January 22, 2018 / 7:07 AM / 7 months ago

焦点:北朝鮮スキー場での南北合宿案、経済制裁に抵触の可能性

[ソウル 22日 ロイター] - 来月9日開幕する平昌冬季五輪を控え、北朝鮮の馬息嶺(マシクリョン)スキー場に自国選手を派遣して南北合同トレーニングを行うという韓国の提案は、金正恩政権を正当化するだけでなく、現金供与につながるリスクがあると、脱北者や専門家が警鐘を鳴らす。

 1月22日、来月9日開幕する平昌冬季五輪を控え、北朝鮮の馬息嶺(マシクリョン)スキー場に自国選手を派遣して南北合同トレーニングを行うという韓国の提案は、金正恩政権を正当化するだけでなく、現金供与につながるリスクがあると、脱北者や専門家が警鐘を鳴らす。写真は馬息嶺スキー場を視察する金正恩氏。2013年12月KCNA提供(2018年 ロイター)

五輪開会式における統一旗を掲げた南北合同の入場行進や、アイスホッケー合同チームの結成など、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が提案した南北融和策は、すでに国内から批判を浴びている。

もし、金正恩・朝鮮労働党委員長の肝いりで作られた朝鮮半島東岸の元山(ウォンサン)近郊にある高級リゾートを支援していると受け止められれば、文政権はさらなる圧力にさらされるだろう。

「合同トレーニング案は、一般市民が飢えに苦しむ中でスキーリゾートを建設するという本来、時代錯誤な金正恩氏の決定を、先見の明ある決断だったと正当化するプロパガンダの道具になる恐れがある」と、韓国外交部の元副部長Kim Sung-han氏は指摘した。

北朝鮮の平昌五輪参加は、この機会を利用して南北の緊張を緩和し、北朝鮮の核・ミサイル開発を巡るこう着状態を打開する契機としたい文大統領の目標だった。

韓国政府は今週、現地に担当者を派遣して、同スキー場の施設や、自国スキー選手が移動に利用するかもしれない近隣の葛麻(カルマ)新空港を視察する予定だ。合同トレーニングに参加する韓国選手は、五輪には出場しない見通しだという。

<スキー場とミサイル発射場>

2013年に正恩氏がオープンした馬息嶺スキー場は、ホテルや水族館、ゴルフ場など高級リゾート開発が進行する元山の近郊にある。元山や葛麻空港は、近年大規模な火器演習やミサイル発射実験が数十件行われる、国防上重要な地域にある。

市場経済化が進み、資産を蓄えた北朝鮮国民が増えるなか、馬息嶺スキー場は、海外からの旅行客だけでなく、こうした自国の富裕層からも外貨を巻き上げる狙いがある。

正恩氏は建設現場を何度も視察し、建設を急ぐよう指示しており、「馬息嶺速度」という、新たなスローガンができたほどだった。

国営メディアはこのリゾート施設について、「国民を愛する指導者からの、生活水準向上のための贈り物」だと激賞した。

一方、韓国政府の元高官らは、スイスで教育を受けた独裁的指導者が、市民の窮乏を尻目に自らの豪華な生活スタイルを満たすため、数少ない国の資源を流用した象徴的な例だと、同リゾートを批判している。

国営の朝鮮中央通信(KCNA)は21日、北朝鮮が示す平昌五輪に向けた緊張緩和姿勢の動機を疑う韓国政治家やメディアを批判した。

「五輪の成功に向け、南北関係を改善しようという(北朝鮮の)誠意や真意に、疑う余地は全くない」とKCNAは述べた。

<制裁の懸念>

元山出身の脱北者Kang Eung Chan氏は2013年、このスキーリゾートで3日間の旅行に出かけたという。滞在費用は、食事とスキーのレンタル代を含め1日100ドル前後で、大半の北朝鮮人はもちろん、当時、中国顧客向けに半官半民の縫製工場を経営する裕福なビジネスマンだったKang氏にとってすら、高価すぎる休暇だった。

「全部米ドルで支払った。北朝鮮の水準からみれば、安くはない」と、Kang氏はロイターの取材に語った。

北朝鮮は公式なデータを公表していないが、専門家は、同国の平均賃金は月30─40ドルだとみている。

観光は、国連安全保障理事会の制裁が未だに及ばない数少ない外貨獲得手段の1つだ。

もし韓国側がリゾート施設の使用料金を支払ったり、高価なスキーのトレーニング機材を新たに提供したりすれば、国連制裁がらみで問題が発生する恐れがあると専門家は指摘する。

韓国統一省は、スキー場への選手派遣について、まだ決定していないとしている。

「北朝鮮選手団に経済的支援を提供することで、制裁効果を薄めてしまうとの見方があることは承知している」と、同省広報官は19日の記者会見で述べた。「(北朝鮮に対し)制裁と圧力を与える国際協力を継続する立場に変わりはない。国際社会や国連の専門家委員会と協議して、問題がないようにする」

北朝鮮に対する制裁履行を監視する国連専門家委員会は、昨年の報告書で、オーストリア企業製ケーブルカーが、馬息嶺スキー場で使用されていたことを受け、規制対象にリフト設備を追加したと述べている。

ソウルにある峨山政策研究所のジェームス・キム研究員は、制裁決議に抵触する懸念を払拭するには、韓国政府は「極めて良く練られた計画」が必要だと話す。

「文政権の目標は、緊張を緩和し、北朝鮮の核問題の平和的解決に向けた発射台として冬季五輪を利用することだ。だがその実現に向けた韓国政府のやり方について、検討するべきだという批判は正しいと思う」と、キム氏は話した。

スキー場を訪れた在平壌英国大使館職員は昨年、スキー場の美観を保つための雪かき作業などに子どもが動員されていたと話し、「非常に懸念を覚える」と述べていた。

「北朝鮮における大小のインフラ事業に対して、常習的に強制労働が行われていることは良く知られている。学生に課される義務的労働も含まれており、子どもも働かされている」。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチでアジアを担当するフィル・ロバートソン氏はそう語る。「馬息嶺スキー場が例外だと考える理由はない」

韓国と北朝鮮は、北朝鮮の金剛山で行われる文化イベントのほか、両国でのコンサート、韓国でのテコンドー実演など数々の五輪関連の合同プログラムを計画しており、五輪自体が目立たなくなってしまうリスクもあると、前出のKim氏は言う。

「五輪自体は、非政治的なスポーツイベントだ。だが周辺のイベントが大きくなり過ぎると、純粋な五輪の存在意義が政治化され、汚されてしまう恐れがある」とKim氏。「いったん一歩引いて、肩の力を抜いた方がいい」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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