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コラム

コラム:冬季五輪迫る中国、外交やコロナ対策など課題山積

[ロンドン 2日 ロイター] - 新型コロナウイルスの新たな変異株オミクロン株に対する懸念が高まったことを受け、今週に入って各国が新たな規制措置を打ち出した。こうした中で中国はアフリカ諸国にワクチン10億回分を追加提供するとともに、来年2月の北京冬季五輪開催に向けた取り組みを進めると表明している。

 新型コロナウイルスの新たな変異株オミクロン株に対する懸念が高まったことを受け、各国が新たな規制措置を打ち出した。こうした中で中国は、来年2月の北京冬季五輪開催に向けた取り組みを進めると表明している。北京の国立水泳センターで開催された、開幕まで100日のカウントダウンイベントで11月24日撮影(2021年 ロイター/Thomas Suen)

ここで頭に浮かぶのは、自信満々の中国が世界に見せたがっている、国内のパンデミックを抑え込んだ経済大国が感染対策で世界を主導しているという構図だ。そして国際社会からさまざまな批判を浴びても、偽善的とみなして一向に動じていない。

しかし、現実はもっと複雑だ。確かに中国国内の感染者数は低い水準が続いているが、国産ワクチンの効果が限定的という難題を抱え、自国の科学者から破局につながると警告が出されている感染再拡大を何としても避けようとしている。対外関係に目を向けると、人権問題や中国が台湾への圧力を高めていることを巡り、西側だけでなく他の多くの国からの反発が強まる事態に直面している。

2019年以降、人権保護活動家や一部の西側首脳は、中国新疆ウイグル自治区でのウイグル族弾圧に抗議する形で北京冬季五輪の全面的なボイコットを呼び掛けてきた。もっとも、この大会に照準を合わせて多大な資金、エネルギー、努力を投じてきた競技者やスポンサーにそうした動きは全く広がりそうにはない。

ところが米国、英国、オーストラリアなど複数の国は、北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を検討中と報じられている。欧州議会は7月、拘束力を持たないものの、欧州諸国に同様の行動を求める決議を採択した。北京に駐在する外交官が大会への出席を見合わせることなども起こり得る。ただ、外交プレゼンスを弱めるだけのそうした方法は、さほど注目を集めないだろう。

北京冬季五輪は、今年の東京夏季五輪の基準に照らしても、厳しく統制された大会になるとみられる。外国人の観客は存在せず、外国の首脳や要人もほぼ顔を見せない。例外になりそうなのはロシアのプーチン大統領だ。

<中国モデル>

こうした展開は最終的に、逆風を受ける中国の習近平国家主席にとって安心をもたらすかもしれない。逆風の1つが、中国女子プロテニスの彭帥選手が11月2日、ソーシャルメディアで元副首相から性的関係を迫られたと告白して消息が一時ほぼ途絶えたことだ。この問題は国際社会の関心を集め続けている。11月30日には欧州連合(EU)が、彭選手は健康で自由を保っているという「検証可能な証明」を要求。一部の人権専門家は、11月21日の国際オリンピック委員会(IOC)首脳とのビデオ電話を含め、彭選手による外部との接触はコントロールされているのではないかと疑っている。

そんな中国に対してハンガリー、セルビアなど欧州の幾つかの国がより親しくなろうとする動きを見せているが、逆に反感を強める国も出てきている。ラトビア、リトアニア、エストニアのバルト3国の国会議員団は今週台湾を訪問。貿易関係の維持を望むドイツなどでさえ、一部の関係をある程度縮小した。中国外務省は彭選手の問題について、「特定の人々」が「悪意をあおり、政治問題化する」のをやめなければならないとコメントしている。

これまではその経済規模と巨大な工業力によって人権問題にする批判など一蹴できる、という仕組みが長らく「中国モデル」の一部を構成してきた。今週開かれた中国とアフリカ諸国の代表が参加する会議で習主席がワクチンの追加提供を発表したことについても、中国政府はアフリカ地域への影響力を強化できるとずっと期待し続けるだろう。

オミクロン株対策として各国の間に入国制限の動きが広がっている状況に、南アフリカ当局は特に怒りを募らせている。せっかく世界に向けてオミクロン株の実態を明らかにした南アが、犠牲者になっているとの理屈だ。中国の国有メディアや外交官は早速この問題を取り上げ、豊かな西側諸国がワクチンを抱え込んでいることが現在の緊急事態の一因だと主張している。

<パンデミックは終わらず>

中国の言い分にはある程度の真実も含まれるだろう。だが、中国がワクチン外交で重要な役割を維持し続ける上で、問題は大きくなりつつある。新型コロナの予防効果が50─80%と伝えられる中国製ワクチンの国際的な需要は、ファイザーやアストラゼネカなどのワクチンよりずっと低い。つまり中国製ワクチンの海外向け販売は試練に見舞われていることが分かり、一部の国は公然と西側製ワクチンの調達を優先している。

それでも中国にとってはるかに大きな課題は国内にあるのではないか。新型コロナが世界で初めて報告された武漢市をロックダウン(都市封鎖)して当初の感染封じ込めに成功した後、中国ではほとんど感染者がいなくなった。中国製ワクチンの防護機能が限定される以上、もしもなお閉鎖されている国境からウイルスが侵入した場合、あっという間に感染が再拡大していく可能性がある。

北京大学の研究員らは中国疾病対策予防センターの週報で、中国の高い人口密度や限られた医療資源、国産ワクチンの効果への疑問などを考えると、西側で見られる管理された感染拡大を許容すれば、すぐに破局につながりかねないと警鐘を鳴らした。

これを冬季五輪に当てはめれば、大規模な隔離なしで選手が競技できるようにするためには非常に厳しい規制とバブル、バス運航システムが必要になる。つまり、五輪関係者以外の誰に対しても国境は閉じられ続ける。中国にとって、パンデミックと自らが生み出した厄介な地政学的対立の収束はまだ遠いという意味だ。

*ピーター・アップス氏は国際問題、グローバル化などを専門とする著述家で、非政府・中立のシンクタンク、プロジェクト・フォー・スタディ・オブ・トウェンティーファースト・センチュリー(PS21)の創設者。2006年の戦争地帯における自動車事故で負傷して以来、自身の身体障害などに関するブログも開設している。元ロイター記者で、現在もトムソン・ロイターと契約関係にある。

(本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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