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展望2022:中小企業への投資で付加価値向上を、若者の賃金上昇も重要=日本総研・藤波氏

[東京 1日 ロイター] - 日本総研の上席主任研究員、藤波匠氏は、人口が減少していく中で、日本の大企業の多くがとった経営戦略は誤っていたと指摘する。女性や高齢者など低賃金の雇用を増やすのではなく、競争力のある国内中小企業への投資やM&Aなどを通じて、生産性向上を目指すべきだと提案した。同時に中小企業も含め、若者の賃金引き上げが重要だとしている。

日本総研の上席主任研究員、藤波匠氏は、人口が減少していく中で、日本の大企業の多くがとった経営戦略は誤っていたと指摘する。写真は都内のオフィスビル。2017年2月撮影(2022年 ロイター/Toru Hanai)

ロイターとのインタビューで述べた。

<好機逸した日本企業>

人口減少が止まらないなかで、国内の労働力人口は19年には6886万人と過去最高を更新した。しかし増えたのは女性と高齢者が中心で、女性の労働者数は19年までの7年間で1割、65歳以上の高齢者は5割増加した。藤波氏が調べた福利厚生費も含めた勤労者1人当たりの実質人件費は、18年が369万円とリーマンショックのあった08年の348万円こそ上回っているものの、ピークだった02年の414万円に遠く及ばない。

藤波氏は、大企業のこうした戦略には根本的な誤りがあるとみる。「団塊世代がリタイアした後の人手不足は目に見えていた。人口減少下ではITを駆使して、1人当たりの売り上げや付加価値をどう伸ばすかを考えねばならない。18年までの好況期はその好機だったが、低賃金の労働者を増やすにとどまった」という。

国際通貨基金(IMF)によると、1990年にG20でトップだった日本の1人当たり国内総生産(GDP)は、20年時点で米豪独などに次ぐ7位まで転落した。「人口減少下では、雇用の維持や創出より雇用の質、生産性を上げることが重要となる。いくら仕事があっても、賃金が低く、高度人材の能力を生かすことができる職場が少ない地方から、若い人の流出が止まらない現実を直視すべきだ」と藤波氏は話す。

<中小企業の再編不可避>

企業の99%を占める中小企業の活性化も避けて通れない。

藤波氏は中小企業の生産性向上が必須な一例として、70年代に日本が敗退した鶏卵産業を挙げる。世界展開を目指す一部欧米企業が早くから品種改良に取り組み、少ない餌で多くの卵を産む種を開発生産する競争を仕掛け、国内業者は淘汰された。

そうした企業は多くの鶏のDNAを抱え、例えば生食を好む日本向けには黄身が崩れないよう、白身が硬い卵を産む鶏を品種改良により生み出し、輸出しているのだという。

藤波氏は「巨大なDNAプールを抱え、世界中に親鳥を輸出するのと、国内で薄利多売の卵を売るのでは、どちらの生産性が高いかは自明だ。人口減少を前提に、ビジネスモデルを再検討する必要がある」とみる。

中小企業の多くは売り上げが減っているにもかかわらず慢性的に人手が不足している。外国人や高齢者を雇って人件費を抑制しても、低付加価値品のみの取り扱いで売り上げが伸びない、といった悪循環から抜け出せない。

コロナ対策等の助成金で倒産件数が異例の低さに抑えられている現在こそ「産業構造の転換や生産性向上を意識すべき。それが人口減少下の処方箋になる」と藤波氏はいう。

中小企業再編にあたって藤波氏は大企業による買収などが選択肢になるとしたうえで「企業買収でもただの救済ではなく、成長に資する技術や特許がある、それを実現する職人がいることなどを条件とすべきだろう」と指摘する。

同時に重要な視点は、今後の日本を担う若者の賃金上昇だ。「企業の生産性を高め、若い世代の賃金を引き上げることに軸足を置いた産業政策が必要だ」という。

*インタビューは12月15日に実施しました。

(基太村真司 編集:石田仁志)

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