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オピニオン:消費増税・投資減税はなぜ必要か=ジョルゲンソン教授
April 20, 2016 / 5:21 AM / 2 years ago

オピニオン:消費増税・投資減税はなぜ必要か=ジョルゲンソン教授

デール・ジョルゲンソン 米ハーバード大学教授

 4月20日、米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授は、生産性革命のためには税負担の投資から消費へのシフトが有効だという方向性を日本は見失ってはいけないと指摘。都内で2014年5月に撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 20日] - 日本の経済政策が重視すべきテーマは生産性革命であり、特に非製造業分野での「岩盤規制」打破による競争促進が急務だと米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授は説く。また、生産性向上のためには、消費増税・投資減税を柱とする税制改革を進め、企業投資を促すことが有効だと主張する。

同氏の見解は以下の通り。

<生産性革命をけん引すべき7つの産業>

日本政府が3月17日に開催した国際金融経済分析会合(第2回)に、スピーカーとして私は招かれた。その際、安倍晋三首相や麻生太郎財務相ら出席者に対して強調したことは、生産性革命(Productivity Revolution)の重要性だ。財政政策についても、生産性向上策とセットで考えるべきだと伝えた。

日本の生産性上昇率は1991年以来、低迷傾向にある。日米間の全要素生産性(TFP)ギャップを見ると、日本は高度経済成長の過程を経て91年に米国とほぼ肩を並べたが、その後再び劣勢に立ち、米国との差は80年代初頭のレベルにまで戻っている。現在、米国に対して生産性で優位に立つ産業は、わずかしかない。

日本の製造業の生産性上昇率が米国に対して劣ってしまった大きな要因の1つは、歴史的に見ても行き過ぎた円高だった。また、2007―09年の世界的金融危機の混乱を経て、米国産業界の劇的な再編が進んだことも日米間のTFPギャップの拡大要因となった。

しかし、為替については、現在の水準を見る限り、パリティ(均衡水準)に近く、円高の重石はアベノミクスのおかげで解消したと言っていい。日本が今、取り組むべきことは、低生産性産業に眠る成長のポテンシャルを見出すことである。

具体的には、次の7つの産業セグメントに非常に大きな生産性向上の余地があると注目している。産業区分で言えば、農林水産業、不動産、電気・ガス、建設、金融・保険、卸売・小売業、その他サービスだ。前述したように製造業分野の生産性も米国との比較で日本は再び劣勢に転じているが、生産性向上の余地は非製造業分野のほうがはるかに大きい。

生産性向上の鍵は、競争促進だ。日本の成長政策はこれまで重点産業分野への補助金政策を伝統的なアプローチとしてきたが、その結果、成熟化した産業が規制を盾(たて)に競争阻害に動いてしまっている。新たな産業(成長)政策は、安倍政権が強調しているように、岩盤規制を打破することで、競争を促進することに主眼を置くべきだ。

その意味で、安倍政権が着手している農業改革や電力改革は、正しい方向だ。しかし、日本は非製造業分野全般の岩盤規制打破に向けて、一層努力する必要がある。先ほど挙げた7つの産業分野で日米間のギャップを埋めることができれば、ギャップ全体の18%を解消することは可能だと見ている。

 4月20日、米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授は、生産性革命のためには税負担の投資から消費へのシフトが有効だという方向性を日本は見失ってはいけないと指摘。都内で2014年5月に撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

また、併せて重要なことは、効率性向上を目指して「働き方改革(Working Style Reform)」を進めることだ。いわずもがなだが、年功序列の賃金体系や終身雇用に象徴される日本の雇用慣習は根強く、いまだ労働市場の流動性を妨げている。この部分は変わらなければいけない。

そして、政府は、労働力人口が減り続けるなかで、出生率と女性の労働参加率を高めるために、女性が出産とキャリアを両立できるよう、政策面でもっと努力する必要がある。

<世界経済失速懸念に基づく消費増税先送りは無用>

加えて、もう1つ重要な点を挙げれば、生産性革命を促すような方向に税制を改革していくことだ。税負担を投資から消費へとシフトさせることによって、民間投資を喚起し、生産性向上を促進することが大事だと考える。

もちろん、来年4月の消費税率引き上げについては、リーマンショック級の危機が発生すれば、先送りも選択肢としてあり得るのだろうが、それほどの危機が目前に迫っているとは思わない。

このところ世界経済の見通しについては悲観的な見方をよく耳にするが、人口動態や生産性の将来のトレンドに基づく私の試算では、世界経済は今後も年3.2%ほどの持続的成長が見込まれる。過去4半世紀の年3.3%の成長をわずかに下回る程度だ。世界経済失速を懸念して安倍政権が消費増税を見送るようなことがあれば、驚きだ。

いずれにせよ、1年後の税率変更については、もう少し時間をかけて最終判断を下せばよい。ただし、生産性革命のためには税負担の投資から消費へのシフトが有効だという基本的な方向性を日本は見失ってはいけない。

(聞き手:麻生祐司)

*本稿は、デール・ジョルゲンソン氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*デール・ジョルゲンソン氏は米国の経済学者で、ハーバード大学名誉教授。計量経済学会会長、米国経済学会会長、米国学術研究会議経済政策部門(STEP)委員長などを歴任。スウェーデン王立科学アカデミー、全米科学アカデミーなどの名誉会員。

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