February 26, 2018 / 7:24 AM / 9 months ago

焦点:「平和五輪」は失敗か、韓国大統領の融和策に国民冷やか

[江陵(韓国)/ソウル 24日 ロイター] - 韓国が演出した「平和五輪」は、スポーツイベントとしては「合格」した。だが北朝鮮との関係改善に向け、同国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が大胆な行動を取るのに必要な支持を集めるという、より重要な試験には「落第」した可能性を世論の反応は示唆している。

 2月24日、韓国が演出した「平和五輪」は、スポーツイベントとしては「合格」した。だが北朝鮮との関係改善に向け、同国の文在寅大統領が大胆な行動を取るのに必要な支持を集めるという、より重要な試験には「落第」した可能性を世論の反応は示唆している。写真は北朝鮮の応援団。平昌で22日撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

同大統領は、リスクの大きい北朝鮮との融和政策への世論の支持を鼓舞する手段として五輪を利用した。こうした北朝鮮へのアプローチはかつて、最終的には期待外れに終わっている。

文氏の中核的な支持基盤である若者が、アイスホッケー女子の南北合同チームのような同氏の平和推進の取り組みを支持しなかったことについて、ある政府当局者は驚きの声を上げた。

「2000年代初め、韓国が融和政策を取ったときは、ほとんどの国民が希望にあふれ、概して政府を支持していた。それから好不調の10年を経て、そのような支持は見られなくなった」と、同当局者は振り返る。

「世論に反していることになるなら、根本的な変化を求めるのは容易ではないだろう」とこの当局者は付け加えた。

平昌冬季五輪で、平和のメッセージを韓国の若者に響かせることに失敗したのは明白だった。とりわけ、一部の競技において北朝鮮の応援団が南北統一旗を振りながら「私たちは1つ」と連呼して応援したことへの若者の反応にそれは表れている。

「率直に言って、私自身や友人の多くは、私たちが彼らと同じだとは思っていない」と、スピーカーから韓国の歌謡曲の合間に流れる昔の朝鮮民謡のリズムに合わせて体を揺らす北朝鮮応援団を見ながら、大学生のLee Seung-hyunさん(20)はこのように語った。

「北朝鮮の応援団が『私たちは1つ』と叫ぶとうんざりする。ありもしない一体感を強要されている気になる」

世論調査によると、アイスホッケー女子の南北チームに対する当初の反発は共感へと変化したが、それも長くは続かなかったようである。

ギャラップ・コリアが23日発表した世論調査によると、南北チームを支持していると回答したのは50%で、依然として世論が割れていることが明らかとなった。

「現実的に見れば、そうしたことは中身のない小さな進展だ」と、韓国のシンクタンク峨山政策研究院のジェームズ・キム研究員は、文大統領が示した統一のシンボリズムについてこう述べた。

「結局、閉会式までに大きな進展がなければ、五輪後の状況も基本的に開催前と変わらないだろう」

<成果>

しかし、五輪が文氏への支持拡大に失敗したとしても、実際にいくつか成果もあった。孤立していた北朝鮮を五輪に参加するよう説得し、2年ぶりに南北間のハイレベル対話を行った。

同氏の融和策は、五輪開会式に出席したペンス米副大統領の支持も得たように思われる。北朝鮮への「最大限の圧力」を強化しつつも、ペンス氏は米国政府が前提条件なしに同国と対話する用意があると語った。

米国政府は、北朝鮮にミサイル・核プログラムを放棄させるため、最大級の制裁を同国に科して圧力を強めている。米国とアジアの同盟諸国は、対北朝鮮制裁に違反している疑いがある船舶への臨検強化を準備していると、米当局者は明らかにした。

もしこれが失敗に終われば、第2段階は世界にとって非常に不幸な事態になりかねないと、トランプ米大統領は述べている。

だが、北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談のため訪朝の招待を受けている文大統領にとって、国民の支持獲得は融和への道を一段と進める上で極めて重要になる。

しかし北朝鮮が五輪閉会式に、46人が犠牲となった2010年の韓国哨戒艦沈没事件を当時指揮したとみられる朝鮮労働党中央委員会の金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長率いる代表団を派遣すると発表したことで、文大統領のこうした仕事は一段と難しさを増した。

遺族や野党議員らは、そのような代表団を受け入れるという大統領の決断を非難した。

韓国政府が、かつて大胆な融和政策を進めたときに享受したような幅広い国民の支持をもはや得ていないことを今回の五輪は露呈したと、政府当局者や専門家は指摘する。

いわゆる「太陽政策」を取っていた2005年、韓国サムスン電子は携帯電話のコマーシャルで、北朝鮮の舞踏家と韓国の歌手を共演させた。現在、そのようなことをあえてしようとする企業は見られない。

北朝鮮が五輪をプロパガンダに利用していることは明白だとして米日が北朝鮮を非難していることを考慮し、主要な五輪スポンサーは自社のマーケティングにおいて「平和五輪」という言葉を使うことを避けている。

「北朝鮮が核・ミサイル発射実験をやめず、脅威を高めているのを受け、韓国国民の態度は大いに冷え込んでいる」と、韓国国立外交院のシン・ボムチョル教授は指摘した。

文大統領が橋渡しをしようとしている大きな溝は、政治的なものだけでなく文化的なものでもある。北朝鮮と韓国は、1950─53年の朝鮮戦争以降、何世代も物理的に分断されている。

 2月24日、韓国が演出した「平和五輪」は、スポーツイベントとしては「合格」した。だが北朝鮮との関係改善に向け、同国の文在寅大統領(写真)が大胆な行動を取るのに必要な支持を集めるという、より重要な試験には「落第」した可能性を世論の反応は示唆している。江陵で17日撮影(2018年 ロイター/John Sibley)

34歳のビジネスマン、ダニエル・ナさんは22日、妻と3歳の娘を連れてスピードスケートの試合を観戦した。会場では、北朝鮮の応援団がよく訓練されたお決まりの応援を行っていた。

「彼女たちを見るのは面白いと同時に奇妙でもある」とナさんは言う。「普段は政治に無関心だが、北朝鮮がうまく立ち回って何かを切り抜けることには明らかに不安を覚える」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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