January 12, 2017 / 7:07 AM / a year ago

オピニオン:「悪いトランプ」の変わらぬリスク=安井明彦氏

[東京 12日] - 当選後初となるトランプ次期米大統領の11日の記者会見では、懸念されていた為替問題など、マイナス面の新たな材料は出なかったものの、従来からの過激な政策アイデアや言動が繰り返され、「大統領らしくなる」「穏健になる」期待は完全に裏切られたと、みずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は指摘する。

今後の注目点は具体的な政策内容だが、そのヒントはトランプ氏の当面の言動よりも、むしろ閣僚公聴会にありそうだという。

同氏の見解は以下の通り。

<トランプ相場に新たな燃料投入なし>

期待のみで続いてきたトランプ相場は、新たな燃料が欲しかったところだが、減税やインフラ投資の具体策などプラス面の新材料もなければ、懸念されていた為替問題などマイナス面の新材料もなかった。ただし、選挙期間中に示された過激な政策アイデアや言動が繰り返され、「大統領らしくなる」「穏健になる」期待は完全に裏切られた格好だ。

メキシコ国境の壁建設や移転企業への懲罰課税など、気になる発言も相変わらずだった。メディアとの対決姿勢、利益相反への強気な態度、納税情報の非開示、具体的な政策内容の欠如――。「悪いトランプ」「困ったトランプ」は、どうやら大統領になっても変わりそうにない。

中でも「変わらないトランプ」の代表格は、国内雇用重視の姿勢である。問題視されていた企業経営への口出しも、悪びれることなく、成果として高らかに歌い上げた。

「通商協定は大惨事」といったおなじみの表現も繰り返された。中国、メキシコに並んで、日本が言及されるパターンも、選挙当時と同じだ。

もちろん、個別の口出しで増える雇用は大したことはない。懲罰課税が本当に導入されるかも不透明だ。ただ、軽視すべきではないのは、「国外移転は歓迎されない」というメッセージである。そうした認識が浸透することで、米国への進出が後押しされる効果はあるだろう。

また、そもそも米国経済が堅調あれば、企業から見て、同国での投資拡大は妥当な判断だ。トランプ氏のごり押しが、結果的に、米景気の後押しとなる可能性はある。さらに、法人税率の引き下げなど、米国への投資を支援するような改革が実現すれば、企業にとってはチャンスになる。

<閣僚公聴会に具体的政策のヒント>

さて、今後の注目点は、具体的な政策内容に尽きる。期待・懸念を裏付けるような政策は出てくるのか、以下の3点が気掛かりだ。

1)財政政策(減税、インフラ投資)の規模・タイミング

2)北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなど、通商政策・為替政策での出方

3)懲罰課税(もしくは法人税改革)など、海外進出企業への具体的な対応

ただ、これらの点に関するヒントは、トランプ氏の当面の言動よりも、むしろ閣僚公聴会にあるのかもしれない。トランプ氏の発言だけを追っていても、振り回されるだけになりかねない。

例えば、トランプ氏の記者会見と同日に行われたチャオ運輸長官候補の指名公聴会では、インフラ投資の具体案について、チャオ氏から民間資金活用の重要性が述べられた。タスクフォースを組成し、ファイナンス手段を検討する方針だという。

今後の注目は、トランプ氏の大統領就任式に前後して相次ぎ予定される以下の4氏の公聴会だ。まず、ムニューチン財務長官候補が、為替関連の発言を行うのか、税制改革の中身・スケジュールを示唆するのか。次に、ロス商務長官候補とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表候補が果たして通商協定への態度を鮮明化したり、海外企業移転対策の具体的方針を示したりするのか。またマルバニー行政管理予算局(OMB)局長候補が財政赤字の拡大を認めるような発言を行うのか、といったところだろう。

ちなみに、トランプ氏は、今回の会見で、最高裁判事の指名に関連して、「我々が何を行うかといえば、月曜日まで待つと思う(I think what we’ll do is we’ll wait until Monday)」と述べた。月曜日こそが、「本当の意味での最初の営業日(That will be our really first business day)」というわけだ。

これまでトランプ政権については、「最初の日に何をやるか」が注目されてきたが、この発言を聞く限り、大統領就任式当日(20日)に動かなかったとしても、安心できないことになる。実際に動き出すのは、就任翌週の月曜日(23日)以降なのかもしれない。

*本稿は、安井明彦氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

(聞き手:麻生祐司)

トランプ次期米大統領は11日、昨年11月に当選して以来初めてとなる記者会見を開いた。政策の詳細や、選挙後、国民の分断が深刻であることについてほとんど言及はなく、就任目前にもかかわらず、同氏の準備不足が目につく会見となった。

*安井明彦氏は、みずほ総合研究所・欧米調査部長。1991年東京大学法学部卒業後、富士総合研究所(当時)入社。在米日本大使館専門調査員、みずほ総研ニューヨーク事務所長などを経て、2014年より現職。主な著書に「アメリカ 選択肢なき選択」などがある。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「トランプ新政権」に掲載されたものです。

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