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焦点:光熱費が欧州の家計直撃、シャワーは職場で食事は1回

[ロンドン 26日 ロイター] - 欧州では人々がアイロンがけをやめ、オーブンを使うのを制限し、帰宅前に職場でシャワーを浴びるなど、必死で家庭内の省エネに努めている。それでも光熱費の負担は増大する一方だ。

 8月26日、欧州では人々がアイロンがけをやめ、オーブンを使うのを制限し、帰宅前に職場でシャワーを浴びるなど、必死で家庭内の省エネに努めている。写真は2012年11月撮影(2022年 ロイター/Nigel Roddis)

天然ガスと電力の卸売り価格が高騰するとともに、欧州では何百万人もの所得に占めるエネルギー支出の比率が過去最大に達していることが各種データで分かる。

英イングランド地方東部グリムズビーに住むフィリップ・キートリーさんの場合、英国が記録的猛暑に襲われたこの夏も、扇風機の電源を入れなかった。銀行口座の残高を見て、電気代が払えないと知っていたからだ。「生活費は増えたが、収入は(エネルギー)危機前の金額しか期待できず、私は食費と光熱費のどちらか1つしか確保できない」と窮状を語る。

欧州大陸諸国でも事情は変わらない。ロシアのウクライナ侵攻と西側による対ロシア制裁、さらに「ポストコロナ」の需要拡大が加わってガス、電力、燃料の価格が高騰しているため、市民は自発的な省エネ活動に勤しんでいる。

欧州ガス価格の指標となるオランダTTFは過去12カ月で550%も上昇。英ガス電力市場監督局(Ofgem)は26日、家庭の電気・ガス料金が10月から80%引き上げられ、標準世帯で年3549ポンド(4188ドル)になると表明した。

こうした中で欧州各国政府は急いで家計支援策を打ち出したものの、データを見る限り大きな効果は得られていない。

環境問題を扱う専門情報サイトのカーボン・ブリーフが政府統計に基づいて計算したところでは、英国民はこの冬、世帯収入の平均10%をエネルギー(ガス、電力、暖房油、ガソリン、軽油など)に支出する見通しだ。

この点では現在のエネルギー危機は、1970年代と80年代に経験した石油ショックよりも深刻と言える。西側では産油国の禁輸措置や1979年のイラン・イスラム革命で停電が発生し、ガソリンスタンドには長蛇の列が発生。ところが当時危機がピークを迎えた1982年でも英国で世帯収入に占めるエネルギー支出は9.3%だった。

英慈善団体ナショナル・エナジー・アクション(NEA)は、電気・ガス料金の上限が跳ね上がる10月以降にエネルギー面で貧困に陥る家庭は、昨年10月の450万世帯から890万世帯に増加しかねないとみている。

NEAなどの慈善団体の定義では、低所得層が収入のうち10%以上をエネルギー支出に回す必要が出てくると、「エネルギーの貧困」とされる。NEAの政策・意見ディレクター、ピーター・スミス氏は「われわれが目にしているエネルギー料金の上がり方は全く過去に例がない。低所得家庭の収入に占めるエネルギー支出が不相応に高まる歴史的傾向も引き続き見られる」と指摘した。

<過去の危機より値上がり>

キートリーさんは4月に失業し、現在は毎月600ポンドの生活保護で暮らす。その半分は家賃の支払いに充て、残りで生活必需品をかろうじて賄っている。

今は食事も1日1回しか取らず、エネルギー消費を最低限に抑えているにもかかわらず、収入に占めるエネルギー支出は15%を超える。

フィナンシャル・フェアネス・トラストが行った調査によると、英国の3分の1の家庭は調理家電やオーブンの使用、またシャワーを浴びる回数を減らしている。この調査にかかわったブリストル大学のシニアリサーチ・アソシエート、ジェイミー・エバンス氏は「人々はエネルギー費用圧縮のため多大な努力をしているが費用は上がり続けている。だからこそわれわれは政府に追加的な対応を求めたい」と訴えた。

イングランド地方の南東部に住むドーン・ホワイトさん(59)は腎不全を抱えており、このまま光熱費の上昇が止まらなければ命をつなぐための治療費が払えなくなると不安を募らせている。ロイターに「1週間に5回、20時間の(人工透析)機器がなくなれば、私は生きていられない」と打ち明けた。

国際エネルギー機関(IEA)の指数によると、ほとんどの欧州先進国の家庭に適用されるガス価格は今年初め、1970年代や80年代、2000年代に起きた過去のエネルギー危機のピーク時を超えた。

欧州は他の先進地域に比べても負担が重い。今年第1・四半期末までの段階では、経済協力開発機構(OECD)のガス指数はまだ過去の危機のピークに達していなかった。

IEAのデータを1978年までさかのぼると、過去40年の平均的な天然ガス価格は確かに米国家庭向けの方が高い。しかし欧州家庭向け価格は今年になって米国家庭向けを上回った。

<独伊が最も痛手>

欧州連合(EU)加盟国の中で、ガス価格高騰で最も痛手を被っているのはイタリアとドイツの家庭であることを、IEAのデータは示している。

イタリアの平均的家庭のエネルギー支出(主にガスと電気)が世帯支出に占める比率は今年7月、2019年の3.5%から5%に上昇した。OECDのデータによると、この7月の水準は1995年以降で一番高い。

価格ポータルのチェック24が集めたデータからは、ドイツ家庭の7月のエネルギー費用も、昨年に比べて2倍以上に膨らんだことが見て取れる。ミッドテラス住戸に住む家庭に適用される暖房油の5月分価格は前年比78%上がった。

フランクフルト北東のニッダに暮らすエルカン・エルデンさん(58)は、自身が働くミネラルウオーター工場で「仕事終わりにシャワーを浴び、ひげをそる毎日だ」と話した。

(Bozorgmehr Sharafedin記者、Canan Sevgili記者)

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