May 25, 2019 / 12:05 AM / 6 months ago

コラム:中国は「レアアース銃」の引き金を引くか

[ロンドン 23日 ロイター] - 米中通商紛争の激化で、中国が再びレアアース(希土類)という「銃」を使うつもりかどうかが議論の的になっている。

 5月23日、米中通商紛争の激化で、中国が再びレアアース(希土類)という「銃」を使うつもりかどうかが議論の的になっている。写真は2012年3月、江西省南城県の鉱山で撮影(2019年 ロイター)

中国の習近平国家主席は最近、江西省カン州を訪れ、共産党革命で歴史に名を刻んでいる都市とレアアース関連企業を視察したが、これには2重のメッセージを送る意図がありそうだ。

カン州の于都は、国民党軍に敗北した共産党軍が1934年から始めた「長征」の起点。習氏の視察は「厳しい戦いになるが、最後にはわれわれが勝つ」という国内向けのメッセージだ。

一方、レアアース関連の江西金力永磁科技の視察は米国に向けたもので、「華為技術(ファーウェイ)に制裁を科し、中国製品に追加関税をかけるなら、米国のハイテク技術を支えるレアアースを誰が供給しているか考えた方がよいのでは」という脅しだ。

習氏の視察でレアアースの価格と関連企業の株価は世界中で急上昇し、2つ目のメッセージの意味合いが浮き彫りになった。

<弾丸は装填済み>

「レアアース銃」は既に弾丸が装填済みだ。

中国はレアアース市場で世界のサプライチェーンを牛耳っている。米地質調査所よると、中国は昨年、採掘品のシェアが少なくとも71%に達し、処理済み化合物ではもっと高かった。

米国は2014─17年にレアアース輸入の80%を中国が占めたが、エストニア、フランス、日本という他の供給量大手3カ国も中国産の原料を利用している。

米カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山は昨年、レアアースの生産を再開したが、中国依存を抑える効果はほとんどない。しかも同鉱山の鉱石は処理のため中国に送られており、最近の貿易戦争によって中国から25%の追加関税を課されることになった。

<過去の戦争に学べ>

問題は習氏に引き金を引く勇気があるかどうかだ。中国は2010年にレアアースの輸出を禁止したときには墓穴を掘った。

中国は、統制の効かない国内のレアアース産業の管理強化が狙いと説明したが、諸外国は尖閣諸島を巡る紛争で日本に圧力を掛けるためだと受け取めた。

2010年のレアアース禁輸は3つの点で逆効果となった。

第1に、世界貿易機関(WTO)が中国の禁輸をルール違反と判断した。中国は国際貿易における自らの信頼性を喧伝しているだけに、新たにWTOの係争を抱えると政治的に厄介なことになる。

第2に、禁輸はレアアース価格の急騰を引き起こした。中国政府は国内でレアアース産業の管理を目指しているが、値上がりで違法生産を主体とする生産が急増し、しっぺ返しを受けた。その後、レアアースの価格は急落したが、違法生産は減らず、中国は業界の管理に手を焼いている。

第3に、中国が強硬な手段に訴えたことで中国産レアアースの需要が落ち込んだ。ホンダ(7267.T)やトヨタ自動車(7203.T)など日本の自動車メーカーは電気自動車用磁石で中国産レアアースの利用を抑える新技術を開発し、オーストラリアなど他国産の採用を増やした。アウディ(NSUG.DE)がSUV型電気自動車「eトロン」で磁石モーターではなく誘導モーターを採用するなど、エンドユーザーの反応は今も続いている。

<米国の備え>

こうした理由から、中国政府はレアアース銃でトランプ大統領を脅しても、実際に撃つことはないだろう。

ただ、前回の禁輸措置から状況が変わった面もある。トランプ政権は中国産レアアースを一切購入しないのが理想だという姿勢を明確にしつつある。レアアースは国内か少なくとも友好国のサプライチェーンへの投資が不可欠な「重要金属」のリストに真っ先に挙げられている。

2019年度は国防総省が敵対的と見なす中国、ロシア、イラン、北朝鮮から一部のレアアースを購入するのを禁止し、その一方で国防兵站局がレアアースの在庫を積み増している。

<危険な賭け>

しかし米国の民生産業は引き続き中国産レアアースの供給に頼っている。米国が中国産レアアースを追加関税の対象から除外したのはこのためだ。

米国はマウンテンパス鉱山を再開したほか、企業が米国内にレアアース加工施設を置くと発表するなど、中国依存を減らす動きが進んでいる。つまり中国の立場に立てば、レアアース銃の威力は時間がたつほど薄れる見通しで、まだ効力が大きいうちに使った方がよいことになる。

しかし実際にレアアース銃を撃ては政治やマーケットの面で中国が被る影響は2010年並みか、それよりも大きくなるだろう。習氏とトランプ氏のどちらにとっても危険な賭けだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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