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インタビュー:日銀、年内の金利引き上げ困難 来年は米欧利下げで円高も=渡辺元財務官

[東京 26日 ロイター] - 渡辺博史元財務官(国際通貨研究所理事長)は26日、ロイターとのインタビューで、日銀が年内に金利を引き上げるのは難しいと述べた。来年以降は米欧中銀が順次利下げを始める公算が大きく、為替が円高方向に進むとの見通しを示すとともに、1ドル115円程度なら金融緩和強化などの政策対応は不要との見解を示した。

 4月26日、渡辺博史元財務官(写真)はロイターとのインタビューで、日銀が年内に金利を引き上げるのは難しいと述べた。都内で2月撮影(2023年 時事通信)

<日銀今週は無風、円高進行時に緩和強化手段乏しい>

渡辺氏は、日銀が27─28日に開く植田和男新総裁の下での初の金融政策決定会合について「短観の内容が悪いことなどから、金利を上げることにはならない。何かやるとは思わない」と述べた。金融市場関係者の間でも「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の予想変更時期が後ろ倒しされている」と指摘。「日銀の金利引き上げは、年内は難しい」との見通しを示した。

一方、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営は、年内にあと1回利上げを行い、その後は政策金利を据え置き、利下げは来年前半になるとの見通しを示した。欧州中央銀行も来年は利下げを開始する可能性があると述べた。

このため内外金利差縮小により来年は為替が円高方向に進むと予想。同時にドル/円が現在の135円程度から115円程度まで円高が進んでも「困る人は少ない」とし、「ある程度の円高を許容すべき」で政策対応は不要との見解を示した。

日銀についてはそもそも緩和強化手段が「永久債購入か上場投資信託(ETF)の買い入れしか残されていない」として今以上の緩和強化は難しいとの見解を示した。

<対ロ経済制裁、効果少ない>

米国のシリコンバレー銀、ファースト・リパブリック銀や、クレディスイスなど欧米金融機関の信用不安問題については、米国やスイスが「一つの政府に一つの中央銀行の国だから迅速に対応ができた」と指摘。ドイツやイタリアなどユーロ圏諸国で問題のある金融機関が発覚した場合、ユーロ圏内で「救済不要など異論が出る可能性があり、ECBのアクションが若干心配」と述べた。

5月に広島で開かれる主要国(G7)首脳会談(サミット)を控え、対ロ制裁のさらなる強化の可能性が取りざたされているが、「ロシアはエネルギーと食料が無限にある国で、マクドナルドやスターバックスなど(の嗜好品)を購入できるのはモスクワやサンクトペテルブルクなど(大都市圏)に限定されており、経済制裁は効果がない。エネルギー価格上昇で欧州各国がインフレに苦しむように、制裁を課す国が先に疲弊する」との見方を示した。

もっとも対ロ全面禁輸に前向きとされる米国に日本が率先して反対するならば「日本はG7内で(ロシア・中国寄りの)コウモリ扱いされるリスクがあり、日本はドイツなどと歩調を合わせるのが望ましい」と語った。

(竹本能文、木原麗花 編集:石田仁志)

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