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オピニオン:2018年は景気の主役交代、金利上昇の新局面へ=青木大樹氏
November 30, 2017 / 7:37 AM / 10 days ago

オピニオン:2018年は景気の主役交代、金利上昇の新局面へ=青木大樹氏

[東京 30日] - 2017年の世界景気回復は、中国経済の成長とエネルギー価格の上昇によるところが大きかったが、2018年は成長のけん引役の変化と金利の上昇局面入りなど、従前と異なる要因による「ゴルディロックス(適温)相場」の継続が見込まれると、UBS証券ウェルス・マネジメント本部の日本地域CIO(最高投資責任者)兼チーフエコノミストの青木大樹氏は予測する。

ただし、米国の利上げペースが速過ぎれば再び景気後退を招く恐れがあり、現状では2018年の利上げは2回程度が望ましいと指摘する。向こう12カ月間のドル円相場は、1ドル=112─118円を予想。日本株については、2017年は一時的に収益がかさ上げされていた部分もあり、選別投資が賢明だと説く。

同氏の見解は以下の通り。

<米鉱工業生産上昇分の9割が石油鉱業関連>

2018年の経済展望については、好景気が続くとの見方が大勢ではないか。当職も、例えば米経済でいえば2%を若干上回る程度の成長が続くとみており、急激な景気過熱のない「ゴルディロックス(適温)相場」は2018年も続くと考えられる。ただし、2017年のモメンタムが2018年もそのまま続くわけではなく、相当程度「中身」の異なる成長になるだろう。

まず、現状の景気は新興国も先進国も堅調に推移している。企業購買担当者による景況感指数であるPMIは、製造業も非製造業も50を超えている国が多い。この景気回復は、中国経済の想定以上の成長と、資源価格の反転上昇という2つの恩恵によるところが大きい。

中国経済の成長率は、2017年1―3月期と4―6月期が6.9%で、7―9月期も6.8%であり、政府目標(6.5%前後)よりも高い水準で推移している。中国の成長が新興国経済への影響を通じて、先進国での好循環をもたらしている。日本の輸出を見ても、伸びているのは中国向け半導体や省力化機械の部分だ。

資源価格は、2016年初めに20ドル台だったWTI原油先物が最近では50ドル台に回復。米国の2017年の鉱工業生産については上昇分の92%が石油鉱業関連の投資で説明できる。また、米国の設備投資は、エネルギー投資により1.4ポイント押し上げられている。エネルギー関連を除いた設備投資の伸び率はむしろ減速してきており、いかに米国の投資がシェールガス・オイル増産や石油関連に支えられたかが分かる。

<未来・省力化投資増と金利上昇の2018年に>

2018年は、市場を動かす主役が大きく変わるだろう。米国経済で成長持続の鍵を握るのは、非エネルギー部門への投資だ。製造業で雇用が伸びているのはテキサスなど一部の州で、全米で見れば非製造業が雇用拡大の中心だ。

非製造業化が進むということは、サービス業への新しいテクノロジー投入などの投資が出てきやすくなる。人手不足に陥っているところも多いなか、ロボットや人工知能(AI)などの新技術を活用したヘルスケアやビジネスサービスなど、生産性向上を促すような未来投資や省力化投資などが伸びてくることが成長を持続させる。

次に注目すべきは、金利の低下トレンドが転換期を迎え、上昇局面に入る蓋然(がいぜん)性が高いことだ。先進国の金利はこの10年間低下し続け、異次元の金融緩和政策により米国の金利はゼロに下がり、日本などではマイナス金利という異例の事態となっていた。だが今後は、米連邦準備理事会(FRB)が現状4.5兆ドル程度のバランスシートを3兆ドル程度まで減少させるほか、年2―3回程度の利上げが続くことが見込まれている。

欧州中央銀行(ECB)も、国債買い入れ規模を縮小(テーパリング)した後、保有資産の縮小に着手する。日本についても、国内の物価上昇に加えて米10年金利上昇の影響もあり、正常化の方向に踏み出す可能性が高いとみている。実際、先進主要国の10年金利は、2016年7月あたりを底として、上昇に転じる兆候がみられる。

このように2018年は、これまでの中国と資源価格頼みの成長から、非エネルギー投資の拡大が金利の緩やかな上昇を支えていく経済への転換が見込まれる。

<リスク要因は米国の利上げペース>

一方、2018年で一番注目しているリスク要因は、FRBによる利上げのペースだ。拙速な利上げは、景気後退をもたらすことが過去の経験で分かっており、2018年2月にFRB議長に就任するパウエル氏には慎重なかじ取りが求められる。

過去のFRBの利上げ期を見ると、10年金利が2年金利を下回る、いわゆる「逆イールド」現象を引き起こしている。そして、逆イールドが起きた数年内に、景気後退が発生した。1990年代半ばの利上げ期は、逆イールドにこそならなかったものの長短金利差がゼロ近傍に落ち込み、メキシコやタイで通貨危機が起きてバブルが崩壊している。利上げのペースが速過ぎると10年金利の上昇が追いつかず、逆イールドが発生。そうなると、グローバル市場での資金の流れが大きく変わるためと考えられる。

現状、2年金利と10年金利の差はまだ60ベーシスポイント(bp)あり、すぐに逆イールドが発生する可能性は低い。FRBも緩やかな利上げペースを想定しているようだ。ただ、もし2018年の米経済が2%程度の成長にとどまるのであれば、利上げの回数は2回程度が望ましい。物価上昇率や賃金上昇率から考えて、米10年金利は2.5%までしか上がらないとみられるためだ。2018年も3回の利上げが行われると、米2年金利が2.5%に近づき、逆イールド発生のリスクが出てくる。

もう1つのリスク要因が中国だ。全体的な方向としては、習近平国家主席が10月の中国共産党大会で権力基盤をより強固にしたこともあり、成長率が鈍化しても、成長自体は続くだろう。しかし、シャドーバンキング規制やオフバランスシート負債の引き締め政策が強化されるなか、外貨準備高の推移に気をつけたい。資金の国外流出が再び加速してしまうと、通貨安を回避するため政策引き締めのペースが速まる悪循環に陥りかねない。そうなると、中国のハードランディング懸念が出てくる。

2014年は4兆ドル近くあった中国の外貨準備は、1年半ほどで約3兆ドルと、日本円に換算して100兆円以上流出した。これが2.5兆ドルで黄信号、2兆ドルを下回れば中国政府が為替をコントロールできなくなる水準になり、赤信号が灯る。外貨準備は、国内貯蓄から負債を引いたものであり、国内に十分な貯蓄があるかどうかが、中国リスクを見る上で重要な要素だ。

<金利上昇局面での投資戦略>

最後に、2018年の投資戦略について簡単に触れておきたい。

まず、グローバル株式については、景気拡大が続くなかでPMIは50を大きく上回っており、オーバーウエイトを継続する。米国株については中立だが、設備投資や人口動態の恩恵を受けるテクノロジーやヘルスケア部門、資本財セクターには強気の見方をしている。日本株は、まだ割高過ぎるわけではないが、2017年は前年比で一時的に収益がかさ上げされていた部分もあり、人手不足の恩恵を受けるセクターなど少し選別的になる必要があろう。通貨は、米ドル中心からユーロや新興国通貨などへの資金シフトが生じている。

2018年は、金利の上昇局面に備えた資産配分の変更が必要になるとみており、上昇局面でアウトパフォームする傾向があるヘッジファンドを取り入れたり、短期金利が急上昇すれば長期金利が上がらなくなるため、超長期の国債に振り分けるなどの対策が考えられる。

2018年のドル円相場については、上述したように米長期金利の緩やかな拡大に伴って日米金利差が2.5%程度まで広がるなか、想定される中心レンジは1ドル=112─118円だ。

*本稿は、青木大樹氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

(聞き手:山口香子、麻生祐司)

*青木大樹氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部の日本における最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミスト。2001年より内閣府で政策企画・経済調査に携わった後、2010年にUBS証券入社。2016年、インスティテューショナル・インベスター誌による「オールジャパン・リサーチチーム」調査の日本経済エコノミスト部門にて5位(外資系1位)に選ばれる。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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