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2022年の視点:市場揺さぶるビッグ3は誰か、不意打ちに要警戒=尾河眞樹氏

[東京 29日] - 2022年の金融市場はどのような展開になるのだろうか。そのカギを握る注目人物は誰か。今年も、市場の動きに大きな影響を与えると思われる「ビッグ3」を選び、来年の相場を展望してみたい。

 12月29日、2022年の金融市場はどのような展開になるのだろうか。そのカギを握る注目人物は誰か。尾河眞樹氏の視点。写真は米首都ワシントンで7月15日撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

<岸田首相:市場との間合いに課題、成長戦略で果実を>

注目したい人物の第3位は、岸田文雄第101代内閣総理大臣である。岸田内閣の支持率を見る限り、滑り出しは概ね順調なようだ。NHKによる世論調査(12月13日時点)では、支持率は50%、不支持率は26%。産経新聞とFNNの世論調査(12月20日時点)は、支持率66.4%、不支持率26.2%との結果が得られた。同調査の内訳をみると、政府の新型コロナウィルス対策に対する評価が67.7%、オミクロン対策による外国人の原則入国禁止などの措置への評価が84.3%と非常に高く、これを踏まえると、素早い水際対策と、日本の感染者数が抑制されていることなどが高く評価されているようだ。

また、岸田首相は「聞く力」を旨とし、10万円の給付金についてもそうだったように、状況次第で方針を変えることもいとわない。こうした姿勢は、「迷走」との批判もある一方で、「柔軟」なところが国民に評価されているとみられる。そのことは、上述した世論調査で「岸田内閣を支持する」と回答した理由として、「実行力に期待できる(25.9%)」「人柄が信頼できる(15.2%)」などが比較的高めに出ていることなどに現れていると言えよう。

一方で、金融市場の見方はやや異なっており、岸田政権の掲げる「新しい資本主義」については「分かりづらい」と、厳しい評価も多い。特に自民党総裁選の際に浮上した「金融所得課税」の強化や、企業の自社株買いに対する「ガイドライン」発言などは、日本株の急落につながった。「成長と分配の好循環」というが、「成長戦略」に対して「分配政策」のほうがどうしても目立ってしまい、外国人投資家の興味も薄らいでいるのではないだろうか。実際、日経平均株価は自民党総裁選前の3万円台を回復できていない。

ただ、政策をよく見ると、決して成長戦略を軽視しているわけではないことが分かる。官民連携の10兆円ファンドや、人的資本への投資を抜本的に強化するための4000億円規模の施策パッケージなど、長期的な成長につながる政策も見られる。また、DXを推進し、これに向けた規制改革、行政改革も推進するとしている。デジタル田園都市構想も良いが、まずはデジタル庁主導で政府のDX推進を急ぐ必要があろう。これが一気に進み、規制改革も含めて行政の縦割りに横串を刺すことができれば、生産性の向上につながるうえ、低所得者層への分配政策も、必要な先にピンポイントで行えるようになるはずだ。2022年夏には参院選が行われる。国民に分かりやすい形で成長戦略をさらに全面に押し出し、日本株の上昇につなげることができるかが注目される。

<バイデン大統領:内憂外患、強硬外交のリスク>

注目したい人物の第2位は、ジョー・バイデン第46代米国大統領である。バイデン大統領の支持率が低迷している。YouGov Americaの12月18日時点の世論調査によると、「支持」は41.9%、「不支持」が51.2%と、8月下旬以降、不支持率が支持率を上回る状況が続いており、その差は拡大しつつある。

中でも「強く不支持」との回答は全体の37%と高く、22年に中間選挙を控えるバイデン大統領にとって厳しい情勢と言える。また、同調査会社が12月12─14日に1500人を対象に行った世論調査によれば、「米国が直面する問題のうち、雇用とインフレのどちらが重要か」の問いに対し、雇用が8%、インフレが43%と、インフレに対する懸念が雇用の5倍となっていることなどを踏まえれば、おそらく、22年のバイデン政権の政策はインフレ抑制に傾く。

米連邦準備理事会(FRB)は既に緩和からの出口戦略に向かっているが、このところFRBが急速にタカ派に傾斜しているのも、こうした国民の声が一部にはあると思われる。1兆7500億ドル規模の気候変動・社会保障関連歳出法案「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」については、マンチン上院議員の反対で年内の成立が困難になっている。法案成立に向けて規模が縮小されるようであれば、このことも来年のインフレリスクを緩和することになるとみている。

11月の中間選挙で民主党が敗北し、上院の過半数を共和党が占めることになれば、バイデン政権はレームダック化し、あらゆる政策が前に進みにくくなる。このことは、米国の株式市場にとってリスク要因と言えよう。また、これを避けようと、バイデン大統領が支持率押し上げに動くのも、リスクとなり得る。国内政策がうまく行かない首脳は、諸外国に批判の矛先を向ける傾向があるからだ。既に北京五輪は「外交的ボイコット」となり、英国、豪州、カナダもこれに追随した。米中摩擦が再び激化するようであれば、やはり金融市場にとってマイナスとなる。

<パウエル議長:織り込み不十分、軟着陸は可能か>

第1位は、何と言ってもジェローム・パウエルFRB議長だ。FRBは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング(量的緩和の縮小)のペースを速めることを決めた。同時に発表されたFOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)は、9月の水準から大幅に引き上げられ、中央値では22年に3回の利上げが予想されていた。

いよいよ利上げに踏み切る年であり、自ずとパウエル議長の発言には注目が集まるが、問題はFRBの利上げを市場参加者が十分に織り込んでいないように見えることだ。足元、FF金利先物からみた市場参加者による政策金利予想は、12月のFOMC直前の水準に比べて、FOMCメンバーが全体的にタカ派化したにもかかわらず、むしろ小幅に低下している。FRBのコミュニケーションによって徐々に利上げが織り込まれていくなかで、米長期金利もじわり上昇し、ドル円も緩やかに上昇すると予想しているが、米国のインフレ動向次第では、FOMCメンバーがさらにタカ派に傾斜する可能性もある。市場では3月の利上げが既に約57%織り込まれているが、実際に3月に利上げを開始する、あるいは、万一初回の利上げが50Bps(ベーシスポイント)などになった場合には、株式市場にとってはネガティブサプライズとなるリスクがある。

振り返れば2013年5月に、FRBの当時バーナンキ議長が、突如テーパリングの開始を示唆したことで、市場心理が大きく悪化したことがあった(バーナンキショック)。将来の金融引き締めを嫌気して、米金利は大幅に上昇した一方、米株価は急落。ドル円もリスクオフの円高となり、4週連続で陰線が続いて、結局は約10円下落した。その後マーケットも落ち着き、ドル円は再び上昇トレンドに入った。

ただ、これまでのところパウエル議長は市場との対話に成功しており、22年もおそらく、米金融政策によって極端に相場が荒れる可能性は低いとみている。また、米実質金利が現状までマイナス1%と、FRBが利上げのペースを速めたとしても、金融環境は依然として緩和的であることを踏まえれば、リスクオフによる株安や円高があったとしても、一時的なものにとどまる公算だ。

(編集 橋本浩)

2022年の金融市場は何が焦点となり、どう展開するのか。ロイター編集部では、12月29日からコラム特集「2022年の視点」を配信します。金融機関で活躍する著名な執筆陣が来年の相場動向や経済情勢などを展望します。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルグループの執行役員兼金融市場調査部長。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。著書に「本当にわかる為替相場」「為替がわかればビジネスが変わる」「富裕層に学ぶ外貨投資術」などがある。

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