November 1, 2018 / 1:43 AM / 18 days ago

オピニオン:ねじれ議会ならトランプ保護主義に拍車=安井明彦氏

[東京 1日] - 11月6日に迫った米中間選挙は、野党・民主党が下院で過半数を奪還し、「ねじれ議会」になるというのが市場の見立てだ。米政府の財政運営が混乱する一方、通商と外交で点数を取り返そうとするトランプ大統領が対外的な強硬姿勢を強め、米国と世界双方の経済にとってリスクが高まる、とみずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は分析する。

トランプ政権が通商協議を通じて、日本をはじめとした同盟国に「中国包囲網」への参加を促してくる事態も考えられると指摘する。

同氏の見解は以下の通り。

共和党が上院で多数を維持し、民主党が下院で過半数を取るのがメインシナリオ。しかし、10月になって情勢が若干変わり、共和党が巻き返している。両院とも共和党が過半数を維持するというサブシナリオもあるとみている。

いずれの場合も、トランプ大統領の「米国第一主義」は変わらない。中間選挙が終わるということは、次の大統領選が始まるということだ。大統領の任期後半の2年間、トランプ氏はその方針を改めて強く押し出していくだろう。

ただし民主党が下院を制した場合の方が、トランプ保護主義が一段と強まりそうだ。追加減税など、議会で法案を通す必要のある政策が実施しづらくなる。強い米国の復活を支える柱の1つである景気浮揚策が困難になることから、保護主義や移民の受け入れ反対といった、もう1つの柱に傾斜していくことになるだろう。

民主党の通商政策は、共和党よりも保護主義の色合いが強いため、トランプ氏の方針と共鳴し合う恐れもある。

また、「ねじれ議会」は米国の財政運営の見通しを不透明にする。来年の夏ごろには債務上限を引き上げなくてはならない時期が来る。9月末までには次年度予算を作らなくてはならない。これに手間取れば、デフォルト(債務不履行)リスクが意識されてくる。

通商政策の保護主義化に、財政運営が混乱する恐れも加わり、民主党が下院で勝利した場合の方が、米経済、世界経済へのリスクが大きくなりそうだ。一方、共和党が上下両院を制した場合は、追加減税の実施に向けて進んでいくだろう。

<米中関係はさらに緊張>

米国第一主義に変化がない中で、中間選挙後も中国とは厳しい関係が続くとみている。力を強める中国とどう向き合うべきかという問題意識は、トランプ大統領に限らず、米国で広く共有されている。トランプ大統領流のディールで、短期的に緊張が緩む可能性は否定しないが、方向性としては、2020年の大統領選に向け、さらに緊張が高まるとみている。

日本との貿易協議も、米国が自由貿易協定(FTA)につながる交渉をしたがっているのは明らか。日本は厳しい事態に直面するリスクに備えておくべきだ。

米国がメキシコ、カナダと結んだ新たな協定が日米交渉に反映されたり、これから始まる米国と欧州連合(EU)の交渉と、日米交渉が比較される可能性がある。日本は米国との2国間協議だけでなく、他の交渉がどう進んだのか、実際にどう運用されているのかを注意深く見ておく必要がある。

米国はカナダとメキシコとの新たなUSMCA協定の中に、中国との自由貿易協定を結びにくくする条項を盛り込んだ。つまり日本が米国と貿易交渉を進めていく中で、米中摩擦に巻き込まれていくリスクがあるということだ。米国の非難の矛先が中国に集中する中で、日本や他の同盟国も一緒に中国と対峙しようという流れになりつつある。

日本はどこまで同調すべきなのか。日本企業は米国を向くべきなのか、中国を向くべきなのか──。これは次の大統領選に至る2年間の大きな論点になるかもしれない。日本は、狭い道になるかもしれないが、米中を結びつけるような役割を目指していくしかない。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。安井明彦氏にインタビューし、同氏の個人的見解に基づき書かれています。

U.S. President Donald Trump acknowledges supporters as he holds a campaign rally in Estero, Florida, U.S., October 31, 2018. REUTERS/Carlos Barria
安井明彦 みずほ総合研究所 欧米調査部長(写真は筆者提供)

*安井明彦氏は、みずほ総合研究所・欧米調査部長。1991年東京大学法学部卒業後、富士総合研究所(当時)入社。在米日本大使館専門調査員、みずほ総研ニューヨーク事務所長などを経て、2014年より現職。主な著書に「アメリカ 選択肢なき選択」などがある。

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聞き手:久保信博、新倉由久

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