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オピニオン:株高円安加速へ、「秋晴れのシグナル」点灯=武者陵司氏
2017年9月25日 / 00:09 / 3ヶ月前

オピニオン:株高円安加速へ、「秋晴れのシグナル」点灯=武者陵司氏

[東京 25日] - 世界的なリスクオン機運の回復を背景に、日本株市場にはいくつものポジティブなシグナルが点灯しており、今後1カ月余りで10%程度の上昇が期待できる状況にあると、武者リサーチの武者陵司代表は述べる。

具体的には、10月下旬に向けて、東証株価指数(TOPIX)で1838、日経平均株価で2万2165円までの上昇が、テクニカル上は視野に入っていると分析する。

北朝鮮情勢については、軍事的挑発の日常化で市場は耐性を高めており、日本に物理的被害が及んだり、米朝軍事衝突に発展したりしない限り、相場の上昇トレンドが根底から崩れることはないと読む。年末のドル円レート見通しは115円、北朝鮮リスクの後退も手伝えば120円もあり得ると予想する。

同氏の見解は以下の通り。

<空売りピークアウトが示唆する株高円安>

北朝鮮の軍事的挑発が日常化するなかで、市場の耐性も高まり、日本株の大相場に向けた素地が整いつつあるように思える。

そもそもテクニカル上は非常に良いシグナルが灯っている。東証空売り比率を見ると、9月7日近辺に43%の高水準をつけた後に急低下しており、ピークアウトした可能性が濃厚だ。

過去の空売り比率ピークアウトは、株式市場の転換点とほぼ同期している。そして株価の底値と直後高値との関係を見ると、平均して33営業日後に約15%の値上がりとなっている。それを今回に当てはめれば、10月下旬にTOPIXで1838、日経平均では2万2165円まで、上昇が見込めるということになる(9月22日の終値との比較では10%程度の上昇)。

また、実は東証空売り比率のピークアウトは、円高のピークアウトともほぼ時期が一致している。円高局面で外国人投資家が過去の相関(円高・日本株安)に従って日本株を売ってきたわけだが、その行動パターンの転換が期待できる。

ちなみに、外国人投資家の日本株売りを招いた今年の円高は、ミステリアスな現象だった。というのも、低金利の円は新興国投資の調達通貨として外国人投資家によって大幅に売られていたからだ。

こうした円ショートポジションに向ってドルを売ってきたのは、日本の個人投資家、機関投資家だろう。背景には、北朝鮮情勢やトランプ米政権の先行きを巡る悲観的論調が日本ではことさら強く、それが対外投資の圧縮を招いていたと推測される。

しかし、日本の投資家の目も覚めてきたのではないか。ずっと下火になっていた外国株式投資も最近は毎月1兆円の規模で行われている。年初来の円高・日本株安の火種が日本人の行き過ぎた悲観にあったとすると、それは急速に是正される局面にあるように思われる。ドル円も、年末までには115円を超え、大幅にドル高・円安が進む可能性が高い。北朝鮮絡みの地政学リスクが後退すれば、120円超えも十分あり得るだろう。

武者リサーチの武者陵司代表は株式市場の動向について、これまで米国経済への警戒感と円高によって上値を抑えられていた株価は、米株高と円安の後押しを受けて上昇に転じる局面を迎えたと指摘する。また為替について、ドル=115円を超える大幅な円安の可能性も視野に入ってきたと語った。

<トランプ政策のポジティブサプライズ>

もう1つの好材料は、トランプ政権の政策進化が見えてきたことだ。このことが米景気と米株高を下支えし、日本株に対する大きな追い風となろう。

これまでトランプ政権の国内政策運営は、どちらかと言えば与党・共和党任せで、いたずらに時間が浪費されてきた。しかし、9月初旬に民主党案を事実上丸のみし、連邦政府債務上限の3カ月適用停止など財政協議で合意したことは、目的のためならば手段を選ばない「ディールメーカー」としてのトランプ大統領の面目躍如だったと言えよう。

恐らく、内政において「トランプらしさ」が失われていた背景には、共和党が一枚岩ではなかったことに加えて、スティーブ・バノン氏(元首席戦略官兼大統領上級顧問)のような、イデオロギー色の強い人物が政権内で幅を利かせていたことも影響していたのだろう。しかし、バノン氏はホワイトハウスを去り、プラグマティストであるトランプ大統領の本領が発揮される素地が整った。

こう考えると、「雨降って地固まる」がごとく、1月の大統領就任以来の政治停滞も無駄ではなかったのかもしれない。確かに、昨年11月の大統領選後に始まったトランプラリー(株高・金利高・ドル高)の果実の多くは株高を除き失われてしまったが、市場の期待値がリセットされたことで、ここから先は政策運営上の小さな進展でもポジティブサプライズとなる可能性が高い。

そして、実際に経済政策面では進展がありそうだ。トランプ大統領が、民主党とも組む選択肢を示したことで、共和党の尻に火がつき、法人減税などを柱とする税制改革案がまもなく公表される予定だ。

ちなみに、トランプ大統領のユニークな点は、共和党の大統領でありながら、民主党的な大きな政府志向(弱者救済志向)が強いことだ。もしかすると、個人所得税の分野でも、共和党保守派の反対を押し切って、減税を中間層以下に限り、富裕層に対しては実質的な増税を行うといった税制改革もあり得るかもしれない。所得の再配分は、中間層の底上げを通じて、米経済の潜在成長力にプラスに作用し得る。

<米景気腰折れ懸念と米株割高説の間違い>

ただ、こうしたポジティブな見通しに対して、1つ大きなリスクを挙げれば、自己実現的な悲観論であろう。繰り返しになるが、悲観と不安のスパイラルで対外投資を減らし、円高・株安を招いた日本の投資家の行動はまさにその際たるものだ。

今後については、米経済の先行きに対する自己実現的な悲観論の跋扈(ばっこ)が懸念される。2009年7月に始まった米国の景気拡大局面が今年7月で9年目に突入し、戦後最長の10年も視野に入ってきたことから、高所恐怖症に陥ったのか、「そろそろ息切れ」との予想が増えている。しかし、そうした悲観論にデータ上の根拠はなく、足元のリセッション懸念は一言で言えば杞憂だと思う。

歴史的に見て、戦後米国のリセッションは全てインフレ懸念から過度の金融引き締めが行われ、それが逆イールドカーブ(長短金利逆転)を招いたことで引き起こされてきた。

しかし、米国のインフレは現在、1%台の低水準で抑えられており、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを速める理由はない。米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの政策金利見通し分布図が示す利上げペースは今年あと1回、来年3回であり、この程度の緩やかな引き締めならば、景気の腰折れ懸念は無用だ。

また、いまやFRBは短期金利誘導だけでなく、バランスシート縮小ペースの制御によって長期金利にも大きな影響を及ぼすことができる。この条件下で近い将来に逆イールドカーブになる可能性は考えにくい。

なお、米国株については、株価収益率(PER)が過去平均15.5倍に対して現在21倍となっていることから、バリュエーションの割高さが悲観論の根拠となっている。だが、1970年以降、米国益回り(PERの逆数)は総じて長期金利と順相関で推移してきた(PERとは逆相関)。つまり、現在の低金利下では適正なPER水準は相当高くても正当化できると言える。

日本市場に話を戻せば、米国の経済と株式バリュエーションに対する自信が戻ることで、円安への流れは不可避となり、主要国株式に比べた日本株式の「極端な割負け」を投資家は放置できなくなるはずだ。10月の解散総選挙後に安倍政権の求心力が再び高まれば、弱気相場の原因の1つだった日本政治に対する不安も後退し、秋晴れの大相場が始まる可能性がある。

*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。

*本稿は、武者陵司氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

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