[6日 ロイター] - 米労働省が発表した昨年12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が15万6000人増と、伸びは市場予想の17万8000人増に届かなかった。ただ、賃金は大きく伸びており、労働市場の勢いが持続していることを示した。
識者のコメントは以下の通り。
●賃金増は重要、年内3度の利上げ予想
<エドワード・ジョーンズの投資ストラテジスト、ケイト・ウォーン氏>
ほぼ想定内の内容だ。非農業部門雇用者数の伸びは市場予想を下回ったが、過去2カ月分が約2万人分の上方修正となるなど、数字がそこまで正確でないことを踏まえると、15万6000人増も、17万8000人増もさほど大きな差はないと言える。
賃金が前年比2.9%伸びたことは重要だ。市場は労働市場の引き締まりでいつかは賃金が伸びると見込まれているため、さらに注目されるだろう。労働市場の改善がインフレ加速へとつながり、米連邦準備理事会(FRB)は今年、2度ではなく3度利上げする可能性が高いだろう。
●全体的に平坦な内容
<みずほ(ニューヨーク)の為替ストラテジスト、SIREEN HARAJLI氏>
過去分の上方修正が一段と注目される。12月の雇用者数の伸びは予想を下回ったものの、過去分の上方修正を踏まえると全体的には平坦で、他の経済指標に沿った内容といえる。米経済はゆるやかな成長が続いている。
●FRBは現在の軌道維持へ、利上げは6・12月
<バイニング・スパークスの首席エコノミスト、クレッグ・ディスミューク氏>
まずまずの内容で、米連邦準備理事会(FRB)は現在の軌道を維持することになるだろう。雇用の伸びが鈍化しつつあることはわかっており、月間で平均18万人増のペースとなっているが、上方修正されると考える。小売部門での雇用が前倒しされたこともあり、12月の雇用者数が予想を若干下回る伸びにとどまったことは驚きではない。FRBが想定している以上に労働市場に緩み(スラック)が残っている可能性もある。
賃金が前年同月比2.9%増、前月比0.4%増となったことは目覚しく、現在の景気サイクルで最良の結果と言える。賃金の伸びが3%を超えれば、FRBは追加利上げの実施を一段と快適と感じられるだろう。次回の利上げ時期はドルの動きに加え、一部経済指標が勢いを増している欧州の情勢次第となるが、次回利上げは6月、その次は12月に実施される可能性がある。
●FRBはインフレへの取り組み必要に
<パイオニア・インベストメンツ(ボストン)の債券信用調査部ディレクター、マイケル・テンプル氏>
底堅い年末商戦やエネルギー関連活動の持ち直しを受け、もっと強い数字を予想していただけに、やや意外だった。市場ではU6(広義の)失業率や賃金インフレが注目されているようだ。
労働市場が完全雇用の状態に達するなか、雇用創出は今後確実に減速していくが、賃金インフレの上昇も見込まれる。このため米連邦準備理事会(FRB)は継続するインフレ兆候への取り組みを始める必要が出てくるだろう。
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