるだろう。

いわゆる「コリア・ディスカウント」を緩和させる可能性のあるポジティブな兆候だと言える。

●今後の進展次第では長続きしない可能性

<キウム証券(ソウル)チーフエコノミスト HONG CHUN-UK氏>

良いニュースであることに間違いない。だが、さらに強力な行動が後に続かない限り、これも長続きしないだろう。今日の韓国株式市場はいつもより強く反応しているが、これはすべて北朝鮮に関するニュースに起因するものではなく、韓国企業の決算が予想より悪くない兆しが見え始めているからだ。

●過剰な熱狂には慎重

<ナティクシス(香港)シニアエコノミスト TRINH NGUYEN氏>

緊張緩和がどの程度実現されるかはまだ分からないが、これは金融市場にとって、とりわけ韓国市場にとって明らかに良いニュースだ。

たとえ緊張が今にも爆発しそうでも衝突が起きる可能性は低いため、北朝鮮危機が実質的に韓国への投資に影響しないと、われわれ投資家は常に考えてきた。

投資家は、最近の緊張の高まりに対する過剰な悲観主義と同様、過剰な熱狂にも慎重に構えるだろう。

今回のニュースは、韓国成長回復にとって問題の1つを少なくとも短期的に改善する。言い換えれば、2018年は2.8%成長というわれわれの見通しが変わることはないとみている。

*内容を追加します。

3月9日、トランプ米大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の要請に応じ、5月までに史上初の米朝首脳会談を実施する意向だと、訪米中の韓国特使が8日明らかにした。トランプ氏の写真は2017年5月撮影。金氏は2016年5月提供。(2018年 ロイター/KCNA/Lucas Jackson)

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