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アングル:原油安が政府系ファンドを圧迫、資産売却で株安招く恐れ

[オスロ/ロンドン 14日 ロイター] - 石油収入に基づき運営されている政府系ファンド(SWF)の一部は、高収益を確保していた栄光の日々が過去のものになった恐れがある。財政が逼迫している政府が、拡大しつつある財政赤字を穴埋めするにはSFWの投資リターンがあまりにも低調となっていることから、SWFから資金を引き出して財源に充当しているためだ。

 12月14日、石油収入に基づき運営されているSWFの一部は、高収益を確保していた栄光の日々が過去のものになった恐れがある。写真はカナダ・サスカチュワンの原油貯蔵タンク。8月撮影(2015年 ロイター/Dan Riedlhuber )

こうした状況下、一部のSWFは現金を捻出するため資産の売却を余儀なくされている。仮にこうした動きが加速すれば、株式や他の資産の価格を押し下げて悪循環が形成される可能性がある。

モルガン・スタンレーによると、SWFは過去20年間で株式から高級不動産物件に至る資産の総額が7兆ドルにも膨らんだ。

だがサウジアラビアやロシア、ノルウェーなど主要な資金源を政府の石油輸出収入に依存しているSFWは現在、二重苦の状況に直面している。

北海ブレント原油先物価格LCOc1は2014年6月以降で約68%下落して1バレル=40ドルの節目水準を割り込み、石油収入は減少した。同時に、経済成長の減速に加え、新興国株式.MSCIEFなどの資産価格が約19%も下落したことにより、一部のファンドは原油安に対処するのに十分なリターンを稼ぎ出せなくなっているのだ。

ある資産運用担当者は「SWFとして6%超のリターンを確保できれば、健闘しているといえよう」と述べた。コモディティ関連収入に依存していないシンガポール政府投資公社(GIC)でさえ、向こう5─10年にわたって投資リターンは低下すると予想しているほどだ。

調査会社イーベストメントのデータによると、SWFは2015年の第1・四半期から第3・四半期までに資産運用会社から270億ドルの資金を引き出し、第3・四半期だけで195億ドルを引き出している。

ジュネーブを本拠とするコンサルタント会社ジオエコノミカのマネジングディレクター、スベン・ベーレント氏は、現在の原油安環境はこれらのファンドにとって、石油収入に代わる収入源を確保する初めての試練となっているのだが、到来する時期があまりにも早すぎた、と話した。

資産運用会社インベスコが今年実施したSWFの調査では、回答者の7割以上は政府からの資金拠出が今後減少すると予想していた。

<手元資金の減少>

サウジアラビアやロシアなどの主要産油国は既に準備資産を財源として利用し始めており、サウジアラビア通貨庁(SAMA)の正味の外貨建て資産は10月、2012年終盤以降で最低の水準に減少した。

国際通貨基金(IMF)は、仮にサウジアラビアが公的支出を抑制しなければ、同国の準備資産は5年以内に枯渇してしまうと警告している。

またロシアのSWFであるリザーブ・ファンドは2016年初頭までに資産規模が3兆4000億ルーブルに縮小すると予想されており、ロシア政府は仮に財政赤字が削減されなければ、国民福祉基金(ナショナル・ウエルス・ファンド)に手をつけざるを得なくなる可能性があると警告している。

世界最大のSWF(資産規模8350億ドル)を保有するノルウェーでさえ、来年は約20年前にSWFを設立して以降で初めて、SWFから差し引きで引き出すことになると予想している。同国のSWFだけで、平均して全世界の株式の約1.3%、欧州企業株の約2.4%を保有している。

ジオエコノミカのベーレント氏はSWFについて一般論として「ファンドの資本まで利用するのは妥当ではない。資金の引き出しは、投資リターンと同等額までにとどめるべきだ」と指摘。「(ファンドの)資本に手をつけた際には、長期的な貯蓄ファンドとしての(SWFの)目的自体に異論と唱えることになる」と語った。

<戦略の変化>

一部の資産運用会社は既に、SWFの投資行動における微妙な変化を見抜いている。商業用不動産など「トロフィー」資産と称される割高な資産をめぐる競争が弱まっているというのだ。

JPモルガン・アセット・マネジメントの国際機関投資家顧客部門を率いるパトリック・トムソン氏は「資産の伸びが減速したのに伴い、流動性が比較的低い資産の一部を購入するという点で、活動が縮小している」と話した。

もっと長期的な面でも変化が見込まれている。例えばノルウェーのSWFは長期的な目標である欧州に対するエクスポージャーの引き下げには、より長い期間を要するとしている。

ノルウェーのSWFでアロケーション戦略を担当するOle Christian Bech-Moen最高投資責任者(CIO)はロイターに対し「われわれはファンドに流入した資金を欧州以外の地域への投資に割り当てることにより、欧州に対するオーバーウェートの度合いを着実に引き下げてきた」と説明。「仮に流入する資金が減少すれば、この移行計画は修正が必要になるかもしれない」と述べた。

ただ、すべてのSWFが大規模な資金流出に見舞われているというわけではない。JPモルガン・アセット・マネジメントによると、SWF資産の4割程度はコモディティ収入を資金源としていない。このため、影響はより少なくて済むはずだ。

ペルシャ湾岸諸国のうち人口が比較的少なく、石油価格の損益分岐点が相対的に低い場合は、うまく対応できる余地が残されるはずだ。例えばオマーン、アブダビなどはインフラへの支出を比較的容易に削減できるだろう。

だが石油収入を資金源にしていないアジアの大型SWFでさえ、ドル相場の大幅な上昇に対処する必要がある。結果として、中国の外貨準備高は2013年2月以降で最低の水準に落ち込んでいる。

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