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コラム

コラム:コロナ後も、都市の交通と生活パターンは変わらない

[ロンドン 22日 ロイター] - 新型コロナウイルスは、過去に起きた疫病のパンデミック(大流行)と同じく、極めて生産性が高くて都市化され、相互につながり、ますます繁栄する世界が持つ、負の側面といえる。だが、都市化の流れはこれまで、決して途切れることはなかった。公害や病気、生計費の高さといったあらゆる問題を生み出しながらもだ。

5月22日、新型コロナウイルスは、過去に起きた疫病のパンデミック(大流行)と同じく、極めて生産性が高くて都市化され、相互につながり、ますます繁栄する世界が持つ、負の側面といえる。都内で2月撮影(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

今や一部の評論家は、新型コロナとロックダウン(都市封鎖)が、都市の交通や生活のパターンを根本的に変えてしまうかどうか、頭を悩ませ始めている。

一体全体、大都市の人口は減少するのか、公共交通システムは基本構造から作り直されるのか、サプライチェーンはより近い存在になるのか、娯楽としての海外旅行は下火になるのか──。

質問の答えは、ほぼ「ノー」だ。都市と交通システムを形作るのは社会的・経済的な影響力であり、それらは大抵、パンデミック以前の状況に戻そうとする力になる。

チェスの世界王者、ゲーリー・カスパロフ氏は「危機は通常、社会や技術における現実のトレンドを加速させる。トレンドを創造したり、否定したりすることはない。革命的な変化を期待してはならず、テレワークがさらに進んでも、グローバリズムが何か別の領域に入ってはいかないだろう」と予言する。

<ペスト>

新型コロナは、ペストやインフルエンザ、各種感染症のように、人々や貨物の移動に伴って可能な限り遠く、急速に広がる社会的な病気だ。

「中世では、船による移動が最も効率的も速くモノを輸送する手段で、同時に病気を離れた場所に伝播させる役割も果たした」とノルウェーの歴史学者オレ・ベネディクトウ氏は記した。

2004年の論文「ペスト(黒死病)1346-1353」で同氏が指摘したところによると、ペストは最初、地中海や欧州の西側の海に面した地域で、港湾から都市、商業拠点に入り込み、あるいは大河川を通じて定着していった。それから地方の市街地に広がり、さらに馬や馬車に乗った人や、荷馬を通じて田舎にも伝播、最終的に欧州全体を覆い尽くした。

現代の、大規模で人口が密集し、大量輸送機関があって国際的なつながりが深く、仕事や遊び、旅行などで最も集約的な対面の人口集団が作られる都市というのは、病気の伝染にとってはこの上ない環境であることが分かっている。

21世紀に船は旅客機に、馬と馬車は大量輸送機関と自家用車に入れ替わっているとはいえ、新型コロナはペストと同様に交通システムを通じて、企業取引や会議、家族の集まり、休暇などの機会をとらえて感染が拡大している。

1918年のインフルエンザ(スペイン風邪)ではアフリカの一部、中世のペストではアイスランドはそれぞれ感染被害を免れており、新型コロナについても人口が希薄で他地域とのつながりが乏しく、個人的な移動手段が中心の場所は、最悪の被害は避けられるかもしれない。

<不衛生な都市>

大きな都市はしばしば、中小都市や農村部よりもずっと高い1人当たりの経済生産と、それに伴う所得・資産を得ることが可能だった。

こうした際立った生産性と所得収入に魅せられ、国内外から移民が押し寄せてきたのだが、彼らが暮らす場所は常に不衛生だ。

中世後期から近代初めのロンドンは不潔さと病気の巣窟で、人々の余命はイングランドの他の地域に比べてずっと短くなり、死亡率が高かった。それでもより健康的な農村部からロンドンへの労働者の流入が続いたおかげで、出生者数より死者数が多くても、ロンドンは成長軌道を維持した。

近代初めのロンドンは特異な例だったとしても、もっと最近ではロサンゼルスや上海、北京、ニューデリーなどが大気汚染に見舞われながら発展を遂げた。人口伸び率と所得増加の観点から成功した大規模な国際都市は、多くの住民が、いずれは都市から出て行くかもしれないが、少なくとも一時的には都市生活のマイナス要素を許容するつもりであることが証明されている。

<非常に高い代償>

研究者らはコロナ危機の発生前から、ロンドンの過密さと地下鉄網が季節性インフルエンザの主な感染経路になると突き止めていた。

コロナに関しても、人であふれかえる地下鉄やバスが、初期の急速な感染拡大をもたらした公算が大きい。

政策担当者は、この経路を遮断する目的で、ロックダウンや企業の休業、航空会社の運航制限、娯楽の規制、交通システム使用の制限といった手段でソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保しようと努めている。これによって確かに感染率は下がり、新規感染者数や死者は減ったものの、都市とその経済活動はほぼ停止してしまった。

そこで今、ロンドンをはじめ大都市が直面しているのが、厳格なソーシャルディスタンスを守り、感染を抑えながら、どうやって経済活動と国際的な人の移動を再開させるかという課題だ。

厄介なのは、鉄道や旅客機、飲食店の利用制限などでソーシャルディスタンスを強化する政策を実施すれば、これらのシステムが資金面で存続する上で不可欠な稼働率が損なわれてしまう点だ。

鉄道、バス、航空会社、飲食店、病院、学校、店舗、オフィスは全て、稼働率が高いゆえに手頃な価格で利用ができる。その稼働率が突然下がってしまうと、多くのケースで資金モデルが立ちゆかなくなるので、ソーシャルディスタンスを厳しく守ろうとする取り組みは、中長期的に維持できそうにない。

<慣性>

人口が密集する都市と混雑する交通システムは、価格面の利便性やエネルギー使用、空間を巡る計画に関し、複雑で相互に絡み合う選択肢と矛盾、制約を具現化している。

旅客機の座席の間隔を広げることは可能だが、それによって運賃は高くなり、利用しにくくなる。鉄道の混雑も同様だ。

さりながら都市の経済と交通システムは、コロナのような非常に大きなショックに見舞われても、変化に抵抗する「慣性」を備えている。

生活や公共交通システム、国際便の一部が変わったとしても、ほとんどの側面は以前と同じ状態を保つ公算が大きい。

当初のショックが収まれば、都市や交通システムの形成にかかわる社会と経済を動かす基本的な力が、再び幅をきかせることになるだろう。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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