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アングル:バイデン政権悩ます高失業率と物価上昇、カーター政権との比較

[ワシントン 16日 ロイター] - 高い失業率と物価上昇、そこに加えてガソリンスタンドの行列――。これは1970年代の米国社会を覚えている一定以上の年齢層にとって、実に忌まわしい記憶だ。これはバイデン政権をも一時的に悩ませる可能性が高い。新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした未曽有の景気後退からの米経済の立ち直りが今、幾つかの障害物の「こぶ」にぶつかっているところでもあるからだ。

 5月16日、高い失業率と物価上昇、そこに加えてガソリンスタンドの行列――。これは1970年代の米国社会を覚えている一定以上の年齢層にとって、実に忌まわしい記憶だ。ホワイトハウスで13日撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

こうしたことに揺さぶられて消費者信頼感は冷や水を浴びせられ、インフレ懸念は強められ、さらには野党・共和党がバイデン大統領と同氏の提案する数兆ドル規模の景気対策案を攻撃する根拠となっている。

4月の失業率は悪化し、物価も跳ね上がった。70年代に実際に証明されたように、こうした状況が政治的に利用されておかしくない。当時も野党だった共和党は失業率と消費者物価上昇率を足し合わせた「悲惨指数」を用い、カーター政権に集中砲火を浴びせた。大統領就任後に75%の支持率を誇ったカーター氏が、80年の選挙で大敗する事態を招いた。

もっともバイデン氏の支持率はまだ強固で、米国株もなお最高値近辺で推移している。

大統領経済諮問委員会(CEA)のラウズ委員長は14日、ホワイトハウスで記者団に、「経済の痛手がすぐには消えないことをわれわれは常に頭に入れておかなければならない。コロナウイルスワクチンを通じて国民が完全な免疫を得るにはあと幾週もかかるだろうし、パンデミックに伴う失業者らが適職を見つけ、働きだすにはもっと時間がかかる」とくぎを刺した。

一方でラウズ氏は、パンデミックとその後の経済再開に起因する需給のミスマッチが物価を押し上げているとはいえ、ミスマッチは一時的なことがやがて分かるはずだとも指摘した。

連邦準備理事会(FRB)も、夏にかけて雇用拡大が加速し、国民が再び旅行を始め、その上でなお大規模緩和が継続されていても、足元の物価高騰は自然に勢いが弱まるとみている。

ホワイトハウスは、米経済がいつ安定するかの見通しを明示していないが、4月ほどの低調な雇用データが再び出てくることはないとの見方を示している。ある政府高官は12日、ロイターに「経済は前向きの流れが続いている」と語り、FRBにはこの先の事態に対処できる能力と手段があるとホワイトハウスは信じているとも述べた。

<前途には多くの混乱>

しかし前途にはより多くの混乱が待ち受けている。

共和党はこれまで機会があるたびに、富裕層と企業への課税強化を盛り込んだバイデン氏の経済対策案の土台に揺さぶりをかけてきている。同党のマッカーシー下院院内総務は今回も「増税に賛成する共和党議員は決して見つからない。現在の経済状況において増税は最悪の措置だと思う」と記者団に言い放った上で、インフレ懸念とガソリン価格の高騰を理由に挙げた。

米商工会議所は、バイデン政権が選挙公約の柱としていた失業保険の上乗せ給付措置の期限通りの打ち切りを要求している。

半面、米国の失業者数はパンデミック発生前に比べてまだ750万人ほど多い状況だけに、雇用の伸びがあと1カ月か2カ月予想より弱いままで、なおかつ物価上昇が続けば、バイデン氏とFRBにかかる重圧は増すことになる。

オックスフォード・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、もう1回、雇用者数が4月のような少なさになれば、懸念すべきことになると指摘する。これまでの関連データは、5月の雇用者数がまた弱くなる可能性も示唆している。

ダコ氏によると、労働者が就職しない理由は根強い感染への不安や、子育て支援がないこと、失業保険給付の上乗せ措置などさまざまに挙げられているが、それがなんであっても、労働市場の「著しい供給制約」が存在することを意味する。そこから浮上するのはどのように人々を仕事に戻すかという問題であり、単に景気を刺激するのとは異なるという。

バイデン政権や労働者、労働者の権利推進団体、一部エコノミストらは、企業が採用難に見舞われるなら賃金を上げるべきだと訴えている。マクドナルドなど、そうした提言に従ったケースもあるのは確かだ。

それでも複数のFRB高官は、雇用改善は一筋縄でいくものではないと認める。リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は「労働市場(の目詰まり)をいかなる方法で解消するかが重要になる」と述べ、解消に時間がかかりすぎれば今年の経済成長の足を引っ張りかねないと警告した。

<物価上昇の火種>

バイデン政権にとっては、労働市場の円滑な流れを取り戻すという課題と別に、米国の経済活動再開に伴う物価上昇の行き過ぎを抑える仕事も控えている。

5月前半の消費者信頼感指数は、物価上昇懸念が響いて大幅に低下。今後1年と5年の予想物価は、過去10年余りで最も高い。

半導体不足はバイデン氏就任前に始まっていたものだが、引き続き自動車の販売価格を押し上げている。これはパンデミック後に公共交通機関利用を避けるようになった国民が自動車を買い求める動きも一因だ。住宅建設業者は、木材価格高騰が住宅市場と経済全体を脅かしていると主張。米国建設業協会(AGCA)のチーフエコノミスト、ケン・シモンソン氏によると、昨年4月から今年4月まで建材価格は19.7%も上がり、データ開始からの35年で最大の上昇率になった。

<パンデミック後>

足元で見られたガソリンスタンドの行列は、石油製品パイプライン大手へのサイバー攻撃という一時的現象が引き起こしたもので、地政学的要因によるショックが続いた70年代とは話が異なる。当時の方が物価上昇率はずっと今より高く、物価と賃金は上がり続けるものだという見方も米国全体を覆っていた。これも今との重大な違いだ。FRBはそうした状況は再燃させないと固く誓っている。

カーター政権時代は実際には毎月平均で雇用が21万5000人増加していたにもかかわらず、失業率が上昇し続けた。人口動態のトレンドの変化に加え、初めて働きに出る女性が増え、労働力人口の新規参入が非常に多くなったことがあった。

バイデン氏が直面しているのは当時と全く様相の異なる労働市場だ。今の労働市場で労働者の行動を制約し、不安を抱えさせ、あるいは貯蓄や失業保険で当座暮らしをさせているのはパンデミックだ。ただ、だからと言って、バイデン氏のこれからの仕事の方がカーター政権時代よりもたやすいということでは全くない。

(Howard Schneider 記者、Jarrett Renshaw記者)

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