[14日] - 米ニューヨーク州で襲撃され重傷を負った英作家、サルマン・ラシュディ氏は、当初装着していた人工呼吸器が外され、会話できる状態にまで回復した。同氏の代理人と家族が14日に明らかにした。
イスラム教預言者・ムハンマドを題材にした小説「悪魔の詩」で知られるラシュディ氏は、12日にニューヨーク州で開かれたイベント参加中に襲われ、首や腹部を複数回刺された。
ラシュディ氏の代理人、アンドリュー・ワイリー氏は「人工呼吸器が外され、回復への道が始まった」と述べ、「負傷程度は深刻だが、彼の状態は正しい方向に向かっている」と説明した。
検察当局は殺人未遂などの疑いでニュージャージー州に住むヘイディ・マタール容疑者(24)を訴追。マタール被告は13日、裁判所に出廷し、無罪を主張した。
地元当局と連邦当局は、捜査に関する追加的な情報を発表していない。
NBCニューヨークは、マタール被告のソーシャルメディア・アカウントの調査で、イスラム教シーア派過激派とイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)に共感していることが分かったと伝えた。
ラシュディ氏は搬送された病院で手術を受け、人工呼吸器を装着した状態で12日夕方の段階で話すことはできなかった。腕の神経や肝臓を損傷し、片目を失明する恐れがあるとされていた。
ラシュディ氏襲撃の報に世界の作家や政治家から、言論の自由への攻撃と非難の声が上がった。バイデン米大統領は13日に声明で、ラシュディ氏と同氏の作品が体現する「普遍的な理想」を称賛し「真実。勇気。レジリエンス(回復力)。恐れずに考えを共有する能力。これらは、自由で開かれた社会の構成要素である」と述べた。
<イラン強硬派メディアが称賛>
ラシュディ氏の著作「悪魔の詩」を巡っては、イランが激しく反発し最高指導者だった故ホメイニ師が1989年にファトワ(宗教上の命令)でイスラム教徒に同氏および出版に関わった者の殺害を指示した。91年にはこの作品を翻訳した筑波大学の五十嵐一助教授(当時)が刺殺された。
今回の襲撃について、イラン政府の公式な反応は出ていないが、強硬派メディアは被告を称賛している。
NBCニューヨークによると、マタール被告は西部カリフォルニア州で生まれ、最近ニュージャージー州に引っ越し、同州の偽の運転免許証を所持していた。
被告の両親はレバノン出身。レバノン南部ヤルーンの首長は、被告の父親がヤルーン出身だと述べたが、彼らの政治思想に関する情報はないと述べた。
ヒズボラ関係者は13日にロイターに対し、ラシュディ氏襲撃について追加の情報を持っていないと述べた。
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