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北京五輪の日本代表も注目する「古武術」の動き

 西山誠慈 記者

 3月11日、北京五輪の代表選手など日本のトップ・アスリートの間で「古武術」が注目されている。写真は古武術を研究している甲野善紀氏。2月撮影(2008年 ロイター/Yuriko Nakao)

 [東京 11日 ロイター] 北京オリンピックの代表選手を始め、日本のトップ・アスリートの間で「古武術」が注目されている。現代人の体の動かし方とは大きく異なり、従来のスポーツ現場で教えられてきた考えとも一線を画すが、生死を賭けた武士たちに受け継がれてきた技を取り入れる選手が増えている。

 古武術を30年来研究してきた甲野善紀氏。眼光鋭く、真剣で空を切る姿は武士そのもの。「彼らは常にやるかやられるかの修羅場を潜り抜けて来た」と言い、最も素早く、効率的な動きのみが後世に残ったと説明する。

 その原理のひとつが「ねじれ」をなくすこと。たとえばボクサーがパンチを打つ場合、肩をねじり、貯めを作ってから前方に拳を出すが、この動きを見て相手はパンチを予測し、避けることが可能になる。しかし甲野氏は、ジャブのようにねじれや貯めがない動きから逃れるのは難しいとしている。

 神戸女学院大学の客員教授でもある甲野氏は、一般向けの講座を多数開いているが、その技はオリンピック代表も取り入れている。世界陸上で日本人として初の短距離走メダリストとなった末続慎吾もその一人。腰をねじらず、腕をまったく振らない、もしくは脚と同じ側の腕を振る「なんば」と呼ばれる歩き方を走りに取り入れたと公言している。また、全日本卓球選手権女子シングルスで4度優勝し、北京オリンピック代表に内定している平野早矢香も、甲野の下を訪ねたアスリートの一人だ。

 <介護の現場でも注目>

 最近は介護の現場でも甲野氏の技が取り入れられている。ひとつの関節を起点に身体を動かすのでなく、同時に多くの部分を使うことによってより強い力を発揮できると甲野氏は言う。体の自由が利かない老人などを持ち上げたりする介護士は、恒常的に腰痛に悩まされている人が多い。甲野氏によると、人を抱きかかえる際にいったん手のひらを返すことによって腕の力が抜け、体全体を使うことができる。

 自分より重いカメラマンを持ち上げながら「これが正しいとは言わないが、多くの介護士が腰痛であるなら、よりましなのかもしれない」と甲野氏は言う。

 埼玉県春日部市にある介護老人福祉施設清寿園。新しい職員にはユニフォームとともに腰痛ベルトが支給され、多くの介護士が体の痛みを感じる現状を少しでも変えようと古武術を取り入れている。昨年入社した鈴木絢香さんも介護は体にきついものだと思っていた職員の一人だったが、古武術の講習を受けて考えが変わったという。「体全体の力を利用することで、こんなにも大きな力にあるんだということを実感できた。今後は腕の力だけに頼らないこと、身体全体を意識した介護を心がけていきたい」と話している。

(ロイター日本語ニュース 西山誠慈 記者)

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