July 4, 2019 / 2:31 AM / in 3 months

アングル:ロシアとOPECが「政略結婚」、米にらみ石油ゲーム

[ウィーン 2日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領が先週末、石油出国機構(OPEC)の正式決定前に石油の減産延長を明らかにしたことは、加盟国の一部を怒らせた。

 7月2日、OPECは石油減産の延長を決定。その1週間前にロシアのプーチン大統領が減産方針を明らかにしたことは、OPEC側の怒りを買った。写真はG20サミット期間中に会談したプーチン大統領(右)とサウジアラビアのムハンマド皇太子。6月29日、ロシア政府が大阪市で撮影(2019年 ロイター)

かつては石油市場におけるライバルと目されていた非加盟国のロシアが、OPECの政策形成に主導的な役割を果たしていると困惑したためである。

とはいえ、彼らもすぐに現実を受け入れ、石油価格押し上げというOPECの目標達成に向けてロシアは頼れるということを認めた。何しろ今は、トランプ米大統領という別の方面からの圧力も強まっている。

<OPECの心変わり>

トランプ氏は現在、OPEC、そしてその事実上のリーダーであるサウジアラビアに対してかつてないほどの圧力をかけ、原油増産によって燃料価格を引き下げるよう要求している。2020年の大統領再選をめざすトランプ氏にとって、燃料価格の抑制は重要な国内問題である。

イランのザンギャネ石油相は当初、プーチン大統領が減産延長を事前に発表したことに激しい怒りを表明していた。

同石油相は1日、OPEC加盟国の石油相が会合を開き、実質的に既定の合意を型通り承認するのに先立って、「このようなやり方では、OPECは死んでいくことになる」と断言し、ロシアとサウジに牛耳られていることを嘆いた。

ところがその日の夜になると、ザンギャネ石油相は「会合はイランにとって好ましいものであり、我々は望んでいた成果を挙げた」として、合意を支持する側に回った。

こうしてOPECとロシアは思いもよらぬ提携関係に入り、米国による増産と世界経済の成長鈍化に抵抗して、「OPECプラス」同盟を結成してグローバルな石油供給を抑制することになった。

これは、OPECとロシア双方がそれぞれの財政を強化するために原油価格の上昇を望んでいることによる、いわば政略結婚的な関係だが、トランプ政権からの要求に対してOPECの立場を強化することにもなりうる。

サウジアラビアのファリハエネルギー相は、今やプーチン氏がOPECのボスになったのかという質問に対し、「ロシアが支配しているとは考えていない」と述べた。「ロシアの影響力は歓迎されていると私には思える」

イランのカゼンプールOPEC理事も、自身の上司であるザンギャネ石油相の融和的な論調に呼応するように、こうした見解に同意する。

「ロシアは大きな産油国だ。ロシアがOPEC加盟国と何か合意したと発表するならば、それは歓迎すべきことだ」と、カゼンプール氏は言う。「我々は協力関係にある」

イランを抜いてサウジアラビアに次ぐOPEC第2の産油国となり、欧州・アジア市場でもイランの市場シェアを奪っているイラクも、やはりロシアの役割増大に好意的である。

数十年にわたって敵意と不信に彩られてきたロシアとの関係を鑑みれば、OPEC加盟国が一致してロシアを歓迎するのは大きな方針転換である。

2001年には、ロシアはOPECと歩調を合わせて減産に合意したが、その公約を守ることなく、逆に増産した。これは両者の関係をひどく損なった。その後、協力を試みては失敗を重ねてきたが、ようやく最近になって努力が実った。

サウジアラビア元石油相のナイミ氏は、著書「Out of Desert(砂漠より)」の中で、2014年のロシア当局者との会合は数分で終ってしまったと書いている。ロシアに減産の考えがないことが分り、彼は資料をまとめ、「これで会合は終わりということだな」と言ったという。

<石油市場に力の変化>

プーチン氏は6月29日、大阪市で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合のかたわら、サウジのムハンマド皇太子と会って「OPECプラス」による減産延長に合意したことを明らかにした。

ブラック・ゴールド・インベスターズのゲイリー・ロス最高経営責任者(CEO)は、サウジがプーチン大統領の発表を止めなかったことが仮に「配慮に欠けていた」としても、そこには石油市場における力関係の変化が現れていると話す。

OPECの動向をずっと追い続けてきたロス氏は、「トランプ大統領にとって原油価格は安い方がありがたい。だがプーチンは価格上昇を望んでいる」と言う。「プーチン大統領はOPECにとって非常に重要な存在だ。そしてロシアにとっても、予算の半分をエネルギー関連収入に頼っているだけに、依然としてOPECとの協力が最善である」

ロシアが財政収支を均衡させるには1バレル45─50ドルの水準が必要であり、懐事情はクリミア半島併合後、米国が科した制裁によって厳しくなっている。サウジは1バレル80ドルという、さらに高い価格を必要としている。ベンチマークとなるこの地域のブレント価格は現在、1バレル65ドルだ。

トランプ氏はサウジに対し、イランとの対立において米国の軍事支援を望むなら石油を増産するよう要求しているが、サウジがこの要求に抵抗する上でロシアとの協力関係はある程度支えになる。

同時に、プーチン大統領にとっても歳入の増加以上の利益をもたらしている。米国の同盟国であるサウジとの関係が良好であれば、中東でロシアの影響力が高まり、シリア内戦におけるプーチン政権にプラスになる。OPECの会合が開かれるオーストリアのウィーンに派遣されているロシア代表団の関係者は、米国政府との関係改善にさえ役立つかもしれないと話す。

こうした複雑な役割を象徴するかのように、ロシアのノバク・エネルギー相は、サウジ、イラン、トルコ、カタールなどとの協力関係を議論する複数の政府委員会トップを務めている。

特にイランの態度の変化は、同国が直面する政治面、経済面でのプレッシャーをよく表している。

トランプ氏が再び強める制裁の影響で、イランの原油生産量は減少している。OPECにおける影響力が低下する一方で、サウジ、そしてOPEC非加盟国であるロシアの存在が増大している。

2018年4月に1日250万バレルだったイランの原油輸出量は、今年6月には30万バレルまで急減した。

一方で、イラン自身もロシアからの支援を当てにしている。石油輸出を締め上げ、イラン経済に打撃を与えている制裁に対抗するための支援をイランに申し出ている数少ない国の1つだからだ。

ロシアのエネルギー業界関係者は、イラン経済をテコ入れするための取組みがいくつか進められているが、協議の進ちょくは遅く、難しいと話す。計画の詳細は明らかにしなかった。

(翻訳:エァクレーレン)

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