July 7, 2018 / 6:24 AM / 4 months ago

コラム:薄れるOPECの影、原油市場が迎える新時代

[ロンドン 28日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)が根本から変わりつつある。加盟国の1つであるサウジアラビアの発言権が増し、非加盟の産油大国ロシアの存在感も大きくなりつつある一方で、他のOPEC加盟国は影響力が薄れつつあるためだ。

 6月28日、石油輸出国機構(OPEC)が根本から変わりつつある。写真は19日、ウィーンのOPEC本部ビル(2018年 ロイター/Leonhard Foeger)

形の上ではすべての加盟国は平等で、各国の合意によって決定が下されることになっている。だが実際には一部の加盟国の発言権が他国よりも強く、その格差は拡大している。OPECの決定への影響力が最も強いのがサウジアラビアだ。

サウジの産油量は1970年代にイランを抜き、イラン革命やイラン・イラク戦争、さまざまな制裁の影響でイランとの差は開きつつある。サウジは原油価格決定に影響力を持つだけの産油量を誇る唯一の国で、産油量を大幅に変えるだけの財政面の柔軟性も備えている。他の産油国は技術的に可能な量しか生産できないが、サウジは市況に応じて生産量を調整する「スイングプロデューサー」の役割を担っている。

サウジアラビアは1990年代後半から、隣国クウェートやアラブ首長国連邦(UAE)との対立関係を見直し、原油生産で協調する姿勢に転じた。この3カ国はOPECの中核メンバーであり、OPEC内の発言権のバランスは過去20年でサウジとその同盟国に傾きつつあるが、その半面、それ以外の加盟国は脇に押しやられた。

ベネズエラは内紛や経営の失敗で産油量が急減。リビアも内戦で産油量は落ち込んだ。ナイジェリアやアンゴラは長年にわたって生産面の問題を抱え、イランは経済制裁の影響で産油量が抑えられている。イラクは2003年のイラク戦争後、生産量が大幅に増えた唯一の加盟国だが、収入増を目当てに常に生産量を最大限に引き上げようともくろんでおり、OPECの政策にはほぼ従っていない。

2011年以降、サウジアラビアと主要同盟国がOPECの総生産量に占める比率はほぼ48-49%に達した。

さらに重要なのは、OPECの余剰生産能力がサウジなどにほぼすべて集中したことだ。2017-18年に実施した減産は大半をサウジなどが担い、2018─19年に向けた余剰生産能力のほとんどもサウジなどが握っている。国際エネルギー機関(IEA)によると3カ国の余剰生産能力は、サウジが日量約200万バレル、UAEが約33万バレル、クウェートが約22万バレル。他の加盟国は取るに足らない水準であり、だからこそサウジはOPECの事実上のリーダーとしての地位を確固たるものにしている。

OPECが原油相場を管理する上で最大の問題は、非加盟国の産油量を管理できないことにある。相場を安定させたり価格を引き上げようとしたりしても、中国や旧ソ連、今では米国のシェールオイル業者など非加盟国からの供給に脅かされてきた。

サウジアラビアはOPECのリーダー役として、1980年代半ばから繰り返し非加盟国に対し生産を控えるよう提案してきたが、同意を取り付けるのは容易ではなかった。しかし2016年以降は生産量を抑制するため、ロシアや他の非加盟国と実効性のある関係を築いた。ロシアは非加盟国の中で生産量や余剰生産能力などの面でサウジと同様に主導的な立場にある。このロシアとサウジが手を組んだことで、他のOPEC加盟国・非加盟国は周縁に追いやられ、サウジとロシアは市場の支配者としての存在感が高まった。

OPECはもはや、協調生産や価格決定の面で産油国の意志決定を担う最も重要な存在ではなくなり、実際の決定権はサウジとロシアに移った。両国はOPECや、OPECと非OPEC諸国で構成する「OPECプラス」の枠組みを維持するために注意深く行動してはいるが、実際の意志決定はOPECやOPECプラスの枠組みの外で行われている。

その動きが顕著に現れたのが6月20-23日の産油国会合だ。4日間も協議したのに、OPECもOPECプラスも2018年後半の政策について合意することができなかった。一方でサウジとロシアの関係者は報道陣に対し、共同で約100万バレルを増産すると明らかにした。クウェートとUAEの増産はわずかだ。本来であればこの決定は、加盟国・非加盟国が一致して導き出すべきものだが、実際には他国が同意しようがしまいがサウジアラビアとロシアは増産する、というのが現実だ。イランなど他の産油国が協議から離脱したとしても、18年後半の供給量に違いはなかっただろう。

サウジアラビアは、加盟国と非加盟国が協調しあう枠組みを維持するのは重要だと考えており、今回の会合で産油国が合意する形で結論を出したことはこうした目標の達成にとって重要な一歩となった。一方、OPECプラスの枠組みを維持したことでサウジとロシア、それと米国からの政治的介入に決定が左右されているという事実がみえにくくなっている。

18年後半にはサウジとロシアは追加増産を進め、さらに存在感を増すだろう。サウジとクウェート、UAEが日量70万ー80万バレル増産すれば、1990年半ば以降で初めてOPEC総生産量の半分以上を占めることになる。ベネズエラの産油量がこのまま減少し、イランも米国による制裁で生産抑制が続けば、サウジなど3カ国の比率は1981年以来の高水準に達する見込みだ。

19年までには産油国の生産余力は日量100万バレルを下回ることになり、ほぼ全量をサウジが担う。

価格決定を巡るOPECやOPECプラスの枠組みは維持されても、実際の決定権は他に移ることになる。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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