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展望2021:好需給が抑える金利急上昇、リスクはトリプルブルー

[東京 28日 ロイター] - 2021年の円債市場では、緩やかな金利上昇を想定する市場関係者が多い。新型コロナウイルスのワクチン普及で経済が回復すれば、金利に上昇圧力がかかりやすいためだ。一方、緩和マネーは依然潤沢であり、内外投資家の買いが急激な金利上昇を抑え込むとみられている。リスクは米国の「トリプルブルー」だ。民主党による大規模な財政政策が出れば、一段の金利上昇があると警戒されている。

 12月23日、2021年の円債市場では、緩やかな金利上昇を想定する市場関係者が多い。デラウェア州ウィルミントンで11月24日撮影(2020年 ロイター/Joshua Roberts)

市場関係者の見方は以下の通り。

●「トリプルブルー」なら金利予想を上方修正

<パインブリッジ・インベストメンツ 債券運用部長 松川忠氏>

新型コロナウイルスのワクチン普及で経済が回復する中での、緩やかな金利上昇がメインシナリオだ。FRB(米連邦準備理事会)は急激な金利上昇を望まないとみられ、急激な金利上昇には購入国債の年限長期化などで対応すると見込んでいる。米10年債金利は第2・四半期に1.0%程度まで上昇すると予想している。

一方、米ジョージア州の上院決選投票で民主党が2議席を確保し「トリプルブルー」となれば、大規模な財政政策が想定されるため、金利の予想レンジを上方修正することになるだろう。

円債市場については、米国よりも需給懸念は低い。2021年度のカレンダーベース市中発行額は40年債の小幅増発にとどまった。機関投資家からの潜在需要は大きく、米金利が急上昇する局面(価格は下落)では、円債への需要が高まる可能性がある。

一方、日銀は急激な円高が進まなければ、追加緩和を温存するだろう。今の円高はリスクオンのドル安が要因であり、円高と株高が併存する限り、警戒感は強まらない。バイデン政権も為替に関して強い態度で臨むとはみていない。

新発10年債利回りの予想レンジ:マイナス0.10%─0.10%

新発20年債利回りの予想レンジ:0.30%─0.50%

●需給は良好、パッシブファンドのマネー流入が継続

<野村証券 シニア金利ストラテジスト 中島武信氏>

円債金利は動きにくい展開になるとみている。今年はマクロ政策が大きく緩和方向に動いたが、来年は政策変更が想定されないためだ。

新型コロナウイルス次第ではあるものの、来年度のカレンダーベース市中発行額はほとんど増えない見通しとなっている。そうであれば日銀も量的緩和を拡大させる必要はない。さらに最近の日銀は企業の資金繰り支援に政策の軸足を置いている。新型コロナオペは金融機関にインセンティブを付与することで、貸出を促進させる仕組みだ。マイナス金利の深掘りは金融機関にダメージを与え、貸出にマイナスの影響を与える可能性がある。

海外投資家は来年も円債を一定程度購入するとみている。海外投資家が円債を買うのは、金利面での比較もあるが、パッシブファンドのマネーが増加している要因が大きい。円債が一定のウエートを占めているので、債券ETFなどが拡大すれば自動的に円債にマネーが流れ込む。

市場では、来年もFRBのバランスシートの拡大ペースは維持されるとの見方が多い。過剰流動性がさらに拡大する一方、世界的な金利低下が進む中で、ETFなどパッシブファンドにマネーが流入する構図が続きそうだ。

国内投資家も、年金の外債比率はかなり高くなっており、円債を買う可能性が大きい。生保なども、米債金利が上昇しにくい中では、円債を志向するとみられる。

新発10年債利回りの予想レンジ:0.01%─0.07%

新発20年債利回りの予想レンジ:0.34%─0.41%

●ワクチンが景気を下支えし始めれば、緩やかにスティープ化

<JPモルガン証券 債券調査部長 山脇貴史氏>

JGB(日本国債)金利はショートエンド、ロングエンドともに、年前半に新型コロナ感染は大丈夫か、景気後退は大丈夫かという議論がある間はなかなか上がらないと思う。年後半になって、仮に皆がワクチンを打つようになり始めてコロナがほぼ収束し、景気回復が少し実感できるようになって初めて、20年金利が上がり始めるのではないか。ワクチンが景気を下支えし始めれば緩やかなイールドカーブのスティープ化を予想する。

年限別に言うと、短中期セクターは、日銀が政策的に動きづらくなっており、また市場でも付利引き下げはなさそうだ、マイナス金利深掘りは難しいとの見方が広がる。よほどの状況変化が起きない限り日銀は大きな政策変更は難しいため、政策金利は動かない。その結果、2年も5年も動かずに安定推移するとみる。

10年債については、今年度に入ってプラスマイナス5bpと狭いレンジでの推移にとどまる。金融機関がゼロ%で日銀にどんどん置いておける形になり、10年はマイナス圏に入った途端に銀行勢が買わなくなってしまうため、マイナス方向には行きづらい。マイナス金利深掘りが再び浮上しない限り、10年金利はプラス圏で推移するだろう。

超長期ゾーンでは、20年債が来年のJGB市場のキーポイントと考える。現状は地域金融機関の投資が需給のコアだが、年前半はコロナや景気懸念を背景に彼らの投資が続くと予想する。その後、景気回復ストーリーが見えてくれば20年債への興味が落ちてスローダウン、と言っても20年債を売るのではなく買う量が減り、それで20年金利がじわりと上がって、カーブがスティープ化するというのがメインシナリオだ。30年・40年については、生保が一定量を買うが、金利低下を進めるパワーのある買い方にはならないだろう。

新発10年債利回りの予想レンジ:マイナス0.05%─0.15%

新発20年債利回りの予想レンジ:0.35%─0.60%

●金利低下余地は限定的、景気回復期待高まる局面でも大幅上昇見込まず

<レオス・キャピタルワークス 運用本部債券戦略部長 福室光生氏>

このところ10年、20年金利はやや低下基調にあるが、日銀は現状よりもスティープなカーブを望んでおり、来年の低下余地は限定的だと考える。過去には、リスクオフで金利が低下した際に円高がハードルとなって買い入れ減額ができず、金利が低下方向にオーバーシュートすることがあった。しかし現在では為替の方向感は逆転しており、日銀は機動的に対応できるだろう。

また10年以下に関しても、政策金利の利下げは見込まれず、また日銀がオペを個別銘柄などできめ細かく調整していることもあり、マイナス幅が極端に深くなることはないとみている。

一方、新型コロナウイルス向けワクチンが普及する見通しが今後高まれば、景気回復期待からの金利上昇が予想される。ただし日銀は、2017─18年の均衡水準である20年で0.60%を超えるまでは、買い入れを増やさないだろう。しかしながら、日米欧の中央銀行とも利上げに消極的ななか、20年ゾーンも地銀などの幅広い需要に支えられて、大きな金利上昇は回避されると予想する。

日銀が3月会合を目途に公表予定の政策点検については、YCC(イールドカーブ・コントロール)の調整を予想している。オペの減額は、10─25年のみならず、10年以下でも可能と思われる。ただし、減額自体は月次のオペ紙でも可能であり、今回は市場の活性化につながるような調整を期待している。

新発10年債利回りの予想レンジ:マイナス0.05%─0.10%

新発20年債利回りの予想レンジ:0.35%─0.50%

*ロイター編集部では、2021年の経済、市場、業界などを展望するインタビュー記事を「展望2021」として配信します。 内外経済や国際情勢、金融市場や各業界の見通しなどについて随時配信していきます。

伊賀大記、植竹知子 編集:内田慎一

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