November 7, 2018 / 5:36 AM / 7 days ago

オピニオン:中間選挙「ねじれ議会」で日米関係は先行き不透明に=上智大・前嶋教授

[東京 7日] - 11月6日の米中間選挙で上下両院が「ねじれ」になったことで、日米関係の先行きは不透明さが増した、と上智大学の前嶋和弘教授は分析する。トランプ大統領は来年早々に始まる日本との通商交渉に厳しく臨み、経済と安全保障を絡めて包括的な取引(ディール)を迫ってくるだろうと予測する。

11月7日、上智大学の前嶋和弘教授は、日本にとって厄介なのは、信頼を置くべきトランプ大統領が常に信用できる相手ではないことだと指摘。写真は国連総会の際に会談したトランプ米大統領と日本の安倍晋三首相。9月に米ニューヨークで撮影(2018年 ロイター/Carlos Barria)

同教授の見解は以下の通り。

日本にとって、年明けから始まる日米物品貿易協定(TAG)の交渉は厳しいものになりそうだ。下院を野党・民主党が制し、議会の承認が必要な内政の舵取りが難しくなる中で、トランプ大統領が成果を出せるのは外交となる。北米自由貿易協定(NAFTA)が形を変え、米韓自由貿易協定(FTA)も改定され、残るは日本。トランプ政権はねじり鉢巻をして厳しく臨んでくることが予想される。

トランプ大統領の基本姿勢は、貿易・経済と安全保障のディールだ。かねてから、日米同盟の負担が公平ではないと主張してきた。日本はこの批判をかわすため、米国から軍事装備品を買い続けていくことになるだろう。さらに、貿易交渉で日本の対米自動車輸出が議題に上ってきたら、これも装備品を買うことでかわす。おそらくトランプ大統領は、こうした包括的なディールを考えており、日本は渋々応じていくことになるのではないだろうか。

日米の通商協定に為替条項が盛り込まれる可能性は低いとみているが、相手がトランプ大統領なので否定はできない。米国はさまざまな形で攻撃を仕掛け、日本はそれに1つ1つ対応を迫られる。「ねじれ議会」となった中間選挙の結果を受け、日米関係は先行きの不透明さが増したようにみえる。

通商交渉の行く着く先は、米国が望んできたFTAになるだろう。日本側は麻生太郎副首相兼財務相とペンス米副大統領の間に「日米経済対話」を設けるなどし、FTAの交渉に進むことを遅らせる戦略を取ってきた。あわよくばトランプ大統領の任期が終わり、その後に米国に環太平洋連携協定(TPP)に戻ってもらうというのが日本側のシナリオで、その化かし合いは今後も続くとみている。

<信頼すべき大統領が信用できない>

2020年の大統領選挙に向け、トランプ政権は中国に対してますます強硬になるだろう。貿易問題では関税引き上げが米国の景気に水を差す恐れがあり、ところどころで妥協するかもしれないが、知的所有権を含めた安全保障の面では厳しく対峙し、有権者へのアピールポイントとするのではないだろうか。

安倍晋三政権はこのタイミングで中国と関係改善を図ろうとしているが、日本が米国を重視するという基本政策は変わらない。そもそも、日中関係がどこまで改善するか不透明だ。安倍首相は10月末の習近平国家主席との会談後、すぐにインドのモディ首相と会った。日中首脳会談は、安倍首相が強調する多国間外交の1つだったようにみえる。米国内でも、日中関係が根本的な改善に進むと見る向きは多くない。

ただし、日本にとって厄介なのは、信頼を置くべきトランプ大統領が常に信用できる相手ではないことだ。不確実性がトランプ氏の一番の売りだ。今後も日本が米国との同盟を基軸としていくことは間違いないが、いつ足元をすくわれるかわからないという点には注意が必要だ。

<北朝鮮巡る日米の温度差>

北朝鮮問題を巡っては、日米の間で温度差がある。トランプ大統領にとっては、6月12日の米朝首脳会談でおおよその方向を決めただけで、中間選挙前の成果としては十分だった。日本の周辺に向けてミサイルが発射されなくなったし、米国に長距離弾道ミサイル(ICBM)が飛んでくる可能性も低下した。

しかし、日本にとっては何も状況は変わっていない。

今後、トランプ政権が北朝鮮問題で成果を出そうとする過程で、日本は非核化に向けた費用と経済支援を求められる可能性がある。日本はそうしたマイナスの負担を、プラスの効果に変えていく必要がある。日本人拉致問題に切り込んでいかなくてはらないし、経済支援をテコに北朝鮮に進出し、ビジネスチャンスに変えていかなくてはならない。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。前嶋和弘氏にインタビューし、同氏の個人的見解に基づき書かれています。

(聞き手:久保信博)

前嶋和弘・上智大学教授(写真は本人提供)

*前嶋和弘氏は、上智大学教授。専門は現代アメリカ政治外交。上智大学外国語学部英語学科卒、ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了。主な著作に『オバマ後のアメリカ政治』(共編著、東信堂、2014年)、『Internet Election Campaigns in the United States, Japan, South Korea, and Taiwan (co-edited, Palgrave, 2017)』などがある。

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