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展望2022:「小動きの円債」は変わらず、焦点は日銀が正常化に進むか

[東京 3日 ロイター] - 2022年の円債市場は、海外に比べて緩やかに動くという見通しに変化はない。FRB(米連邦準備理事会)が利上げできるかは不透明で、海外金利も変動余地を残すが、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策がある限り円債のボラティリティーは低いとみられている。市場の関心は、2023年4月に任期末を控えた黒田東彦日銀総裁が正常化への「道筋」を付けるかに集まり、先取りする動きが出る可能性もある。

  2022年の円債市場は、海外に比べて緩やかに動くという見通しに変化はない。写真はミラーに写った日銀。2012年11月、都内で撮影(2022年 ロイター/Toru Hanai )

市場関係者の見方は以下の通り。

●環境は金利上昇、日銀は動かず円債利回りは小幅な切り上げ

<パインブリッジ・インベストメンツ 債券運用部長 松川 忠氏>

オミクロン変異株など新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、来年はFRB(米連邦準備理事会)など世界の中央銀行がインフレや景気回復を背景に、利上げなど金融正常化へさらに動く可能性が大きい。

金利は上昇しやすい環境であり、米10年国債金利は2.0%程度まで上昇するとみている。今年のピークである1.7%付近まで来ると買いが出やすいが、ファンダメンタルズの後押しがある限り、金利上昇基調は続くのではないか。

米金利のイールドカーブは、利上げ局面におけるフラット化を早く先取りしすぎた感があるので、いったんスティープ化しやすいが、その後、再びフラット化に向かうとみている。

国内では来年度の国債発行計画でも、大規模な増発はなかった。米債は金利面では円債より魅力があるが、国内投資家は金利が上がり切った局面で米債を買いたいはずであり、しばらくは消去法的に円債買いを続けるのではないか。円債金利は米金利に連動し、レンジを切り上げるとみられるが、5─10bp程度とわずかだろう。

日銀は金融政策を動かさないとみている。日本の物価は持続的に2%以上で推移する可能性が低いためだ。ただ、黒田東彦総裁は2023年4月に任期を迎えるため、次期総裁への道筋をつけたいと考えれば、イールドカーブ目標の引き上げや短期化を行う可能性もある。

来年の焦点は参院選だ。岸田文雄政権が続投なら増税に動く可能性が高まり、債券市場にとってはプラス。もし負けるようなことがあれば、高市早苗政調会長の首相就任の可能性が高まり、財政拡大への警戒感が強まるとみている。

新発10年債利回りの予想レンジ:ゼロ%─0.15%

●日銀のYCC修正を意識する市場、先取りして金利上昇へ

<アライアンス・バーンスタイン 日本債券ポートフォリオ・マネージャー 橋本 雄介氏>

来年の円債市場は日銀の金融政策の変更を意識する展開になるとみている。新型コロナウイルスの感染状況次第でもあり、日銀が実際に動くかどうかはまだわからないが、マーケットは、政策変更を意識し、先取りして動くことになるだろう。

政策変更の手法としては、イールドカーブ・コントロール(YCC)のターゲットを10年金利から5年金利に短くすることなどが考えられる。国債買い入れオペの減額も選択肢だが、金利の誘導レンジを引き上げるとはみていない。

政策変更への警戒で、円金利は来年上昇すると予想している。携帯料金引き下げの影響が剥落し、消費者物価指数(CPI)が上昇する5─6月に、円金利も大きく上昇するのではないか。その後の金利は、さらなる金利上昇を見込んで売る投資家と、そろそろとみて買いに動く投資家のバランスで決まりそうだ。

国内投資家は株価がしっかりしている間は、規制対応の余力もあり、円債に対しては押し目買いの姿勢に徹するだろう。海外債券は金利が上がり切ったところで買おうとするとみている。

円債のイールドカーブの形状はそう変わらない見通しだ。海外金利に比べて、10年超のカーブはかなり立っており、海外金利が上昇しても、大きな影響は受けないだろう。

参院選は特に材料視していない。

新発10年債利回りの予想レンジ:ゼロ%─0.20%

●コアCPIは来年度に入り1%台後半への上昇模索、日銀の金利抑制姿勢に変化も

<アセットマネジメントOne チーフエコノミスト 小出 晃三氏>

米国では、来夏もコアCPI前年比が3%を割らず、FOMC(連邦公開市場委員会)の想定を上回る利上げとなるだろう。連銀は、インフレ抑制を目指しつつ、緩やかな景気拡大予測と見合った形でイールドカーブが立つことをむしろ望むのではないか。米10年債利回りは、来秋には2%台に乗ると予想している。

一方、日本では、景気は財政対策も受けて緩やかに拡大し、コアCPI前年比は来年度入り後に1%台半ば以上への上昇を模索するだろう。円安でも輸出数量は伸びづらく、交易損失が拡大しており、日銀の円安に対する耐性は従来よりも低いだろう。日銀の金利上昇を抑制する姿勢がやや変化する可能性がある。

財政面では、参院選を前に、自民党「財政政策検討本部」で長期的な成長に寄与しないバラマキを正当化するような議論が進めば、長期国債投資にかかるリスクプレミアム拡大につながり得る。また黒田総裁の後任が下馬評に上がれば、QQE(量的・質的金融緩和)の功罪にかかる議論を誘発し、国債市場に一石を投じるかもしれない。

2022年は、予想以上にインフレが高まるリスクを感じつつ、未曽有の金融・財政政策の帰趨(きすう)についてより深く考え始めることを、世界の債券市場参加者に迫る年になるだろう。

新発10年債利回りの予想レンジ:ゼロ%─0.25%

●日銀はYCC堅持、金利は年後半に多少上振れも基本トレンドは「低位安定」 

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 稲留 克俊氏>

来年の国内金利の見通しは、端的には「低位安定の継続」だと言える。日銀が現行のYCC政策の枠組みを維持し、金融調節方針も変えない、とみていることが主な理由だ。4月分のコアCPI上昇率は1%程度となって物価のモメンタムは持ち直すが持続はせず、2%の物価安定目標には届かないため、FRBが利上げ局面入りしても日銀は追随しないだろう。

来年の動きをより細かく見れば、「コロナ禍のうちは低位安定を優先する」という日銀のYCC方針を背景に、金利は年前半の方がより狭いレンジでもみ合うイメージを持っている。

一方で年後半は、コロナの悪影響が弱まれば日銀のYCC方針の軸足が「低位安定」から「ある程度の変動」優先となるため金利上昇余地を試す動きが出たり、FRBの利上げに伴う米金利上昇に国内金利が連れ高したり、日銀の正・副総裁の後任人事に伴う思惑が売り材料となったり、金利変動レンジは年前半と比べてやや切り上がりそうだ。その場合でも、長期金利の年間レンジの上限は今年の高値の0.175%を上回らないだろう。

このほか、政府が2025年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成するとの財政健全化目標をどうするのかにも目を配りたい。仮に目標の先送りがあったとしても、YCCの影響などによって金利の急変動は避けられるとみられるが、中長期的には重要なテーマであり注目している。

新発10年債利回りの予想レンジ:ゼロ%─0.15%

(伊賀大記、植竹知子 編集:宮崎亜巳)

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