March 1, 2019 / 8:04 AM / 5 months ago

アングル:インド空爆の犠牲者はどこに、パキスタン住民が困惑

[ジャバ(パキスタン) 28日 ロイター] - インド空軍がパキスタンの武装勢力に対して26日未明に実施した空爆で、唯一確認された被害者は、なぜ空爆されたのか、いまだに理解できないと語る。右目の上に傷を負った彼は、空爆の衝撃で泥レンガでできた自宅が揺れ、目を覚ましたという。

「テロリストを攻撃したかったというが、ここにどんなテロリストがいるというのか」と、62歳のヌーラン・シャーさんは話す。シャーさんは、パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州北東部の町、バラコットに近いジャバ村に暮らしている。

「私たちはここに暮らしている。私たちがテロリストだというのか」

インド側は、26日の空爆により、パキスタン国内のイスラム過激派ジェイシモハメドの主要訓練施設を破壊したと主張する。同組織は、両国が領有権を争うカシミール地方で14日発生した、インド治安部隊を乗せたバスを狙った自爆攻撃の犯行声明を出していた。自動車を使ったこの攻撃で、インド治安部隊の隊員44人が死亡した。

インドのビジェイ・ゴカレ外務次官は、今回の空爆により「非常に多くのジェイシモハメドのテロリストや教官、上級司令官、フェダイーンの訓練を受けていたジハード(聖戦)戦士を撲滅した」と明らかにした。フェダイーンとは、自爆任務を遂行するイスラム過激派の戦闘員を意味する。

別のインド政府高官も、約300人の武装勢力が殺害されたと記者団に語った。

しかし、インドの空軍少将は28日、そうした主張を撤回するようなコメントを行った。空爆による被害状況について聞かれると、犠牲者について詳細を語るのは「時期尚早」だと述べた。その上で、インド軍は空爆が武装勢力の拠点にダメージを与えた「かなり信頼できる証拠」があるとも語った。

パキスタン側は、空爆は主に森林地帯に落下し死傷者は出ておらず、失敗に終わったとして、インドが発表した推定死亡者数を一蹴した。

こうした両国の主張の違いが、5月までに実施されるインド総選挙で2期目を目指すモディ首相にとって、争点の1つになるかは不明だ。現時点では、野党が、政府や軍に対して空爆結果についてのさらなる証拠を求める兆しはほとんど見られない。

ジャバ村の森林地帯の斜面で、村民たちは爆撃でできた4つのくぼみや引き裂かれた松の木を指さした。だが、彼らを午前3時ごろに目覚めさせた一連の爆撃による影響は、他にはほとんど見られなかった。

「何もかも揺れた」と、同地域でピックアップトラックを運転する男性は語り、人的被害はなかったと述べた。「誰ひとり死んでいない。松の木が何本かだめになり伐採されただけ。カラスが1羽死んだ」

 2月28日、インド空軍がパキスタンの武装勢力に対して26日未明に実施した空爆で、唯一確認された被害者のヌーラン・シャーさん(写真)は、なぜ空爆されたのか、いまだに理解できないと語る。パキスタンのジャバ村で撮影(2019年 ロイター/Asif Shahzad)

<宗教学校>

ジャバは、パキスタンで人気の観光地である風光明媚なカガン渓谷へと続く、丘や渓流に囲まれた森林地帯に位置する。2011年に国際武装組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者が、米特殊部隊によって殺害された潜伏先の北部アボタバードから60キロ余りの場所にある。

地元住民によれば、ジャバの丘陵地帯では約400─500人が泥レンガ造りの家に暮らしている。ロイターが取材した約15人の村民は皆、前出のヌーラン・シャーさん以外の被害者を知らないと答えた。

「窓ガラスの破片が当たったか何かでけがをした人は見たが、死んだ人は見なかった」とアブドゥル・ラシードさんは語った。他の住民多数も同じ答えだった。

ジャバの診療所で空爆の夜に勤務していた職員も、大規模な犠牲者が出たという主張を一蹴した。

「全くのうそだ。ばかげている。1人の負傷者も受け入れなかった。軽いけがをした1人が治療を受けたが、それもここではない」

ジャバ村に近く、2005年の地震後に再建された町バラコットの病院関係者も、26日の空爆で犠牲者は搬送されてこなかったと語った。

地域住民によれば、ジェイシモハメドは確かに存在するが、運営しているのは活動中の訓練施設ではなく、爆弾が落とされた場所から約1キロ離れた場所にあるマドラサ(イスラム教の高等教育施設)だという。

「それはコーランを学ぶマドラサだ。村の子どもたちが通っている。訓練などしていない」と、ヌーラン・シャーさんは言う。

今週初めに掲げられた、マドラサとジェイシモハメドとの関連を示した看板は28日に撤去された。軍は、記者がマドラサに接触することを阻止した。

しかし、後方からその施設を見ることができた。周囲にある木々と同じく、建物も損壊しているようには見えなかった。爆撃によるくぼみ近くで見られたようなダメージを示すものは何もなかった。

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首都イスラマバードの西側外交官らも、インド空軍が武装勢力の拠点を攻撃したとは信じていないと口をそろえる。

「武装勢力の訓練施設などそこにはなかった。数年前に移動している。それがわれわれ情報コミュニティーの間では周知の事実だ」と、ある西側外交官は語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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