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アングル:PEファンドが日本の不動産に熱い視線、低収益物件に好機

[東京 2日 ロイター] - 企業買収を手掛ける海外の大手プライベートエクイティ(PE)ファンドが、日本の不動産市場に熱いまなざしを向けている。低金利で投資妙味がある上、割安のまま放置された物件が多く、事業再生のノウハウで収益性を高められると踏んでいる。上場REIT(不動産投資信託)運用会社を買収するなど投資拡大に動いている。

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米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は3月、2300億円でREITの運用会社(現KJRマネジメント)を取得し、日本の不動産投資を本格化した。主要都市にあるホテル、東京や大阪にあるオフィスビルに加えて、物流施設や賃貸マンションなどへの投資を軸に、現在4人の人員も拡充する。

企業や事業の買収・再生を手掛けるKKRのようなファンドは単純な物件売買だけではなく、売り手となる企業の価値を高める提案をすることで、差別化が図れると考えている。「日本の不動産投資の魅力は以前よりも高まっている」と、KKRのアジア不動産部門のマネージングディレクター、デイビット・チョン氏は言う。

アジアを拠点とするベアリング・プライベート・エクイティ・アジアも日本の不動産投資を本格化する。これまでは東京・原宿にある超高級マンションと大阪・心斎橋のホテルの2物件にとどまっていたが、7500万―4億5000万ドルの価格帯を中心に資金を投じていく。市場規模が大きい日本への投資は「最も優先順位が高い」と、日本の不動産投資責任者、竹入厚志氏は語る。

日本の不動産市場が注目される理由の1つは、金利の低さにある。各国の中央銀行がインフレ抑制へ利上げを急ぐ中、日本が金融引き締め局面に転じる可能性は当面低いとみられおり、借り入れコストを勘案した不動産の投資利回りが比較的高い。賃料や空室率も安定している。

事業用不動産サービス大手のシービーアールイー(CBRE)によると、世界の主要都市におけるグレードの高いオフィスビルのイールドスプレッド(金利と利回りの差)は2022年1―3月期、上海、ニューヨーク、ロンドンなどに対して東京は2.063%と高い水準にある。

企業が抱えていた多くの不動産が、新型コロナウイルス禍を受けた資産効率化で売り物として出てきた影響も大きい。ニッセイ基礎研究所の百嶋徹上席研究員によると、日本企業の一部は1980年代の「土地神話」で不動産取得に走ったが、社内に管理するプロがいないまま有効活用されてこなかった。

国土交通省が5年ごとに実施している「土地基本調査」(2018年1月1日時点)によると、法人総数196万のうち47%が土地や建物を所有する。土地だけに絞ると、その面積は約2.6万キロ平方メートル、資産額は約387.2兆円に上る。

資産を減らし経営効率を高めるため、コロナの影響が直撃した西武ホールディングスは、傘下のプリンスホテルが保有するホテルやゴルフ場など31施設をシンガポール政府系投資ファンドのGICに売却することを決めた。広告大手の電通グループは昨年9月、東京・汐留にある本社ビルを不動産会社のヒューリックなどに売却した。20年12月の最終赤字を受けて、構造改革を進める中で、保有資産の見直しも進めた。

「日本企業の多くが不動産を多数保有し、資本の効率性が低い」と、KKRのチョン氏は言う。

PEファンドだけでなく、米大手投資銀行のゴールドマン・サックスも、自己資金に加えて外部の機関投資家から資金を集めて組成したファンドを通じて、日本での不動産投資を大きく増やしている。

数年前の年1600―1700億円と比較して、21年は2700億円、22年上半期はすでに1800億円超の投資を決めた。「上半期の投資額として、リーマン・ショック以降で最高となった」と、アセット・マネジメント部門でマネージング・ディレクターを務める木下満氏は話す。

ゴールドマンは、ここに来て投資対象を小型物件にも広げ始めた。大阪のビジネス街に広がる緑豊かな靭(うつぼ)公園近くにある築31年の賃貸マンションには同社が関わった。小さな物件は割に合わないとこれまで敬遠してきたが、ゴールドマンは双日と組んで10―30億円程度で築年数の経った賃貸マンションを取得、改装して賃料を上げることで収益性を高め、売却する事業を始めた。

双日新都市開発(東京都港区)の水池祐社長によると、バブル期前後に建てられたマンションのうち、地主などの個人や小さな企業が所有する駅近の賃貸物件は、修繕や改修が適切に行われておらず、好立地ながら賃料をきちんと取れていないケースが多いという。

CBREのディレクター、本田あす香氏によると、足元では世界的な景気後退懸念からやや慎重姿勢に転じた欧米の投資家もみられる。ゴールドマンの木下氏は、海外の機関投資家からの資金流入は続いており、「慎重ながらも投資を進める」と話す。

(浦中美穂、藤田淳子 編集:久保信博)

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