[東京 5日 ロイター] - 軽快なチアダンスのビートに合わせ、ポンポンが揺れ、銀色の靴が光る。60歳から89歳までのメンバーで構成された「ジャパンポンポン」は、普通のチームとは違う。
ただ、「おばあちゃんたち」とは呼ばないで欲しい。
平均年齢72歳の「ジャパンポンポン」を1996年に設立した滝野文恵さん(89)。最初の頃は「おばあちゃんチアリーダー」と呼ばれることに抵抗があったと語る。
最近1年ぶりに再開された週1回の練習。マスクをつけたメンバーらは、検温してからストレッチ。もちろん社会的距離を取りながら、いつものダンスの手順に移った。
メンバーの大半はスウェットパンツと、「ジャパンポンポン」と書かれたキラキラ輝くTシャツを着ているが、本番ではスパンコールとミニスカートのコスチュームを身にまとう。滝野さんは革のバイカージャケットを着てサングラスをかける時がある。全員が銀色のウィッグをかぶったこともあった。
「ダンス、体を動かすことはまず楽しいですね」と滝野さんは話す。「そして衣装がめちゃくちゃ派手なんです。それを期待して入ってくる人がいるくらい」
26年前、滝野さんが米アリゾナ州にシニアチアリーディングチームがあることを知り、5人で始めたのがきっかけ。現在は17人が活動している。メンバーは全員55歳以上で、オーディションに合格しなければ入会できない。
今では政府のアクティブシニア向けパンフレットに掲載されたり、テレビの報道番組から何度も取材を受けたり、人気のチャリティショーにも出演するようになった。
日本は高齢化が最も急速に進んでいる国のひとつで、人口の3割近くが65歳以上だ。それでも、老後に関して固定観念のある国でこのチームが人々に受け入れられるようになるには時間がかかった。
シニアクラブでパフォーマンスを披露したときのことをこう回想する。「うけないのです、にこりともしない。やっぱり、日本女性がこの年でああいうもの着て踊っているのは許せない。だから皆さんすごい顔をして、にらんでいる」
「今でもそうですね。たぶん半分ぐらいの人はOKですが、半分ぐらいの人には受け入れられないと思っています」
メンバーらは、一緒に練習をすることや滝野さんの前向きな姿勢に力をもらっている。
嶋田民さん(69)は、「いつもうちの会長が言っているように、何でも一歩足を踏み込んで、はじめの一歩が肝心」と語る。「何でもやってみる。年寄りだからっていう観念を捨てて、何でもやってみたいことをやっていく、っていうのが生きがいにも通じるんではないかと思います」
孫とひ孫が3人ずつおり、ひ孫はもう1人増える予定の滝野さんは、有言実行を地で行く人だ。これまでスキューバダイビング、パラセーリング、ウクレレ、そして中でも好きだというスカイダイビングにも挑戦。50代のときには米国で修士号を取得した。いまはスペイン語を勉強しているほか、シニア向けのダンスのレッスンを受け、散歩もする。はまっているのはパソコンでするトランプゲームだ。
毎晩小さいサイズのビールを飲むのが習慣で、これまでの健康問題は盲腸だけだった。来年90歳になるのは信じがたい。100歳になるまでチアができるかについては、難しいと考えていると渋々打ち明けるが、チームメイトは続けて欲しいと考えている。
「この2-3年、だいぶ体力が落ちるな、疲れるなと思い始めたところです。特に新型コロナで休んでたので、すごく体力が落ちてきたのは自分でも分かる。やっているときはあんまり感じない。翌日ぐらいにちょっと疲れたなあ、と」
滝野さんはそれでも、ダンスをしている間は全て忘れてパフォーマンスを楽しんでいるという。
(文:Elaine Lies記者、撮影:Kim Kyung-Hoon記者、翻訳:宗えりか、田頭淳子)
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