December 18, 2015 / 3:04 AM / 3 years ago

コラム:原油相場の安定という幻想

[ロンドン 16日 ロイター] - 今後数年、原油価格はどんなトレンドをたどるのか。私たちに分かっているのはただ一つ、大半の予想は外れる、ということだけだ。

 12月16日、今後数年、原油価格はどんなトレンドをたどるのか。私たちに分かっているのはただ一つ、大半の予想は外れる、ということだけだ。写真は2011年、ロンドンのリサイクル場にある油だまり上の表示(2015年 ロイター/Stefan Wermuth)

原油市場では、顧客にとっての価値、限界生産コスト、利用可能な代替原料の価格などの点から原油価格を確定ないし予想しようとするすべての試みが裏切られてきた。

「ミネラルウォーター『エビアン』よりも原油の方がはるかに安いというのは、経済的に見て異常事態であるように思えた」と、玉座を追われたイラン国王は、1970年代に原油価格上昇を画策したことについて回想録のなかで弁明している。

パーレビ元国王は、燃料だけでなく石油化学製品も含めて7万種類以上もの製品の原料になるのだから、原油は本質的に貴重であるはずだと考えていた(「Answers to History」、1980年)。

だが、その後3分の1世紀以上が経過したが、原油は依然としてミネラルウォーターよりも安い価格で売られている。米国、イギリスのスーパーで販売されている水の価格は、1バレルあたり100ドル以上に相当する。

1970年代末、OPECの長期価格政策委員会は別のアプローチを採用し、最もコストが近い代替原料をわずかに下回る水準まで原油価格を段階的に引き上げるべきであると提言した。

当時の一般的な考え方によれば、相互に代替となるエネルギー源のコストは同一であるべきだとされていた。OPECが主要な競合エネルギー源と考えていたのは合成ディーゼル燃料及び石炭由来のガソリンだった。

合成燃料の生産コストが1バレル60ドル前後と考えられていたため(今日の価格では約200ドル)、この水準がOPECにとっての暗黙の長期的目標となった(「Genie out of the bottle」Akins、1995年)。

OPECは1980年に、平均価格を1バレル約37ドル(実質ベースで107ドル)まで上昇させることに成功した。だがその後6年間にわたって市場は停滞し、1986年には1バレルわずか14ドル(実質ベースで約30ドル)まで下がってしまった。

結局のところ、OPECにとっての主要な競合製品は、コストの高い合成燃料製造プラントではなく、アラスカ、メキシコ湾、北海、ソ連、中国など、OPECよりはるかに生産コストの低いライバルの原油生産国だったのである。

また別の折には、エコノミストや原油生産者が、原油価格は限界生産コストによって決定されるべきだと想定していた。1980年代に限界コストで生産が行われていると考えられていたのは北海油田だった。

原油価格が1バレル20ドル以下と低迷した1980年代末、OPECの元事務局長Ali Jaidah氏は、いったいどうしてこのような低価格が持続可能なのか、と首をひねった。

「価格がこんなに低くて、高コストの原油部門への投資を果たして維持できるのか、正直なところ私には理解できない。どこかの誰かが無一文になっているに違いない」

近年では、限界生産者は北米のシェールオイル生産企業であると考えられており、専門家によれば、その生産コストは1バレル80─90ドルと判定されている。

2014年7月に価格暴落が始まる前には、業界幹部やアナリスト、OPECのあいだでは、1バレル100ドルが新たな価格の「底」になったという信頼感が広がっていた。

「かつての20ドルは今の100ドル」という趣旨の発言を耳にすることも珍しくなかった。シェールオイル及び複雑な巨大プロジェクトの限界コストが100ドルだったからである。

だが、原油価格が下落し、原油生産者が効率改善を迫られるなかで、シェールオイルの限界コストは50─60ドルにすぎないことが明らかになった。

現在、ほとんどの石油メジャー及びOPEC加盟国は、長期的な原油価格が1バレル60─80ドル前後であるような状況に備えつつある。

<予想は常に間違える>

すでに、長期(5年以上)にわたり、いやそれどころか中期(2─5年)でさえも、原油価格を確定ないし予測することなど誰にも無理だったことは明らかになったはずだ。

2─3ヶ月以上先の原油価格を、誰かが正確に一貫して予測できたという証拠はない。数年後、数十年後の予測など論外である。

「原油価格は2020年までに1バレルXドル前後になるだろう」もしくは「原油価格はXドル前後で安定するだろう、なぜなら──」といった予測はほぼ確実に間違える。

まず、そうした予測がどのような想定に立っているのか、これまでの予測が外れてきたのはどのような理由か、ということを問うてみることが第一歩だ。

1970年代、OPECは北海、アラスカ、メキシコ湾、ソ連、中国といったライバル生産国の台頭を予見できなかった。

1980年代や1980年代のOPECは、「高コスト」地域として見限られていた北海が1バレル30ドル以下の実勢価格で生産を続けられるとは予想していなかった。

2010年代になると、シェールオイルの生産量が拡大し、従来想定されていたよりもはるかに低い価格でも競争力を維持できることが予想できなかった。

<不安定さこそが常態>

歴史から学ぶべきもう一つの教訓は、原油価格は他のコモディティ価格と同様に、本質的に不安定であるということだ。不安定さというのは、コモディティ市場に偶然そなわっている属性ではない。それは、コモディティ市場の決定的な特徴なのだ。

1859年、エドウィン・ドレイクがペンシルバニア州で初めて油井掘削に成功し、現代の石油産業が産声を上げたとき以来、原油価格は常に不安定だった。

それから20年も経たないうちに、初期の石油産業史家の1人は次のように書いている。「原油には確かな価値も、決まった価値もない。1ガロン50セントで売られている、25セントで売られているという事実が何かを証明しているわけではない。1859年にはその値段で売られていたが、生産初日に市場は崩壊し」価格は暴落した、という(「Early and later history of petroleum」、Henry、1873年)。

1860年代の原油価格は1バレル数ドルからわずか数セントまで激しく変動し、その極端な不安定さはその後も変わることなく続いている(「Pennsylvania petroleum 1750-1872」、Giddens、1947年)。

過去150年、民間企業・各国政府がさまざまな形で繰り返し原油市場に秩序をもたらそうと努力してきたが、いずれも失敗に終わっている。

19世紀後半のスタンダードオイル社の設立、1928年に大手石油会社がスコットランドのアクナキャリ城で締結した「現状維持」協定、1960年のOPEC結成に至るまで、原油価格の極端かつ周期的な振る舞いを抑えこむことに成功した実績はない。

実のところ、OPEC結成前の55年間よりも、結成後の55年間の方が原油価格はより不安定になっているのだ。

最近の原油価格低迷については、生産量制限の合意に達しなかったOPECに責任を求めたくなる。

だが実際のところ、価格が安定しているのは正常ではなく、例外なのだ。非常に特殊な条件下のごく短期間を除けば、OPECであれ民間企業であれ、原油価格の安定化に成功した例はない。

原油価格があまりにも多数の、しかもいずれも動的な要因に依存している以上、「長期的」な価格、あるいは「均衡」価格など、口にするのもばかばかしい。

原油の生産者・消費者どちらであっても、目の前の価格に適応しなければならない。

今後3年、5年、あるいは10年にわたって価格がどうなっていくか、あやふやな予想を立てるよりも、価格の周期的な変動のなかで生き残る能力と柔軟性の方が原油生産者・消費者にとっては大切なのだ。

長期的な原油価格は、文字どおり、予想不可能である。絶対確実に言えることはただ一つ、原油価格は今後も専門家の予想を裏切り続けるだろうということだけなのである。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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