May 28, 2014 / 2:57 AM / 6 years ago

インタビュー:金融不均衡みられず、銀行は収益力強化を=日銀機構局長

[東京 27日 ロイター] - 日銀の衛藤公洋・金融機構局長は27日、ロイターのインタビューに応じ、昨年4月の量的・質的金融緩和(QQE)の導入から1年余りが経過したが、現段階で日本の金融システムに大きな歪みや不均衡は生じていないとの認識を示した。

 5月27日、日銀の衛藤公洋・金融機構局長は、昨年4月の量的・質的金融緩和(QQE)の導入から1年余りが経過したが、現段階で日本の金融システムに大きな歪みや不均衡は生じていないとの認識を示した(2014年 ロイター/Toru Hanai)

地域金融機関を中心に金融機関が大量の国債を保有する中、景気回復を伴わずに長期金利が上昇すれば「金融機関経営に厳しい影響が及ぶ」と金利リスク管理の徹底を促したが、その場合でも「自己資本比率が全体として規制水準を下回ることにはならない」と語った。

金融機関の経営課題については、利ザヤ縮小が続く中で「中期的にみると基礎的な収益力の低下が課題」と指摘。収益力がぜい弱な状況下で外生的なショックが発生した場合は「自己資本の毀損につながる可能性がある」と懸念を示し、金融機関に対して収益力改善への取り組みを求めた。

また、QQE推進などで実現している低金利環境は「金融機関にとっては収益的に厳しい」としながらも、「企業からみると調達コストの低下というかたちで支えになっているのも事実」と指摘。まずは「企業部門を元気にしていくことが大事」と述べ、企業活動の活発化による力強い景気回復の実現が優先課題との認識を示した。

人口減少など地域経済の縮小が懸念される中での地域金融機関の経営戦略について「経営統合は有力な選択肢」としたが、「それぞれの地域経済にどう貢献していくのか。具体的な方法論や戦略を伴うものであることが重要」との見解を示した。

インタビューの概要は以下の通り。

  ──QQE導入から1年経過し、金融面で過熱リスクなどの兆候はないか。

  「現状、日本の金融システムに大きな歪みや不均衡があるとはみていない。株価や地価はひところより上昇しているが、予想や期待が経済実態から大きくかけ離れて強気化しているとは見ていない」   ──実体経済面では人手不足など需給がタイト化している。金融面への影響は。

  「現時点で金融面に影響は出ていないが、賃金上昇など経済活動が活発になってくると、それに伴って資金需要が出てくる。金融面にも変化が出てくる可能性あるので、よく見て行きたい」   ──ポートフォリオ・リバランス効果について、目立った変化が出ていないとの見方がある。

  「デフレが15年続き、いろいろな経済主体の行動にも染みつき、金融機関のバランスシートにも根深くその影響が蓄積されてきている部分がある。量的・質的金融緩和の導入以降、デフレを前提としたポートフォリオ戦略を見直そうという金融機関が増えてきており、円債への投資ははっきり減少に転じた」

「代わりに金融機関は、貸し出しを通じたリスクと有価証券投資を通じた市場リスクをとろうとしている」

  「目立った変化に乏しいというのは、国内貸出の伸びが2%台であるとか、機関投資家や家計部門など金融機関以外の資産構成の変化がそれほど大きくないことに注目したものだと思う」

「しかし、金融機関はポートフォリオ戦略を見直そうと動いており、そのことが経済や企業活動の活発化に貢献し始めている。こうした動きが続けばリバランスももっと広がりが出ると思う」  ──それでも地域金融機関を中心に国債の保有量は引き続き高い。長期金利が上昇した場合、経営への影響は避けられないのではないか。

  「金融機関の資本基盤は相応にしっかりしており、全体として金利上昇に対して強い耐性を備えている。金利の上昇が景気の好転に伴うものであれば、貸出自体も増え、銀行が持っている株式の価格も上がり、不良債権の処理費用も減っていく。全体としては債券価値の下落を補って余りあるプラスの効果があると思う」

  「仮に景気が改善していない中で金利が上昇すると、貸し出し残高や株価、不良債権処理などが逆方向に働き、金融機関経営に厳しい影響が及ぶ。そのような厳しい情勢でも自己資本比率が全体として規制水準を下回ることにはならないとみている。金利がどのような事情で上がったとしても、金融システムは相応に耐えられるというのが結論だ」  ──QQEの出口が意識される局面になれば、金融機関の国債売却で金利が急上昇する懸念はないか。

「金融機関は、すでに物価や金融政策の先行きを予想しながら、金利リスクの調整を進めている。確かに参加者による一律のリスク削減が相場を増幅してしまうメカニズムを市場は持っている。金融機関は過去のVaRショックなどの経験も踏まえ、自らリスク管理をやっていくことが求められる」   ──QQEによる名目金利押し下げが利ザヤ縮小など金融機関経営に悪影響を与えている面があるのではないか。

「短期金利がほぼゼロで、イールドカーブもフラット化している状況は、金融機関にとって収益を上げにくい環境にあることは事実。デフレが長期に渡って続いてきた中で、金融機関の利ザヤも趨勢的に低下し続けているのが実態だ」

「こうした低金利環境は、金融機関にとっては収益的に厳しいが、企業からみると調達コストの低下というかたちで支えになっているのも事実」

  「昨今の物価上昇期待の高まりで実質金利も低下しており、需要を刺激する効果も出ている。まず、こうしたかたちで企業部門を元気にしていくことが大事。企業部門の改善が、すでに信用コストの減少や株価の上昇というかたちで金融機関の収益にもプラスの影響を及ぼしている」

「今後、景気回復がより力強くなっていけば、貸出が増えて利ザヤも改善していくことが期待される」  ──2月に成長基盤と貸出増加の2つの貸出支援制度を拡充したが、需要の見通しは。

  「金融機関は拡充部分も積極的に活用して資金の需要を掘り起こそうとしていることは間違いない。今回の見直しで4年固定で年0.1%と低利で資金を調達できることになり、これを貸出のベースレートにできるメリットは小さくない。これまでの制度より拡充されており、より利用が進むことを期待している」   ──貸出増加支援で供給した資金によってリスク資産投資がさらに活発化する期待は。

  「貸出増加分の2倍を貸し出す制度にしたので、それを利用して金融機関が株式や外債などを含め、いろいろなリスクをとる方向で動いてもらうことは期待している」  ──金融機関の決算は好調だが、本業は不振が続いている。今後の経営課題について。

  「今のところ日本の金融機関全体としては、さまざまなリスクを十分にカバーできる資本基盤を持っており、差し迫った大きな問題はないと思う。しかし、中期的にみると基礎的な収益力の低下が課題だ。収益力が低いと金融・経済に大きな外生的なショックが起きた場合、自己資本の毀損につながる可能性があり、改善していく必要がある」

  「大手行の場合は、国際業務の拡大やグループ戦略など収益源が多様化しているが、それに比べると地域金融機関はより厳しい。収益力の向上に即効薬はない。成長事業の発掘や、不振企業の経営支援などの取り組みを通じて景気が回復し、成果に結びついていくことが期待される」   ──人口減少など地域経済の縮小が避けられない中で、地域銀行は経営統合など再編が避けられないとの見方がある。

  「地域金融機関は、地域の実情を熟知している存在。成長力の低いところから、成長が望める分野に産業構造を変えていく力を持っている。人口減少という逆風は決して小さくないが、そうした中でも地域の活力を引き出すという意味で、地域金融機関が担える役割は非常に大きい」

「大事なのは、それぞれの金融機関が、それぞれの地域経済にどう貢献していくかという、経営や業務の方向性を自分で見つけていくことだ。その上で業務の規模に見合ったコスト構造をつくっていくことが大事だと思う」

  「経営統合は有力な選択肢だが、地域の中でそれぞれの金融機関がどのような役割を果たしていきたいのか、具体的な方法論や戦略を伴うものであることが重要だ。日銀としても、地域の金融機関と経営方針について対話していくことができると思う」   ──大手行を中心に海外業務を積極化させているが、リスクとのバランスをどうみるか。

    「海外の投融資には国内とは異なるさまざまなリスクが伴っている。将来に渡って日本経済や企業のグローバル化を支えていくには、リスク管理体制を整えていく必要がある。日銀としても、金融機関の海外における業務展開をフォローし、流動性リスク・与信リスクなど適切なリスク管理を促すことで、金融機関の海外展開を支援していきたい」

*写真を差し替えて再送します。

伊藤純夫 竹本能文 木原麗花 編集:田巻一彦

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