December 31, 2019 / 10:24 PM / 5 months ago

オピニオン:トランプ氏が接戦制し再選か、また不確実な4年間に=安井明彦氏

[東京 1日] - 米国社会がはっきり分断した中で迎える2020年秋の大統領選挙は接戦になると、みずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は予想する

支持率を見ればトランプ氏に勝ち目はないようにみえるものの、大統領選の過去のパターンから考えれば再選される可能性が高いと語る。

気候変動や格差を争点に掲げる民主党に比べ、トランプ氏勝利は短期的な経済成長という面で好感されるかもしれないが、国際社会における米国のリーダーシップや中長期的な成長への影響を考えると懸念が増すと指摘する。

安井氏の見解は以下の通り。

2020年の大統領選は、米国社会が激しく分裂する中で接戦になるだろう。

ここ四半世紀の大統領選は米国社会の分裂を反映し、勝者と敗者の得票率の差が縮まる傾向にある。10ポイント以上離して勝ったのは1984年に再選されたレーガン大統領が最後で、2000年以降は5回のうち4回は5ポイント未満の差しかない。そのうち2回は得票率で勝った候補が、大統領選挙人の獲得数の差で敗れている。

手元にある材料からは、2つの真逆の予測が立てられる。

大統領選挙を想定した世論調査だけをみれば、トランプ大統領はどの民主党候補と戦ってもおそらく負ける。特にバイデン上院議員と戦ったら、かなりの差がつくだろう。しかし、歴史的な文脈で見れば、トランプ大統領再選以外の結末は考えにくい。

米大統領選はもともと現職に非常に有利にできている。まして景気が悪くないとき、つまり選挙の前年以降に景気後退に陥らなかった大統領で再選を果たせなかった人はいない。今の米経済は不確実性も後退しており、これで敗れるとなると過去に例のない負け方になる。

<民主党候補、注目はブティジェッジ氏>

私自身は、トランプ大統領が再選される可能性がやや高いとみている。社会の分裂を前提に、16年と同じことが繰り返されるのであれば、全体の得票率で負けたとしても、州ごとの積み重ね、つまり選挙人の獲得で勝つ道がある。

トランプ大統領の支持率は16年からほとんど変わっていない。支持率の水準が変わっていないだけではなく、例えば男女別の支持率、白人と非白人の支持率もほとんど変わらない。4年前の状況が再現されようとしている。

弾劾訴追は、双方にプラスに働き得る。共和党が上院の多数を占め、かつ共和党の支持者もトランプ氏支持で揺らいでいない中では結論は見えており、いずれ無罪放免される。しかし、その過程で各党とも支持者が盛り上がり、自分が応援する政党を勝たせようと投票所へ足を運ぶ人が増える可能性がある。

接戦ではどれだけ多くの人に投票してもらうかが重要だ。支持率が低いトランプ大統領は支持者に確実に投票してもらう必要があるし、民主党も、黒人を中心に前回選挙でヒラリー・クリントン候補への投票を敬遠した支持者にもう一度足を運んでもらう必要がある。

民主党の候補者指名争いは中道とリベラルに分裂するこれまでと同じ構図だが、今回は両者の差がこれまでよりも小さい。先に候補を1本化できたほうが優位に立つだろう。誰が候補になっても、本戦になれば「打倒トランプ」で支持者はまとまることができる。リベラルにとっては、トランプ氏を敵にできる今回が大統領に近づくチャンスかもしれない。

中道で勝てる候補といえば、支持率が安定し、黒人からも支持されているバイデン氏だろう。インディアナ州サウスベンド市長のブティジェッジ氏も注目だ。37歳と飛び抜けて若く、政策に通じ、弁舌も良い。これから伸びていく余地がある。リベラルは、庶民派のサンダース上院議員のほうがウォーレン上院議員よりも支持率が安定している。

<新たな対中政策は打ち出さず>

来年はトランプ大統領が選挙に向けて新たな政策を打つことはないとみている。基本的に、これまでの成果をアピールしていくだろう。経済が順調、株価も高いというのは再選に追い風であり、ここで中国との交渉をもう一段エスカレートさせて、景気に冷や水を浴びせるようなことは考えにくい。

ただし、香港で制御不能な騒乱が起きたり、中国が軍事行動を起こすなど、米国が動かざるを得ない予想外の混乱が発生するリスクは考えておく必要がある。

減税も口には出すことはあるかもしれないが、下院の多数を民主党が占める中では実現が難しい。

トランプ氏が再選した場合、2期目に何をやりたいのかはよくわからない。今のところ公約らしきものもない。経済政策では、1期目と同様、減税と規制緩和を打ち出しそうだが、実現できるかは議会選挙の結果次第だ。通商面で再び厳しい政策を進めるかもしれないが、これまでも世界経済がクラッシュするようなところまでは行かなかった。どちらかというと不確実性の世界、これがまた続くことになりそうだ。

一方、民主党の候補者が勝った場合、通商面で不確実性はないかもしれないが、人権問題で中国との関係がより厳しくなる可能性がある。内政では減税などなく、どちらかと言えば増税の方向に動くだろう。

経済成長という面からすれば、短期的にはトランプ氏再選のほうが好ましいかもしれない。しかし、気候変動や格差、移民問題といった民主党が提示している論点を無視していいかどうか。こういう問題に真剣に取り組まないと、米国の中長期的な成長にはボディブローのように効いてくる。

トランプ政権下、外交舞台における米国の影響力は非常に低下した。同盟国であってもアメリカをどこまで信じていいのか、特に欧州はそう感じている。民主党の大統領が誕生しても失墜した信頼を取り戻すのは難しいだろう。トランプ大統領続投なら世界をリードする国がいない状況が定着することになる。

(聞き手:久保信博、新倉由久)

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。安井明彦氏にインタビューし、同氏の個人的見解に基づき書かれています。

安井明彦氏

*安井明彦氏は、みずほ総合研究所・欧米調査部長。1991年東京大学法学部卒業後、富士総合研究所(当時)入社。在米日本大使館専門調査員、みずほ総研ニューヨーク事務所長などを経て、2014年より現職。主な著書に「アメリカ 選択肢なき選択」などがある。

1月1日、米国社会がはっきり分断した中で迎える2020年秋の大統領選挙は接戦になると、みずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は予想する。写真は2019年12月18日、ミシガン州バトル・クリークで撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

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