April 27, 2018 / 10:55 PM / 18 days ago

コラム:世界は平和に向かっているのか

John Lloyd

 4月21日、世界を支配するのは誰か──。西側の政治家や政策担当者のあいだで、この話題が登場する頻度がますます増えている。そしてその内容は、月を追うごとに暗いものになっている。写真は2017年11月、北京で握手するトランプ大統領と習近平国家主席の手(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

[21日 ロイター] - 世界を支配するのは誰か──。西側の政治家や政策担当者のあいだで、この話題が登場する頻度がますます増えている。そしてその内容は、月を追うごとに暗いものになっている。

コンセンサスがあるとすれば、それは威信が低下する米国、停滞もしくは衰退に苦しむ欧州、そして上昇気流に乗る中国が形成する危険なバランスの上に世界が揺れているということだ。

21世紀には米国に代わりソフトパワーと活力の核になると、加盟主導国が期待していた欧州連合(EU)は今や、不確実性と無力感に悩まされている。経済政策と銀行システムを欧州中枢に集約し、無力化が進む欧州議会に汎欧州的な政党を誕生させることで、国内経済と同時に欧州統合プロジェクトの再活性化を目指そうとする指導者が強く支持されている国は、現時点ではフランスだけだ。

マクロン仏大統領は17日、ストラスブールでの欧州議会でこうした理念を提示し、「利己的なナショナリズム」からの脱却を訴えた。

だが、それに不可欠な要素であるドイツからの支持の欠如や、ストライキで生じたフランス国内の混乱について、マクロン大統領も承知だ。欧州は分断されており、分裂した大陸は当面、そこから脱する展望を描けないままでいる。

戦後70数年間の大半を通じて、特にソ連崩壊後の時期において、世界の主役を担ってきたのは米国だ。米国政府は、西側の民主主義圏を支配しただけでなく、自身とその同盟国が握る富と軍事力により、独裁的な国々の勢力拡大をほぼ抑え込むことに成功した。

こうした抑えこみを実現するために、独裁者を西側陣営に取り込むことも多かったが、このような手法では、モラルハザードが生じ、抑圧や拷問、暗殺といった独裁体制につきものの慣例を黙認することになりがちだった。だがそれは、安定維持と民主主義諸国の防衛という大義名分によって正当化されたのである。

こうした「力の行使」が失敗し挫折する事象が徐々に増えている。それはアフガニスタンやイラク、シリアに対する介入による結果が証明している。

トランプ米大統領は、こうした軍事力の投入回避などにより、「米国を再び偉大に」すると約束し、権力の座についた。その演出は非常に異なるとはいえ、軍事介入から手を引き、米国の「力を賢明に行使することによって、それをさらに高める」ことを目指すと最初の就任演説で語ったオバマ前大統領の公約を実質的に継続する格好となる。

だがオバマ、トランプ両大統領ともこの点において、まったく一貫性に欠けている。両者の違いは、軍事力の投入における一貫性のなさという点ではなく、ソフト・パワーの投入の在り方だ。

民主主義諸国は、オバマ前大統領の礼儀正しさと外交姿勢、そしてリベラルな理念や制度を支持している点を高く評価していた。トランプ大統領がアピールするのはその正反対の感情であり、同盟諸国は、かつては自らを必要欠くべからざる存在として押し出していた米国との関係において、どう振る舞うべきか戸惑っている。

疑う余地なく、大国として現在台頭しているのは中国であり、中国がどのような未来を望んでいるのかが、より明白になりつつある。

中国専門家エリザベス・C・エコノミー氏は、同国の習近平国家主席が、積極的に国際秩序を変えようとしており、自らを「国際社会の最高責任者」と位置付けていると指摘する。

「習氏が2014年の演説で鮮明に表現しているように、中国は『国際的な競争の場を構築し』、『そこで行われる競争のルールを生み出す』力を持つはずだ」とエコノミー氏はフォーリン・アフェアーズ誌の最新版で記している。

こうした習氏の自信には確固たる裏付けがある。

東アジアでは、もっぱら軍事力の展開によって米国が優位に立っているが、現在の流れでは、じきに中国が取って代わる可能性がある。

これは、第2次世界大戦後に見られた「衰退する大英帝国から勃興する米国へ」という多少なりとも平和的な例のように、ある大国から別の大国へのバトンの受け渡しという形にはならないだろう。

ハーバード大学の政治学者グラハム・アリソン氏は著書「米中戦争前夜──新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ(ダイヤモンド社)」のなかで、世界の存亡に関わる脅威について、厳しい展望を描き出している。

「価値観、伝統、哲学をめぐる米中間の対立は、中国のような新興勢力が、米国のような既存勢力に取って代わる脅威となる場合に必ず生じる根本的な構造的ストレスを悪化させる」と同氏は述べている。今なお軍事力で優勢な米国にとり、「対等な競争相手」と目されるのは、いまやロシアではなく中国なのである。

何か打つ手はあるだろうか。現状では考えにくい話だが、米中両国政府が、覇権の共有に向けて合意するしかない。

つまり、根気強い交渉を通じてそれぞれの勢力圏や影響圏の調整を可能とするような協力的関係を築くことであり、アリソン氏のいう「(価値観の)対立」の低減に集中することだ。

とはいえ、いまの段階ではとうてい現実味がない。中国ではイデオロギーが厳格かつ反民主主義的にますます傾斜しており、より積極的に軍事力を展開するようになっているからだ。

だが、ソ連がまだ存在していたころの東西対立とは異なり、中国は自由貿易に熱心であり、ほぼ資本主義体制である(あるいは、中国自身が好む表現で言えば、中国的特性を備えた共産主義だ)。

反体制派を弾圧、投獄し、拷問を行っているものの、中国で台頭する中産階級は西側諸国で教育を受ける機会が増しており、ソ連時代に存在が許された中産階級に比べ、より懐疑的で先進的な大集団を構成している。

いずれにせよ米中関係は一筋縄ではいかないだろうし、ときには神経をすり減らすこともあるだろう。

だが米国が建国以来ずっと掲げてきたリベラルな理念を守り、西側諸国の民主主義的な団結にとって自らが不可欠だということを再確認する姿勢を示せば、世界は平和に近づく形で統治されるかもしれない。

この憂鬱な季節の中で、それが望み得る最善の道だ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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 4月21日、世界を支配するのは誰か──。西側の政治家や政策担当者のあいだで、この話題が登場する頻度がますます増えている。そしてその内容は、月を追うごとに暗いものになっている。写真は17日、ストラスブールでの欧州議会で演説するフランスのマクロン大統領(2018年 ロイター/Vincent Kessler)

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