April 11, 2016 / 6:41 AM / 3 years ago

オピニオン:「円高」トレンド回帰は本当か=中窪文男氏

同氏の見解は以下の通り。

<リスクオフの根源は経済より政治>

円高進行に揺れる日本は別として、このところ海外では、リスクオフの流れが去り、リスクオンへと移ったかのような論調が増えているように見受けられる。

実際、米株(NYダウ)も世界株式(MSCI指数)も一進一退が続く中で、このところは上値を切り上げ、特に米株は過去最高値を再びうかがう勢いを取り戻しつつある。日本株も断続的に下落する局面が見られるとはいえ、引き値ベースでは年初のように大崩れすることは少なくなった。

しかし、油断は禁物だ。昨夏や年初に世界の金融市場を襲った深刻なリスクオフが再び猛威を振るう可能性には引き続き注意が必要だと私は考えている。

まず、忘れてはならない点は、世界経済のファンダメンタルズは、リスクオフが市場を覆った当時と変わっていないということである。あえて言えば原油相場が少し戻してきたことと、米国景気が労働関連指標を中心に想定以上に良い点だが、世界経済の足腰は弱いままだ。特に中国経済の状況は依然として厳しい。

一部では、あたかも2月末に中国・上海で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がリスクオフの流れを断ち切ったかのごとく言われているが、声明で謳われた機動的な財政政策がすでに主要国で行動に移されたわけではなく、かつ移されたところで果たしてどのような効果がもたらされるかも不透明だ。

また、米大統領選をめぐる不透明感や、世界主要都市での過激派による攻撃リスクなど、リスクオフの芽は逆にあちこちで増えている気すらする。これらは政治要因だけに先行きが読めず、いつなんどき市場に大きな波乱をもたらすとも限らないだろう。

<日米金融政策の違いが円安をサポート>

では、こうした状況下、為替市場の行方をどう見るべきなのだろうか。確かに、今後もリスクオフが昨今の円高の流れを勢いづかせる可能性には警戒を怠れない。1ドル=110円割れが常態化し、107円割れ、105円割れと円が切り上がっていくようなことがあれば、中長期的な円高トレンドへの本格シフトも懸念すべき展開だとは思う。

ただし、年末に向けたメインシナリオは、現時点では引き続き円安トレンド継続と見て良いと考えている。最大の理由は、いわずもがな、日米金融政策の方向性の違いにある。

米国景気は依然として堅調であり、利上げ方向にあるのは変わりない。年4回はないにしても、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの3月時点の見通しにあるように、年2回の利上げは実際にあると見込んでいる。恐らく9月と12月ではないか。

一方で、日銀は年80兆円という猛烈なペースで量的緩和を継続中なうえに、1月末の決定会合でマイナス金利導入を決めた。確かに、2月はリスクオフの流れに押されて、マイナス金利の円安効果も感じられなかったが、スイスの例に見られるように、同政策の通貨安効果(少なくとも通貨高是正効果)は明白だ。リスクオフが猛威を振るわないことが条件だが、今後はじわりじわりと円安効果を及ぼしていくのではないだろうか。

具体的なドル円レート見通しについて言えば、昨年末時点よりもドル安円高方向に若干下方修正したものの、3カ月後に117円、6カ月後に120円、12カ月後に122円を目指すと見ている。

<景気好調なユーロは対ドルで上昇へ>

一方、ユーロはどうか。こちらは、円とは違い、ドルに対して上昇圧力が次第に強まっていくと予想している。

金融緩和を進めている点は日本と変わりないが、通貨安や原油安、企業向け貸し出しの増加などを受けて、ユーロ圏景気が上向いていることが理由だ。実際、ユーロ圏経済は米国経済と同じくらいファンダメンタルズが良好だと当社エコノミストは分析している。よって、今後は購買力平価(PPP)などで見た均衡レート(1ユーロ=1.26ドル)に近づく形でユーロ高が進むだろう(東京時間4月11日午後3時時点は1.14ドル付近)。

ちなみに、PPPなどで見たドル円の均衡レートは78円だが、円がそこまで上昇することはないと考えている。理由はシンプルで、その水準では円高デフレに逆戻りするため、政府・日銀が意地でもしないということだ。ただし、2%物価目標を放棄した途端、まっしぐらにその均衡レートに向かうことは間違いない。つまり、黒田日銀は今後も、「(物価目標達成のために)できることは何でもやる」という姿勢を試され続けることになろう。

黒田総裁の任期はあと2年。そのあいだに日銀が買うべき国債が市場からなくなり、最終的に金利が跳ね上がることで、急激な円相場の変動(悪い円安など)が引き起こされる最悪シナリオにも注意を払う必要はあるが、それはまだ先のことになりそうだ。

*本稿は、中窪文男氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて構成されています。

*中窪文男氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部のチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO、最高投資責任者)ジャパン。日本生命、ブラックロックなどを経て、2014年6月より現職。京都大学経済学博士。一橋大学金融工学・経営学修士。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below