December 25, 2018 / 2:20 AM / 7 months ago

オピニオン:平成時代に変貌した日本企業、「株10万円」への布石=武者陵司氏

[東京 25日] - 日本が戦後に築き、高成長をもたらしたビジネスモデルは、平成になって機能不全に陥った。経済も社会も長い低迷期に入ったが、実はその30年間で日本企業は事業構造を転換し、史上空前の利益を生み出すことに成功したと、武者リサーチの武者陵司代表は指摘する。新たな価値創造の仕組みはまもなく始まる次の時代に実を結び、日経平均は10万円が視野に入ると予想する。

同氏の見解は以下の通り。

平成という時代は、単に昭和から元号が変わっただけではない。「大繁栄」から「大挫折」へ、経済も社会も著しく変貌した。

それを端的に表しているのは株式市場で、日経平均は東京証券取引所が再開した1949年から89年までの40年間で、約400倍上昇した。年率16%の高成長だ。一方、平成時代の30年間は、横ばい、もしくは若干のマイナスで終わろうとしている。

たしかに、平成は表面的には困難で停滞した時代だった。しかし、次代に繁栄するための土台を形作る期間でもあった。

米国で実現した様々な技術を有利に導入し、安いコストで生産して世界的なシェアを高めていく──。昭和の飛躍を支えた日本企業の価値創造メカニズムは、冷戦の崩壊とともに終わりを迎えた。

貿易摩擦で米国から厳しい要求を突きつけられると同時に、急速な円高で価格優位性が失われ、日本が世界で築き上げた地位は韓国、台湾、中国に奪われた。昭和の時代に成功したビジネスモデルは、平成に入って完全に機能しなくなり、それが経済、企業収益、株価の停滞につながった。

<価格競争からの脱却>

ところが、平成が終わる今、日本企業は史上空前の利益を生み出している。

法人企業統計によると、金融と保険を除く全産業の売上高経常利益率は4─6月期に7.7%、製造業に限れば過去最高の10.5%を記録。7─9月期は台風や地震の影響で低下したものの、日本企業はこの30年間で価格競争から脱し、技術や品質で優位に立つビジネスモデルの構築に成功した。

例えば、超高速で大容量の情報をやりとりできる次世代通信規格「5G」端末には、村田製作所 (6981.T)やTDK (6762.T)の高周波デバイスが欠かせない。ファナック (6954.T)の産業用ロボットも必須だ。

最終製品では日本企業の存在が目立たないが、それを支える企業向け「BtoB」の世界では圧倒的な地位を確立した。中国企業も韓国企業も組み立てメーカーにすぎず、日本が供給する部品や半導体製造装置、素材といった重要な技術がなければ何も作れない状態に陥っている。

自動車産業も省エネ技術はことごとく日本発で、欧米メーカーは活力を失っている。仏ルノー (RENA.PA)と日産自動車 (7201.T)を巡る騒動も、もともとは20年前に比べて日産が圧倒的に強くなってしまったという不均衡が引き起こしたものだ。

日本企業はこの新しい価値創造メカニズムを武器に、グローバル化を加速させている。経常収支に占める1次所得収支の黒字規模の大きさからも明らかなように、日本では多国籍企業による収益が大きく増加している。

<年10%の株価上昇も>

新たに築いたビジネスモデルがどういうものか、まだ誰もきちんと定式化していないが、健全で持続性がある仕組みであることは間違いない。まもなく迎える次の時代に、さらに大きく開花するだろう。

テレビやパソコン、スマホは個人向け製品であり、需要は人口に制約される。一方、これから本格的に立ち上がるIoT(モノのインターネット)は、いたるところに端末が配置される。しかも、1台1台求められる機能が異なるため、高度なすり合わせが必要になる。これは日本企業が最も得意とするところであり、優位性はさらに高まる可能性がある。

これまで世界的な存在感が薄かった製薬も、再生医療などの次世代分野では競争力を発揮する可能性がある。2014年の薬事法改正で再生医療薬の認可プロセスが速まり、日本はベンチャー企業に有利な環境を整えている。

強化された企業の稼ぐ力を背景に、日本の株価は今後、年率10%の上昇があり得る。企業利益が年4─5%のペースで増え、現在割安な株価のバリュエーションが年4─5%のペースで上昇を続ければ、日経平均は2033年から34年にかけて10万円が見えてくるだろう。

東証の株式時価総額は3000兆円近くに膨らみ、税収も増えるため、今の政府債務や年金の問題は解消されるとみている。

*本稿は、ロイター特集「平成を振り返る」に掲載されたものです。武者陵司氏にインタビューし、同氏の個人的見解に基づき書かれています。

(聞き手:久保信博)

武者陵司 武者リサーチ代表(写真は筆者提供)
 12月25日、武者リサーチの武者陵司代表は、まもなく終わる平成の30年間で日本企業は事業構造を転換し、史上空前の利益を生み出すことに成功したと指摘。写真は初日の出に「ダイヤモンド富士」を目にし、万歳をする男性。2010年1月1日に富士河口湖町の竜ヶ岳山頂で撮影(2018年 ロイター/Yuriko Nakao)

*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。

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