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アングル:パキスタン大洪水、復興に苦難 家も職も押し流す

[チャルサダ(パキスタン) 5日 トムソンロイター財団] - パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州では8月下旬、増水したスワート川が流れを変えてナイーム・ウラーさん(40歳)の村に怒濤のごとく流れ込み、ウラーさんと親族の家屋14戸を押し流した。

 パキスタンでは雨が数カ月降り続き、春の異常な高温で氷河の溶解が加速したことが洪水を引き起こし、国土の3分の1が水没、3300万人が被害を受けた。写真は持ち物とともに洪水から避難する人々、同国中部ソバットプールで9月4日撮影(2022年 ロイター/Amer Hussain )

ウラーさんは5ヘクタールの借地で栽培していたサトウキビも壊滅。職と家を失い、種や肥料を買うために借りた資金は返済の見込みが立たない。

「人生をゼロから始めるしかない」とウラーさん。「全てをなくした。人生最大の試練に向き合う力を与えてくださいとアラーに祈ることしかできません」

雨が数カ月降り続き、春の異常な高温で氷河の溶解が加速したことが洪水を引き起こし、パキスタンは国土の3分の1が水没、3300万人が被害を受けた。

災害当局によると、1300人余りが死亡し、被害額は推計100億ドル。被害を受けた住宅は160万戸、破損した道路は総延長5000キロメートル、死んだ家畜は70万頭に上る。

数百万の家庭が自宅や所持品などを失い、多くの家庭は防水シートを張った仮のすみかを置くための乾いた場所を探すのにすら苦労している。

主要な道路や橋は流され、支援活動は進まず、当局は一部の地域で費用のかさむヘリコプターを主な輸送手段に据え、限定的な緊急支援を展開せざるを得ない状況となっている。

最も被害が大きい南西部バルチスタン州のアワラン地区では、洪水が地平線まで広がっている地域もあり、貧困層の住宅の多くが破壊された。

首都イスラマバードの大学生ディシャド・ブルチャさん(21)は自分の村に帰省していて被害に遭った。村は7月に洪水に見舞われ、ブルチャさんの家は流され、隣人が亡くなった。

ブルチャさんによると、たまった水が電線に触れていて感電の恐れがある。主要都市カラチと結ぶ橋が通行できず、物資を運ぶ主要ルートは切断されたままだ。

ヘリコプターがコメや豆の袋を投下するが、「量が少なすぎる」と、ブルチャさんは言う。台所も乾いたまきもなく、村の住人は料理ができないと、途切れがちの電話で訴えた。「多くの住民が怒っているが、ほとんどの人はただ無力だと感じている。助けてくれる人はいない。見捨てられている」

<届かぬ支援>

パキスタンは多額の負債を抱えている。国際的な援助機関も世界中から寄せられる支援要請への対応で既に手いっぱいになっており、パキスタンの家庭は復興に必要な費用の多くを自分で賄わなければならないかもしれない。

カイバル・パクトゥンクワ州の災害当局者によると、同州の現行の政策で農民は作物や果樹園の被害に対して1エーカーあたり5000ルピー(23ドル)の補償を受けることが可能で、1家庭あたりの支援額は最大5万ルピーとなっている。被害額の詳細な算定が行われれば補償額は引き上げられる可能性がある。

また、州政府は家屋の被害に対して1戸あたり最大1370ドルの補償を行うと発表。7月以降、救助・救援活動に17億5000万ルピー(790万ドル)を充てたという。

国際通貨基金(IMF)は先週、資金繰りに苦しむパキスタンに対する11億ドルの支援に合意した。

しかし特に農民の間では、十分な支援が受けられないのではないかという不安が広がっている。畑は荒れ果て、作付け再開前に土地の修復作業が必要だとの声もある。

チャルサダ郊外の村に住むシェル・アラムさん(47)は8月26日に自分の土地が洪水に見舞われ、サトウキビの収穫ができなくなった。

種と肥料を買うための借金を返済するため、すでに450ドルを借りているが、さらに農地復旧のために230ドルの融資を求めている。

5人の子どもを持つアラムさんは、日々の暮らしを支えるため、チャルサダの民間駐車場で仕事を見つけた。洪水で被害を受けた農作物は家畜の餌にしかならない。

自宅前の木の下に座り込み、「どうやって生き延びたらいいのか分からない」と不安を吐露した。

国連人道問題調整事務所によると、パキスタンは洪水で約200万エーカーの作物が被害を受け、経済に影響が及ぶだけでなく、食糧安全保障も危険にさらされる可能性がある。

バルチスタン州のブルチャさんによると、果物、野菜、肉は供給が不足して価格が高騰し、特に貧しい人たちが苦しんでいる。

ブルチャさんの地域では、洪水によって頼みの井戸が汚染され、健康被害をもたらす恐れがあるという。「人々は苦しみ、多くの人々が亡くなるだろう」

<無視された警報>

洪水に見舞われた人々の多くは、十分な警告を受けていなかったり、数カ月に及ぶ豪雨で警報が繰り返し発令されたりしたため、警戒感が低下したという。

アラムさんの村は8月下旬の洪水の際に政府から正式な警報を受けていなかったが、近隣の村から警報が伝えられた。ソーシャルメディアでも警報が流れたため、アラムさんの村は約3時間で家畜や物資を安全に移動させることができた。

カイバル・パクトゥンクワ州の災害当局者は、州内の5つの河川と他の2カ所に設置された監視設備が早期警報に役立ったと説明。警報により18万人がチャルサダ地域から避難したという。

(Imran Mukhtar記者)

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