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オピニオン:2017年はドル安と新興国株高へ=居林通氏
2016年12月9日 / 09:32 / 1年前

オピニオン:2017年はドル安と新興国株高へ=居林通氏

[東京 9日] - トランプ米次期政権下でのドル高期待は根強いが、ドルはすでに過大評価されており、足元の上昇基調は長く続かないと、UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパン・エクイティ・リサーチ・ヘッドの居林通氏は指摘する。

ドル円レートについては、6カ月後102円、12カ月後98円への下落を予想する。

主な根拠としては、一段の金利高に耐えられるほど米国経済のファンダメンタルズが頑強ではないことに加えて、保護貿易主義を掲げるトランプ次期政権が景気や企業収益にマイナスとなるドル高の是正に動く可能性が高いためだという。

同氏の見解は以下の通り。

<一段の米金利高は期待薄>

為替市場では、1)米国でインフレが進み、2)米金利が上昇、3)それゆえにドル高になる、との三段論法から、2017年はドル円上昇に拍車がかかると予想する向きが多いようだ。

我々も一番目の大前提であるインフレについては、トランプ政権が減税・インフラ投資・規制緩和で米経済の失速を防ぐため、今後年率2―3%程度で上昇し、米株も堅調な推移を見せると考えているが、二番目の前提が巷間の見通しと大きく異なる。

失速を免れるとはいえ、米経済も高齢化・貯蓄超過・低生産性など、他の先進国と同じ長期停滞要因を抱えており(それでも2017年と2018年の成長率見通しは先進7カ国中で最も高い2%台半ば近辺だが)、金利上昇余地はさほど大きくないと予想している。

米政策金利に関する市場のコンセンサスは、12月に1回、2017年中に2回、25ベーシスポイント(bp)ずつの引き上げがあるというものだろう。我々も同様に見ているが、この見通しはすでに現在の価格形成に織り込まれている。現状よりドル高が進むためには、2017年の利上げ見通しが3回、4回へと強まる必要がある。これは、米経済のファンダメンタルズに鑑みれば、ほぼ実現不可能なシナリオであるように思われる

実際、11月の雇用統計もさほど強くなかった。リーマン・ショック後の2009年以来続く労働市場の拡大局面も、そろそろ終焉が近づいている。米10年国債利回りは現在、2.4%台で推移しており、今後も一時的にはさらに上に跳ね上がる可能性もあるだろうが、基調として2.5%を大きく超えていくことにはならないと予想している。利回り曲線も多少フラット化が進むと思われる。

むしろ、指標などで米景気拡大サイクルの終焉の兆候が少しでも確認されれば、金利は下落に転じる可能性もある。2017年中とは言わずとも、政策金利についても、次は利下げが話題になることも十分あり得るのではないか。

<保護貿易なら通貨安志向>

2017年1月に始動するトランプ次期政権が一段の金利高・ドル高を許容するとも思えない。選挙期間中に強調していた「米国第一主義」を貫くならば、世界経済が需要不足に直面している現局面下では、通貨安政策こそが当然の帰結であるはずだ。

こう話すと、トランプ政権下で拡張的な財政政策が志向されれば、結局はインフレも景気も押し上げられ、金利高・ドル高になるではないかとの反論が聞こえてきそうだ。だが、そもそもトランプノミクスが本当に財政赤字の大幅な拡大を伴うようなアグレッシブな景気刺激路線になるのかどうかは現時点では不透明だ。

確かに減税・インフラ投資は、公約通りの規模になるかは別として、実施されるのだろうが、トランプ氏は選挙期間中、財政中立(歳出増加分に相当する財源確保)の必要性を訴えていた。2017年1月就任後の所信表明演説や春以降の財政協議の中身を見ないとはっきりとは分からないが、恐らくは共和党らしいバランスバジェット(均衡予算)重視の姿勢が堅持されるのではないか。

また、日本側の材料に目を移しても、日銀が2017年中に量的緩和縮小(テーパリング)に向かい始める可能性は高い。周知の通り、米連邦準備理事会(FRB)は2年前の2014年10月に量的緩和を終了し、欧州中央銀行(ECB)も今年12月8日の理事会で資産購入の減額を決めた。

日銀の国債保有高はすでに国債発行残高の約4割に達している。年80兆円増の買い入れペースでは、年7―8%の保有残高増につながり、持続可能とは思えない。我々は、日銀が2017年半ばに70兆円、2018年4月に60兆円まで買い入れペースを減少させると見ている。これもドル安円高要因となろう。こうしたことから、ドル円レートは6カ月後には102円、12カ月後には98円まで下落する可能性が高いと見ている。

<日本株は選別投資の局面>

では、ドル安シフトを前提に考えると、2017年はどのような資産クラスが有望なのか。結論を言えば、新興国関連だろう。

一部には、保護主義を掲げるトランプ米次期政権の誕生で、新興国の「冬の時代」が長期化するとの悲観論もあることは承知しているが、我々はそうは思わない。確かに米国への輸出比率が高い国はより高い関税で苦しめられる可能性はある。だが、新興国市場の全てが米国と対等に貿易しているわけではない。

また、2014年以降の米テーパリングに伴うドル高進行によってドル建て債務負担が急増するなどして、新興国景気が下向きの圧力をずっと受け続けてきたことは事実だが、2017年以降、ドル安基調に転じれば、この流れが一変する可能性がある。ファンダメンタルズの改善、企業収益の拡大、そして高水準にある世界の流動性を考えれば、新興国の資産は依然として魅力的だ。

一方、先進国に目を移せば、ドル安シフトに伴う企業収益回復期待を背景に、米国株は例外的に堅調な推移が引き続き見込めそうだが、通貨高に見舞われる欧州大陸株や日本株は厳しい展開が予想される。特に日本株は、ドル円が98円になれば、来期の企業業績が純利益ベースで減益となりかねないため、下押し圧力がかなり強まりそうだ。

足元で日経平均株価は1万9000円近辺と、6―7月の底値から25%以上戻っているが、この水準はすでにフェアバリュー(適正値)を超えている。選別投資を一層進めるべき局面だろう。

ちなみに、我々が現在、買い推奨としている主な投資アイデアは、株式では米国株と新興国株(中国・インド・ブラジル)、為替では先進国通貨バスケット(豪ドル・カナダドル・スウェーデンクローナ)に対する新興国通貨バスケット(ブラジルレアル・インドルピー・ロシアルーブル・南アフリカランド)、債券では米国物価連動国債や米国シニアローン、その他では工業用貴金属などである。安全資産としての金についても、現在の相場水準は魅力的だと考えている。

*居林通氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部のジャパン・エクイティ・リサーチ・ヘッドでエグゼクティブ・ディレクター。大手投資信託やヘッドファンドなどで運用に携わった後、2006年UBS証券入社。

*本稿は、居林通氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

(聞き手:麻生祐司)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

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