October 26, 2015 / 3:35 AM / 2 years ago

オピニオン:日米政策かい離の「円安余地」=チャンドラー氏

[東京 26日] - 追加緩和催促相場に拍車がかかるなか、ドル円は先週末、121円台半ばに上昇したが、6月につけた125円台後半はなお遠く、上値は重い。ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略最高責任者、チャンドラー氏は、30日会合での日銀追加緩和は期待薄であり、テクニカル分析上も円高方向に修正が入りやすいと説く。ただ、基調としてのドル高・円安継続は当面不変だと強調する。

同氏の見解は以下の通り。

<ドル円の中心レンジは来年125―130円に移行>

ドル円相場の行方を占う上で、まず押さえておくべき点は、日米金融政策のダイバージェンス(かい離)が健在であることだ。個人的には、10月に関しては米連邦準備理事会(FRB)の利上げも日銀の追加緩和もないと考えているが、遅かれ早かれ米国で利上げが行われるのはまず間違いない。私の見立てでは、12月に1回目、来年3月に2回目が実施される線が濃厚だ。

一方で、10月以降の日銀追加緩和の有無は不透明だが、デフレ脱却が道半ばであり現行の量的緩和策について出口議論の入り口にすら立っていないことを考えれば、日本要因でダイバージェンスが解消する可能性は当面低い。

その前提で言えば、今後は主に米国要因でダイバージェンスは継続ないしは拡大に向かい、ドル高・円安基調は続く可能性が高い。中心レンジは来年半ばに向けて1ドル=125―130円近辺に移行するとみている。

テクニカル分析上は、短期的にはドル安・円高方向に修正が入りやすいチャートパターンを形成している点には留意が必要だ。また、ドル円は日本株よりも米国株との連動性が高い状況にあるが、利上げで米株が下がれば円高方向への巻き戻しは十分あり得る。116―118円程度までの反落余地は覚悟したほうが良いだろう。

もっとも、そうした動きは、仮に顕現化しても一過性である可能性が高い。日米金融政策のダイバージェンスを背景に、早晩、122―123円近辺へ反発すると予想される。

ちなみに、今回のドルラリー(上昇)は1971年のブレトンウッズ体制崩壊後、3度目のドル高局面に当たる。1度目は80年代前半、レーガン政権下で当時のボルカーFRB議長のもと厳しい金融引き締めが実施されていた時期。2度目はクリントン政権下の90年代半ばから2000年代初頭までで、特に後半の時期はIT株ブームなどを背景に米国への資金流入が進み、ドル高が加速した。

そして、現行の「オバマラリー」とでも呼ぶべきドル高局面は、リーマンショックに対して米国が即座に量的緩和で対応し、主要国の中で一番早く立ち直り、金融政策の正常化に向かっていることから、生じている。過去2回のドルラリーがいずれも5年程度続いたことを考えると、まだ先がありそうだ。

前述した通り、日米金融政策のダイバージェンスが早晩解消される様子はない。欧州中央銀行(ECB)の緩和姿勢が続くユーロについても、今回のドルラリーが終焉を迎えるころまでには、対ドルでパリティ(1ユーロ=1ドル)を割れて、82―85セント台を目指す可能性があるとみている。

<リスクは日米経済への高すぎる市場の期待値>

ただし、ダイバージェンスが想定外の事態で大きく解消に向かえば、むろんドル円やユーロドルなどの為替レート予想は変更を余儀なくされよう。

私自身はその可能性は非常に低いとみているが、大きなリスクは、27―28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で12月の利上げすら難しいとの印象を市場に与えてしまうことだ。それは、FRBが米国経済だけでなく世界経済の先行きについても自信を失っているとの印象を与えかねない。素直に考えれば、ドル円に下方圧力を加えることになるだろう。

よもやFOMCメンバーがそのような判断に動くとは思わないが、気になるのは、米国経済の実力に対する市場の期待値が高いことだ。そもそも米国の景気回復は成熟期に入っており、企業収益や雇用統計がこれまでのように上向いていくと想定するのは無理がある。

市場が過大な期待を抱いていれば、その分、主要指標が悪い方向へ転んだときに、動揺も大きく、現実問題としてFRBの政策運営にも影響を与えかねない。米国経済の潜在成長率はすでに2%を割れているとの見方もあり、市場もその現実に慣れる必要がある。

同じことは、日本にも当然言える。鉱工業生産など主要指標の悪化を受けて7―9月期の国内総生産(GDP)が2期連続のマイナス成長となる可能性が高まるなか、追加緩和の必要論が巻き起こっているようだが、そもそも日本の潜在成長率は1%にも満たないと推計されている。また、消費者物価(CPI)にしても、確かにコアCPI(除く生鮮食品)は下がっているが、日銀が新たに試算している独自指標(除く生鮮食品・エネルギー)でみれば1%台に上昇している。

日銀の肩を持つわけではないが、日銀が追加緩和は現時点で不要とのスタンスをとっても驚くには値しない。また、個人的には、現行の量的緩和の効果に疑いを持っており、その意味でも追加緩和は不要だと考える。現実的には、景気刺激策が行われるとすれば、財政出動となるのではないか。それも円安を促す要因となろう。

ただ念のために言い添えれば、私は何もドル高・円安基調がずっと続くと言っているわけではない。むしろ、125―130円レンジへの移行後、ドル円上昇にさらに拍車がかかるとは現時点では考えていない。まずFRBの利上げは、米国内外の不安定な経済情勢に鑑みれば、かなり緩やかなペースになると予想されるからだ。

また、ドル円と相関性が高い米10年債利回りが、FRBの利上げ後に上昇するとは限らない。市場が利上げをむしろ「インフレの低下と不況が近いサイン」と捉えて、長期金利に低下圧力がかかってくる可能性もある。さらに、私が話を聞く限りでは、日本の政財界には、1ドル=120円近辺の現行レートについて「心地良い水準」と捉えている向きが多いように思われる。

つまり、125―130円レンジ移行後は、円高基調へ転換する可能性について今以上に注意を払ったほうが良い。しかし、繰り返すが、その転換点が今すぐ訪れるわけではない。

(聞き手:麻生祐司)

*本稿は、マーク・チャンドラー氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*マーク・チャンドラー氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニアバイスプレジデント兼通貨ストラテジー部門グローバル・ヘッド。HSBCバンクUSAとメロンバンクでチーフ通貨ストラテジストを務めたのち、2005年10月より現職。著書に「Making Sense of the Dollar」

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

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