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ロイター企業調査:経済対策の効果は限定的、日銀緩和拡大に懸念6割

[東京 22日 ロイター] - 8月ロイター企業調査によると、政府の経済対策について、効果は限定的との見方がほとんどで、消費喚起や潜在成長率底上げへの期待はそれほど高くなかった。将来不安解消と人口問題への真剣な取り組みが必要との声が目立つ。日銀に対しても、財政拡大路線と足並みを揃えた緩和強化を望む声は3割台にとどまった。

 8月22日、ロイター企業調査によると、政府の経済対策について、効果は限定的との見方がほとんどで、消費喚起や潜在成長率底上げへの期待はそれほど高くなかった。川崎市の京浜工業地帯で18日撮影(2015年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

目先のサプライズより経済の長期安定を優先し、現状維持ないし徐々に出口に向かうべきとの意見が6割超を占めた。

この調査はロイター短観と同じ期間・対象企業で実施。資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に8月1日─16日に実施。調査対象企業は400社で、うち回答社数は265社程度。

<経済対策、消費喚起は過半数が期待せず>

政府の経済対策が足元の景気に効果があるか聞いたところ、「かなりある」との回答は3%にとどまった。「少しはある」が63%。「あまりない」が31%、「全くない」も3%となった。事業規模28兆円、財政支出7.5兆円の対策となるが、期待は限定的だった。

 

特に低迷が続く消費の喚起につながる期待が「かなりある」との回答はゼロとなり、「少しはある」も43%。「あまりない」の49%と、「全くない」の8%を合わせると、過半数が期待はもてないとみている。「将来不安が消費を抑えており、短期的な財政出動効果は乏しい」(機械)とみられる。

0%台前半とされる低い潜在成長率の底上げにつながるとの見方も半数に届かなった。底上げへ効果は「かなりある」が2%、「少しはある」が45%、「あまりない」が45%、「全くない」が8%となった。

企業の多くは、特に人口減少問題への取り組みが十分でないことが期待の低さにつながっていると指摘する。「本質的な問題は生産人口の減少に由来する。30年後の効果であるとしても出生率2.0に近づける政策をとらない限り、成長は持続しない」(電機)との懸念がある。

対策の目玉となったリニア新幹線への財政投融資資金の大規模投入は、経済成長を押し上げるとの期待が65%と過半数を占めた。ただそのうち「大いに期待できる」はわずか5%。融資規模は3兆円にのぼるが、東京ー大阪間の開業が8年前倒しされても実現は2037年と先の話となる。

 

企業からは「インフラ整備や輸出への支援に最大の財政措置が取られるなど、(政府の)意志と金の集中が従前より感じられる」(卸売)と評価する声がある一方で、「人口減少時代に巨額のインフラ投資はナンセンス」(機械)との指摘もある。

他方、財政支出については、インフラ投資よりも、これからの時代を見据えたIoT(インターネット・オブ・シングス)やAI(人工知能)の活用に向けた支援を拡大すべきとの回答が63%。残り37%は「あまり必要ない」と回答している。「IotやAIなど将来性ある事業を各企業が取り入れることができる施策を実施すべき」(化学)との声や、ネットワークインフラの普及などに政府が本腰を入れるべきとの指摘もあった。

<緩和強化望む企業もヘリマネ警戒、過剰なマネー供給に危うさ>

日銀は9月にこれまでの異次元緩和の「総括検証」を行うと発表しており、今後の金融政策のあるべき姿を聞いた。

企業からは「政府と足並みを揃えて緩和強化すべき」との意見が37%だったのに対し、「今程度でふみとどまり現状維持とすべき」が35%、「緩和姿勢を徐々に弱め出口に向かうべき」が27%を占めた。これ以上の金融緩和拡大は経済を不安定化させるとの懸念が大きいことが背景。

 

「緩和強化」を求める企業は「円高対策を考えてほしい」(鉄鋼)との要望が強いが、「ヘリコプターマネー政策だけは避けるべき」(一般機械)と釘を刺す声もある。

「現状維持」を求める企業は「企業の投資意欲がないため、危険」(輸送用機器)など、資金需要がない中での過剰なマネー供給に危うさも感じている。

「緩和を縮小すべき」との企業からも、「現役世代は賃金上昇が起こらないのでインフレ期待を持たない。年金世代は蓄えを目減りさせるインフレを望んでいない」(サービス)として、誰も物価上昇を望んでいないと指摘。

「不動産市場は異様な状況。経験値では推し量れない価格に上昇しているので怖い。相続対策の賃貸住宅建設で供給ばかり増えている」(不動産)など、行き場のなくなった資金が過剰な投資を生んでいることへの懸念も出始めている。

中川泉 梶本哲史  編集:石田仁志

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