May 7, 2014 / 11:33 AM / 6 years ago

焦点:大阪カジノ構想に影落とす地元政界の混乱とギャンブル依存症

[大阪市 7日 ロイター] - 大阪再生への経済効果に期待が集まるカジノ構想には、クリアすべきハードルも少なくない。IR推進派が描くバラ色のシナリオの半面、地元にはカジノの存在が助長しかねないギャンブル依存症への懸念が根強くある。地元議会での不協和音が誘致実現への足かせとなる可能性も消えていない。

 5月7日、大阪再生への経済効果に期待が集まるカジノ構想には、クリアすべきハードルも少なくない。写真は大阪の道頓堀で2009年8月撮影(2014年 ロイター/Issei Kato)

<実態みえず>

「大阪にカジノはいりまへん」。4月6日、大阪市内で市民団が開いたカジノ誘致の反対集会で、参加者はこう書いたチラシを手に、学識経験者らの講演に耳を傾けた。

集会の運営には、多重債務問題を生み出すギャンブル依存症などの問題に取り組む「依存症問題対策全国会議」も参画した。事務局長を務める吉田哲也弁護士(兵庫県弁護士会)は「発症させないということが病気の対策であるべきなのに、(ギャンブル)依存症を発生させておいてから、(事業者が)入店を禁止するとか、そこでの利益を治療に使うという発想自体が道徳的に間違っている」と話す。

90年代以降、パチンコに熱中した大人が子どもを駐車場の車内に放置し、熱中症で死なせてしまうといった事件が全国各地で表面化し、次第にギャンブル依存症が社会問題化することとなった。カジノ反対派の懸念の矛先は、治安悪化に加え、この依存症の問題にも向かっている。だが、パチンコ産業や公営ギャンブルが各地に広がる日本国内において、ギャンブル依存症の実態について、統計データが不十分な状況にあるのも事実だ。

大阪府の松井一郎知事は「やるべきことはこれまでもやってきている。これからも行政が対応していくのは当たり前のこと。IRができるから、できないからという話ではない」と行政側の立場を釈明する。すでに相談窓口を設けるなど必要な対策を講じているとの考えだ。

また、誘致に積極的な姿勢を示す関西経済同友会は「カジノ依存症という問題があるならば、その問題をミニマムにする努力をするべき」(斉藤行巨・常任幹事事務局長)と、海外の事例を参考に対策を講じることが有益だとの認識を示している。

大阪府市が20─60代の府民合計2000人に対しインターネットを通じ3月に実施したアンケート調査によると、日本でのIR整備について「賛成」と答えた割合は18%、「条件付きで賛成」は38%、「反対」が21%、「わからない」との回答が23%となっている。肯定派が過半数を占めているとはいえ、条件付きで容認とする声が最多となった。カジノの持つリスクとその対策を見極めたいとする住民の総意が透けて見えると言えそうだ。

IR推進派からも「データがなければ病気がないと思ったら大間違い。見て見ぬふりをするのが一番いけない」(ギャンブル社会学を専門とする大阪商業大学の谷岡一郎学長)と、研究データの蓄積を求める声があがっている。

<泉北鉄道の影>

地元議会のも不透明要因が横たわる。IR推進法案が成立した場合、大阪府市は誘致活動を加速させるため、補正予算を組む方向だ。ただ、足元では昨年末に起こった府議会の混乱の余韻が漂っている。

府南部を走る泉北高速鉄道。財政悪化に苦しむ大阪府は昨年、筆頭株主として保有する同鉄道運営会社株の売却に動き、入札の結果、米投資会社ローンスターが優先交渉権を得た。しかし入札にあたり同社が提案した他社線への乗り継ぎ運賃の割引幅が、次点となった南海電気鉄道(9044.T)の提案内容に比べ小さく設定されていたことが後に判明。沿線住民の反発を招いた。

こうした流れを受け、昨年12月の府議会の採決の場では、大阪維新の会(当時、今年5月1日にみんなの党府民会議と統一会派結成)の一部議員が造反。結果、府議会での維新の会の議員数は過半数を割ることとなり、自民・公明など他党が対維新の姿勢をさらに強めることとなった。さらに今年4月に入り自民党大阪府連と公明党大阪府本部は、来春の統一地方選挙に向け協力に乗り出す方針を決めている。

<公明の動向>

これまで自民党大阪府連はカジノ誘致を巡り態度を明確にしていなかったが、関係者によると、条件付きでの賛成との立場を近く内部で決める構えという。

今国会でIR推進法案を提出したのは自民・維新・生活の党の3党。カジノ解禁において国政レベルでは自民と維新は足並みをそろえている。IR議連は超党派の議員で構成されていることもあり「数の論理でいけばこのまま成立する」(松井府知事)とみる向きがある一方で、公明党の支持母体の創価学会に慎重論があるとされている。

同党は大阪府議会におけて維新に次ぐ議席数を占める第2会派だ。「中小企業の経営者以外に、女性や文教関係者の支持が多い」(府議関係者)。自民党府連と公明党府本部の関係は選挙協定にとどまっており、政策面まで踏み込んだものではないものの、統一地方選の結果次第では、IR誘致を巡る流れが変わる可能性もはらむ。

大阪維新の会側もIRに関して決して楽観視をしているわけではない。府市によるIR誘致に向けた準備活動は「松井─橋下体制だからこそ可能となった話」(幹部)。首長が変われば元の木阿弥となる恐れある。もっとも、先の市長選で大阪都構想の議論を巡る姿勢について「人の道に反する」(橋下市長)と批判した公明党と維新の間には、すき間風が吹いた状態にある。

カジノを解禁への動きに地元議会は一枚岩となれるのか。関係者の声には楽観論と悲観論が混じりあう。「2020年にはぜひ一部オープンをしたい」。府知事が訴えるオリンピック開催時期のIR開業を果たすには、地元住民の十分な理解と政財界の協調がカギを握る。

長田善行 取材協力:ネイサン・レイン、江本恵美

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