January 18, 2019 / 2:50 AM / 5 months ago

コラム:東京五輪にも疑惑浮上、「不正の連鎖」断ち切れるか

[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - またしても、オリンピックがスキャンダルの暗雲に覆われている。新たな疑惑には、悲しいほどの既視感がある。

1月17日、またしても、オリンピックがスキャンダルの暗雲に覆われている。新たな疑惑には、悲しいほどの既視感がある。写真は2016年9月、東京で開かれた五輪関連の式典で撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

国際的なスポーツイベントにはびこりがちな、負の力を完全に排除するのは不可能かもしれない。それでも、少なくともある重要な部分で勝利への道筋ははっきりしている。

国際オリンピック委員会(IOC)が汚職撲滅キャンペーンに乗り出したのは、2002年のソルトレークシティ冬季五輪で不正疑惑が持ち上がってからだ。20年近くたった今も、東京五輪・パラリンピックの招致を巡って不正なカネが支払われた疑いがあるとして、仏当局が日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長を調べている。

2016年のリオデジャネイロ五輪では、招致活動を巡ってブラジル五輪委員会のカルロス・ヌズマン会長が逮捕された。

選手の能力を向上させる禁止薬物の使用問題も、依然として解決できていない。IOCはこの問題を世界反ドーピング機関(WADA)に任せているが、WADAは非協力的なロシアの薬物検査機関に手を焼いている。当局が腰の引けた対応を見せれば、2020年東京五輪の信頼性にも疑問符がつくだろう。

竹田氏やロシアのナショナルチームが今後どうなるかは別として、IOCは再び弱腰になりつつあるようにみえる。(汚職撲滅が)限定的な成功にとどまったとしてもそれほど驚きではない。IOCには非常に手ごわい敵がいるからだ。

まずは金の問題がある。過去数十年、五輪の開催国は常に損失を出してきた。日本も例外ではない。東京五輪の組織委員会は放映権や企業のスポンサー料、チケット販売などで約6000億円の収入を見込んでいる。一方、日本の会計検査院は、関連経費を含めた支出は2兆8000億円超になると指摘している。

これでは賄賂に支払う財源などないように見えるかもしれない。しかしコストの大半は、専用の競技施設や選手の宿泊施は無駄にならないとの皮算用をはじく政府が負担している。収入のほとんどを手にする各国の五輪委員会とIOCは、少なくとも競技が実際に始まるまで資金繰りに余裕があるものだ。

つまり、ばらまく現金は存在する。そして、開催地を決めるIOC総会で投票権を持つ96人の委員のうち、少なくとも一部の票は買収し得る。

なぜ赤字の大会を開催するために金を払うのか。施政者が成功というシンボルを手に入れたいからだ。世界から注目を集めるとともに、オリンピック精神の輝きを手に入れることができる。これまで多くの影響力ある人たちが、スポーツイベント開催の栄光に浸るため、倫理を無視してカネを払うこともいとわない姿勢を取ってきた。

野放図なカネの流れと、金とは無縁のシンボルの組み合わせは、組織の偽善を招く。多くが腐敗している五輪の慣行と、常に高尚な公式発言との間に横たわるギャップは大きい。IOCのバッハ会長は誘致プロセスの透明性を懸念する一方、「五輪の価値はより平和な未来への道を開くことができる」と今年の年頭あいさつで高らかに宣言した。

あまりにも巨額の金が、適切な監視不在の中を流れている。広告主や放送局、政府機関やチケット取扱い業者のすべてが、各開催国の五輪委員会に金を流し込んでいる。その一方で、金を出した側はその使途に目を光らせることはしていない。

IOCの統治体制が弱いままなのは、偽善が一因だ。五輪精神にあふれているであろう素人が長年実権を握っているため、中央の組織は委員を管理できていない。だが、こうした欠陥は不可避ではない。国際決済銀行(BIS)から国際電気通信連合まで、多国籍組織の多くが汚職を減らすこと成功している。

今の統治構造が続く限り、金の問題は解決されないだろう。開催地の選考プロセスを安く済ませたり、大会規模を縮小することに関心を持つIOCの委員はほとんどいない。五輪の精神を語る頻度を減らしたり、その精神の宣伝活動費を削減することに同意する関係者も皆無だ。

それどころか、世界中の政治家、広告主、そしてアスリートは、基本的に現在のスポーツとビジネスのあり方を好意的に受け入れている。確かに、それも一理ある。何億もの人たちが、周到に演出された競技を楽しんで観戦している。そのほとんどは、ドーピングをしていないアスリートの卓越した能力を目にしたがっている。

しかし、理想主義と金の混在は必然的に偽善を生み、ほぼ確実に不正行為を招き寄せる

解決策は、組織統治の強化だ。改善の余地は大いにある。IOCは基本的に弱い「議会」のようなものだ。構成委員は選挙を経ておらず、適性が十分でないことも多い。事務方には、頑固な抵抗や根深い不正に抗い、自らの意志を主張するだけの力がない。

必要なのは、マーケティングイベント、スポーツの競技会、そして世界の連帯を表明する場、これらを組み合わせた大会にふさわしい組織構造にすることだ。出資者が責任を持つのが最善の道だろう。放送局や、巨大多国籍企業の米コカ・コーラ(KO.N)、韓国サムスン電子(005930.KS)、ビザ(V.N)などのスポンサーは、よりビジネスライクな構造とやり方を求め、運営していくべきだろう。

理事会が厳格になれば、加盟国の力を大きくそぐことができる。大会の誘致合戦も省力化できる。さらに、国ごとに分かれた禁止薬物の検査組織に代わり、強力な中央機関を1つ設けることで、ドーピング対策を「非政治化」することが可能になる。

国際的なスポーツイベントからスキャンダルを完全に排除するには、あまりに多くの金と栄誉が絡んでいるのかもしれない。だが、五輪が世界規模の「恥」である必要はない。

必要とされているのは、「より速く、より高く、より強く」というオリンピック・ムーブメント(五輪運動)の理念を体現し、不正と戦う意思を持った改革者だ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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