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コラム

コラム:「ガス代金はルーブルで」、プーチン氏の真の狙いは

[ロンドン 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ロシアのプーチン大統領は、欧州各国の指導者を「釣ろう」としている。プーチン氏は1週間前、ロシア産天然ガスの代金はユーロでなくルーブルで支払わなければならないと主張した。

 3月31日、ロシアのプーチン大統領は、欧州各国の指導者を「釣ろう」としている。写真は31日、モスクワ近郊の公邸から会議に参加するプーチン氏。クレムリン提供(2022年 ロイター)

だが、31日に公表した新たな大統領令で打ち出された仕組みでは、買い手がルーブル決済を免れることが可能に見える。もっとも、ある種の「エイプリルフール」としか思えないこの動きにも、最終的には何らかの意味があるのかもしれない。

プーチン氏が仕掛けた手は、非常に大きな経済的ダメージを欧州各国にもたらす恐れがあった。ユニパーやENI(エニ)といった欧州の天然ガス大口購入者が市場でルーブルを確保できなければ、欧州連合(EU)が必要としている天然ガスの3割超を供給するロシアが、パイプラインを止めてしまってもおかしくなかったからだ。

その不安に現実味があったからこそ、ドイツはガス供給が脅かされている際に出す「早期警報」の第1段階を初めて発令した。

ところが、実際には商売の面からの冷静な打算が勝つのかもしれない。31日にプーチン氏が署名した命令によると、西側のガス輸入業者はユーロで代金を支払い、国営天然ガス企業・ガスプロム傘下のガスプロムバンクの特別外貨口座に入金することができる。

そして、ガスプロムバンクが責任をもってユーロをルーブルに両替するのだ。その最も大きな目に見える影響は、ロシアのガス輸出業者が、収入の「80%」ではなく全額をルーブルに交換しなければならない点にある。これはどちらかと言えば、相場が低迷するルーブルの支えになり得る。

こんな「子どもだまし」は誰にとっても時間の無駄に思われる。だが、よく考えてみると、プーチン氏は強硬姿勢のポーズを取ることが可能で、ウクライナ侵攻でつまずいている同氏にとって悪い話ではない。

一方で、ガスは供給され続ける。バイデン米大統領が戦略石油備蓄の追加放出を表明したことも加わり、エネルギー市場が少なくともある程度安心できる材料は提供されている。

プーチン氏がこうした行動に出た裏には、実はもう1つ隠れた動機があったのもしれない。ガスプロムが取り交わしている契約に基づくと、欧州の輸入業者は約定価格よりもスポット価格の方が安い場合、20%を別の相手から調達することが認められている。

先週には、この価格差が大きくなり、ロシア側は本来の8割の代金しか受け取れず、ウクライナでの戦争資金調達に支障をきたしかねない事態が出現した。

しかし、プーチン氏が「ルーブルで払え」と叫び続けた結果、欧州の期近物ガス価格が1メガワット時当たり100ユーロから120ユーロ超まで跳ね上がり、約定価格との差が解消された。プーチン氏の本当の目的がそこにあったのなら、このエイプリルフール的動きからうかがえる見かけよりも、さえた頭脳の持ち主なのではないだろうか。

●背景となるニュース

*ロシアのプーチン大統領は、4月1日から天然ガスを購入する外国にルーブルでの代金支払いを要求しており、できなければ供給を止めるとしている。

*プーチン氏は31日、ロシア産ガスの買い手が「ロシアの銀行にルーブル建て口座を開設しなければならない」と語り、4月1日以降の供給分からこの口座を通じて決済が行われると説明。「そうした支払いがなされない場合、われわれは買い手側の契約不履行とみなし、あらゆる事態が起きるだろう。誰もわれわれにただでモノを売ってくれないし、われわれも慈善事業はやらない。つまり既存契約は打ち切りになる」という。

*プーチン氏が署名したこの命令により、ガスプロムバンクの特別外貨とルーブルの口座を通じて決済される仕組みが生まれる。外貨はモスクワ取引所の通貨オークションを経てルーブルに転換される。

*バイデン米大統領は、ガソリン価格抑制のために戦略石油備蓄を向こう6カ月間に1日当たり100万バレル放出する。ホワイトハウスが31日発表した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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