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コラム

オピニオン:日銀緩和すでに「ヘリマネ」化、財政危機は杞憂=エモット氏

[東京 22日] - 財政健全化の取り組みは堅調な経済成長が続く時だけ成功が見込めることから、日本経済の足元の弱さを考えると、消費増税先送りは正しい判断だったと、英エコノミスト誌の元編集長でジャーナリストのビル・エモット氏は指摘する。

 6月22日、英エコノミスト誌元編集長でジャーナリストのビル・エモット氏は、日銀の金融政策はすでにヘリコプターマネーと化しているが、日本の公的債務への過度な懸念は現時点では無用だと指摘。 写真は都内の日銀本店前で3月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

また、日銀緩和はすでに事実上の「ヘリコプターマネー」と化しているが、投資家は当面、日本の高水準の公的債務について過度に懸念する必要はないとエモット氏は説く。

同氏の見解は以下の通り。

<増税より成長率底上げが先決>

安倍首相による消費増税先送りの判断は正しかった。なぜなら、現局面での増税は、歳入を増やすよりも減らす方向に作用する可能性が高いからだ。実際、前回(2014年4月)の増税直後には、国内総生産(GDP)が大きく下落し、税収の伸びを抑えた。

もちろん、長期的に見れば、消費税率引き上げで税基盤を強化する必要性については、私も何ら異論はない。ただ、現在のような低成長下での増税は、むしろ逆効果となってしまう可能性が高い。

財政健全化の取り組みは、GDPが順調に伸びている時だけ成功する。ゆえに、現段階で優先的に取り組むべきことは、増税よりも、GDP成長率を持続可能なペースで引き上げていくようなアクションである。それは大きく分けて3つあると考える。

まず、労働市場改革は不可欠だ。非正規雇用労働者の賃金交渉力を高めたり、長期雇用を保障されてきた正規雇用労働者の企業間移動を促進するような改革を実行する必要がある。

第2に、減価償却・法人税の改革だ。企業が余剰キャッシュを投資するように、あるいは株主に還元するようにその背中を押す改革が必要だ。

第3に、競争環境を整備するような規制緩和、すなわち「第3の矢(成長戦略)」がもっと放たれなければならない。

<すでに政府紙幣発行と同じ>

なお、日銀が現在続けている量的緩和は「ヘリコプターマネー」とあまり変わらない。日銀はすでに政府支出への直接的なファイナンスを行っているに等しい。また、「プリンティングマネー(中央銀行券ではない政府紙幣の発行)」も実態上行われているとみなされても仕方がない。

では、日本の高水準の公的債務について、市場参加者が懸念すべきかどうかと聞かれれば、確かに憂慮すべきではある。ただし、いたずらに不安を膨らませる必要はまだない。債権者の大部分は外国人ではなく日本人だ。また、純債務ベースでは、国際水準に照らして、決して過度に大きいわけではない。

(編集:麻生祐司)

*ビル・エモット氏は、英国のジャーナリスト。オックスフォード大学モードリン・カレッジ卒業後、同大学のナフィールド・カレッジを経て、1980年に英エコノミスト誌に入社。83年から3年間、東京支局長。93年から2006年まで13年間、同誌の編集長を務めた。「日はまた沈む」「日はまた昇る」など日本に関する著書多数。

*本稿は、ロイターの「アベノミクス」特集に掲載されたものです。ビル・エモット氏の個人的見解に基づいています。

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