February 16, 2018 / 7:32 AM / 7 months ago

焦点:南北融和ムードの立役者、韓国大統領側近は元活動家

[ソウル 15日 ロイター] - 1989年、22歳の韓国女子大学生が北朝鮮に潜り込んで半島の統一を訴え、当時の金日成主席と面会する映像は、韓国で一大騒動を巻き起こした。

2月15日、1989年、22歳の韓国女子大学生が北朝鮮に潜り込んで半島の統一を訴え、当時の金日成主席と面会する映像は、韓国で一大騒動を巻き起こした。写真は北朝鮮の金与正氏(右)を出迎える韓国の任鍾晳大統領秘書室長。ソウルのホテルで11日撮影。韓国大統領府提供 (2018年 ロイター/Yonhap)

韓国政府の許可なしで行われたこの訪朝を演出したのは、著名な学生民主運動家で、今では文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領の秘書室長を務める任鍾晳(イム・ジョンソク)氏だ。

30年近くを経て、現在51歳の任氏は平昌冬季五輪を舞台とした韓国と北朝鮮のデタント(緊張緩和)で中心的な役割を果たしていると、政府関係者や専門家は指摘する。

リベラルな文大統領は、10年近く続いた韓国の保守政権や、北朝鮮の核・ミサイル開発加速によって悪化した南北関係の再構築に向けて、任氏のほか数人の重要プレーヤーを頼みにしているという。

だが韓国内の懐疑派にとって、任氏は、米国との緊密な同盟関係よりも、南北再接近を優先しているのではないかという懸念の中心にいる人物だ。すでに、冬季五輪が北朝鮮プロパガンダの道具に利用されていると、彼らは心配している。

<特使か>

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が先週、サプライズで文大統領の訪朝を要請したことを受け、この提案を協議するための北朝鮮特使として、任氏の名前が取りざたされている。

他に、韓国国家情報院の徐薫(ソ・フン)長官や、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相なども候補として検討されていると、韓国政府高官は明らかにした。両氏とも、過去に対北朝鮮緊張緩和の「太陽政策」を進めたリベラル政権で役職を務めた経験がある。

金正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)氏らを迎えて10日、韓国大統領府(青瓦台)で開かれたた文大統領主催の昼食会に、任氏は満面の笑顔で出席していた。任氏は翌11日、与正氏ら代表団の送別夕食会を開いた。

「今日はただ、くつろいで食事を楽しんでください」。任氏がゲストにそう語りかけていたと、出席した大統領府高官は言う。

任氏は学生時代、女子大学生を北朝鮮に送り込み、国家安全保障関連法に違反したとして、3年半服役した。女子大学生自身も、帰国と同時に逮捕された。

任氏は本記事向けのコメントの要請には応じなかったが、自身や仲間の元学生活動家が親北朝鮮だとする批判には反撃している。

「あなたが名前を挙げたほとんどの人(元活動家)は、民主化のために命を賭けて戦った。私は、恥ずべき人生は歩んでいない」と、任氏は昨年11月に国会で語った。

<温かい心>

 2月12日、 平昌冬季五輪のアイスホッケー女子の試合で、統一旗を振って南北合同チームを応援する人々(2018年 ロイター/Brian Snyder)

1980年代の韓国軍事政権時代における学生活動家の多くは、北朝鮮の国家理念である主体(チュチェ)思想を学び、共感すらしていた。これは、マルクス主義と極端な自主性を尊ぶ国家主義を組み合わせた政治思想で、金日成主席が展開したものだ。

「北朝鮮を訪れて自分の目で確認した今では、われわれもずっと懐疑的に物事を見ている」と、 元活動家で今は文大統領の与党「共に民主党」に所属する国会議員、李仁栄(イ・インヨン)氏は言う。

「われわれは、言われているような北朝鮮シンパではない。だが平和に向けて、他の人より温かい心と多くの忍耐があるのかもしれない」

人懐こい性格と秘書室長としての調整スキルで知られる任氏は、表舞台は避けつつも、政策立案から青瓦台の人事まで幅広い事案に深く関与している。

文大統領が、戦争に反対し、北朝鮮が核・ミサイル実験をやめれば対話に復帰する意思がある、などと述べた重要記念日などのスピーチは、任氏が監修した。

<対話を求めて>

だが政府高官によれば、任氏に対する保守派の批判を踏まえ、特使は徐長官か趙統一相の起用に傾いているという。

「多くの名前が取りざたされているが、徐氏はエキスパートで、最善の選択肢だ」と、元統一相で、南北関係について文大統領に定期的に助言している丁世鉉氏は言う。

「南北関係では、北朝鮮の言葉や、彼らの話し方、内部原理を理解することが重要だ」

徐長官は、2000年と2007年の南北首脳会談に先駆けて行われた一連の協議をそれぞれ主導している。情報機関トップとして、また文大統領は当時の盧武鉉大統領の秘書室長として、同氏は2007年の首脳会談実現に重要な役割を果たした。

大統領府は任氏について、秘書室長として期待される「自然な役割」を務めているとしたが、詳細には言及しなかった。

だが、五輪関連のデタントの舞台にまんべんなく登場した任氏の存在感は、大統領府の昼食会にしか招かれなかった鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長や、どこにも見当たらなかった他の外交や国防高官と比べて際立っている。

文大統領は、学者や過去のリベラル政権の元高官らを、外相を含めた重要外交ポストに指名している。

「統一省が今の展開を主導するのは自然なことだ。青瓦台が、これまでいつもそうだったように、全体を監督している」と、外務省高官はロイターに語った。

「われわれの仕事は、北朝鮮と米国が対話できる状況を築くことだ。道のりは長く厳しいが、そこがわれわれが役割を果たす場所だ」

Slideshow (3 Images)

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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