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アングル:リオ五輪控えた中国、選手育成熱に陰り
2016年5月22日 / 02:02 / 2年後

アングル:リオ五輪控えた中国、選手育成熱に陰り

[上海 19日 ロイター] - 過去35年間にわたり五輪メダリストを輩出してきた中国のスポーツ選手育成制度に変化が起きている。

 5月19日、過去35年間にわたり五輪メダリストを輩出してきた中国のスポーツ選手育成制度に変化が起きている。写真は4日、上海にあるスポーツ学校、楊浦区少体校で、体操の授業を受ける女子生徒たち(2016年 ロイター/Aly Song)

1980年に五輪大会に復帰して以来、中国のスポーツ制度は大成功を収めてきた。2008年には北京五輪の開催国として、獲得メダル数で首位に輝き、4年後のロンドン大会でも米国に迫る第2位となった。

しかし、ブラジルのリオデジャネイロ五輪まで残り3カ月を切るなか、このシステムが壊れ始めている。国が豊かになる過程で発生する人口動態の変化が原因だ。

こうしたシステムの歯車の1つ、上海にあるスポーツ学校、浦東新区第一少年体校で党委員会書記を務めるHuang Qin氏にとって、これは大変な課題だ。中国全体で2183校に達する、こうしたスポーツ学校は、五輪代表の95%を輩出している。

早ければ6歳から始まる過酷な練習の日々を、子どもたちに耐え忍ばせたいと願う親の数は減少しており、生徒数の減少を招いている。

一部の学校は閉鎖され、学校運営のやり方を変えようとするところもある。中国政府の統計によると、スポーツ学校の総数は1990年の3687校から大幅に減った。

「1980年代や90年代には、われわれのような学校は非常に魅力的だった」。一般家庭が貧しく、気前のよいスポーツ補助金が重宝されていた時代を振り返り、Huang氏はこう語る。同校の卒業生には、元五輪代表のハードル選手、陳雁浩氏や女子サッカーの謝恵琳氏がいる。

「(しかし)子供が試験で良い成績を収めていると、親は子供をスポーツ学校にやりたがらない。社会がより文化教育に重きを置くなかで、スポーツ学校に行く生徒層が縮小している」

<教育への期待>

スポーツ学校制度にまだ妥当性があるのかという議論は、2008年の北京五輪の頃から浮上してきた、とHuang氏や他の学校関係者は指摘。引退した選手の苦境ぶりが伝わるにつれ、中国で台頭する中産階級が抱く教育水準に対する期待と対立するようになったからだ。

中国の1人っ子政策による出生率の低下や、競争の激しい教育システムもマイナス材料だ。中国の学生は、国際平均の倍の時間を1日の宿題に費やしていると言われている。

こうした懸念に対応して、中国政府は2010年に新政策を打ち出し、スポーツ学校に対して教育水準を上げ、引退選手を支援するよう命じた。

浦東新区第一少年体校では、教員訓練を向上させてきたとHuang氏は言う。3年前、すべての生徒は勉強や訓練だけでなく、生活もキャンパス内で終日過ごすという、40年続いていた規則も緩和した。

今日では、同校の選手700人のうち、半分以上が他の学校で勉強している。残る300人の約10%はキャンパスの外で暮らす。

楊浦区少体校といった他の学校は、幼稚園に出向き、放課後の遊びとして、体操を親たちに宣伝している。「私たちはそれをハッピー体操と呼んでいる」と学校長のZhu Zengxiang氏は語る。

北京の什刹海にあるスポーツ学校では、五輪の金メダリストとなった卒業生の偉業をポスターで称賛している。副校長のZhang Jing氏は、同校が「包括的な成長」を約束し、引退後の生活に必要なスキルを選手に身に付けさせると語った。

競泳の五輪金メダリスト、劉子歌選手らを輩出した上海市体育運動学校は、2012年以降、学科入試で不合格となった生徒の入学を拒んでいる。また、親たちに対して、スポーツ訓練は教育のためであり、それ自体が最終目的ではないと説明している。

「多くのスポーツ学校が同じ方向に進んでいる。しかし、これは痛みを伴うプロセスだ」と同校のSheng Maowu校長は語る。

「現在存在するのは、教育と訓練は2つの違ったルートという考えだ。つまり、世界チャンピオンになりたければ、勉強はできない。しかし、この考えは間違っている。最終的に金メダリストになれるのはごくわずかな人たちだからだ」

<人材プール>

中国政府はスポーツ学校の在籍者数を公表していないが、環境変化が既に同国のスポーツ人材プールに影響を与え始めたとする兆しもある。

スポーツ紙の中国体育報は4月、卓球選手になるためにトレーニングする選手の数が1987年以来、4分の1近く減り、2万3266人になったと報じた。

国家体育総局で卓球とバドミントン部門を率いるLiu Shaonong氏は、「状況が変化するなか、伝統的トレーニングシステムや競技スポーツのモデルを見直さなければならない」と語ったと同紙は伝えている。

しかし、改革が根付くには時間がかかる。

3月に公表された政府の調査によると、9つの州都市で調査対象となった一部の学校は、教育に十分な投資をしていなかった。また、一部の地方教育局は、政府指針に応じた改善を行うことに関心を示さなかったと国営メディアが伝えた。

だが、中国武術の山西省代表で元プロ選手だった25歳のWang Linwen氏といった選手は、改革がどんなに小さなものでも、スポーツ学校に入学しようとする生徒にとっては重要だと訴える。

2009年に引退するまでの5年間、平日はトレーニングに明け暮れ、週末のみ勉強に励んでいたと彼女は語る。「教育制度を経験しなかったため、多くのことを失った」と彼女は言う。「(改革は)良いことだ。スポーツ学校の生徒が何も知らずに卒業することが無くなる」

(Brenda Goh記者、翻訳:高橋浩祐、編集:下郡美紀)

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