[東京 14日 ロイター] - 岸田文雄首相は14日、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2025年度に黒字化するという政府の目標について、現時点において変更が求められる状況ではないと述べ、目標を堅持する姿勢を示した。
内閣府は同日、PBについて、高成長を前提とした場合は26年度に黒字化する見通しとの試算を経済財政会議に示した。法人税や所得税など税収増加を反映し、前回試算の27年度から1年前倒しした。
今回発表した「中長期の経済財政に関する試算」によると、25年度は1.7兆円の赤字が残る試算だが、歳出改革への取り組みを続ければ同年度の黒字化も視野に入るとした。
こうした試算を前提に、岸田首相は「現時点で、財政健全化の目標年度の変更が求められる状況にはないことが確認された」と発言。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響など不確実性が払しょくできない状況であることを踏まえ、「引き続き内外の経済情勢などを常に注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行う」とした。
試算によると、宿泊や飲食などの対面サービス関連企業は厳しい状況が続いているが、輸出やデジタル化投資などを背景に製造業やIT業などからの税収が増加、感染症対策で雇用・賃金が下支えられたことで所得税収の伸びも見込む。
内閣府は年初と夏の年2回、今後10年程度のPBの推移などを含む経済財政見通しを経済財政諮問会議に提出している。実質2%・名目3%を上回る高成長を前提とする「成長実現ケース」と、実質1%・名目1%台前半程度での推移を前提とする「ベースラインケース」の2つのケースで試算を出している。低成長が続く場合は、31年度も4.6兆円の赤字が残る見通し。
PBは、社会保障関係費や公共事業など毎年の歳出(除く国債費)と税収など歳入との差額で、財政健全化の目安となる。政府は,25年度にPB黒字化を達成する目標について、21年6月に閣議決定した「骨太の方針」で、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、年度内に目標年度を再確認すると明記していた。
一方、国・地方の公債等残高は、成長実現ケースで見ると21年度はコロナ対策などでGDP比217%と前回試算の211%から上昇するが、31年度には168%程度まで低下する見通し。 ベースラインケースでは、31年度も204%程度と見込む。
消費者物価の上昇率は、成長実現ケースでは25年度以降に2%程度に達するシナリオ。ベースラインケースでは、31年度でも0.7%上昇にとどまる見込みだ。
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