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残業抑制で4━5兆円の所得減想定、3%賃上げで還元目指す=政府筋
2017年11月29日 / 08:26 / 13日前

残業抑制で4━5兆円の所得減想定、3%賃上げで還元目指す=政府筋

[東京 29日 ロイター] - 政府が重要政策として実行中の「働き方改革」によって、企業が雇用者に支払う残業代が年間4─5兆円減少すると政府が見積もっていることがわかった。複数の政府筋が明らかにした。このままでは、残業代を生活費に組み込んでいる子育て世代などの消費に大きな影響が出かねないため、政府は経済界に対し、一時的な手当ても含めたベースで3%の賃上げを要請し、減少する所得の還元を目指す。

 11月29日、政府が重要政策として実行中の「働き方改革」によって、企業が雇用者に支払う残業代が年間4─5兆円減少すると政府が見積もっていることがわかった。複数の政府筋が明らかにした。写真は9月に都内で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

ただ、労組側やマクロ経済の専門家らは、賃上げを手当て主体で実行すれば、雇用者が所得増が一時的にとどまる可能性を意識し、消費浮揚にはつながらないと指摘。賃上げは雇用者の消費性向拡大に効きやすい月例賃金の増加を軸に対応するべきだと主張している。

<残業規制の副作用、数兆円規模>

政府筋の1人は、ロイターの取材に対し「残業代カットの影響は、短期的におおむね5兆円程度とみている。企業は若い世代に対し、手当てでよいから還元してもらいたい」と述べた。

政府自身が推し進めている長時間労働の是正により、当初から懸念されていた残業代の削減という副作用の大きさについて、政府内で試算した規模を初めて示した。

5兆円は年間雇用者報酬の2%を占め、減少を放置すれば消費減退につながりかねない。

大和総研は今年夏、残業が年間720時間に規制されれば、雇用者全体で8.5兆円の減収との機械的試算を公表。今月に入り、短期的には年間4兆円程度の残業代減少になるとの試算も示した。

残業規制をオーバーしている社員に代わり、残業の少ない別の社員が業務を担当するケースが考えられ、マクロ的に所得減少幅が縮小するとの試算結果だ。

別の政府筋は「8.5兆円は過大だが、数兆円規模の所得が数年にわたり減少するとみている」との見通しを示す。すでに残業時間の削減は大手企業を中心に始まっており、安倍首相が産業界に呼びかけている3%の賃上げ目標は、残業規制による所得減に対応するためにも必要だと述べている。

<手当てやボーナス含めば3%賃上げも可能と楽観視>

特に30─40代の子育て世代では、2割弱が残業代を生活費の一部に組み込んでいるとの調査結果があり、 政府としては、固定費拡大につながらない「手当て」での支給を容認する方針。

また、月額賃金1万円増といった定額での賃上げを選択すれば、給与の低い若手ほど増額率が厚くなるため望ましいとの意見もある。

アベノミクス開始以降、定期昇給とベースアップを加えた賃上げ率は2%前後で推移しているが、政府内では、そこに手当てや定額での上乗せ分を加えれば「3%の賃上げ実現も、そう非現実的とも言えない」(先の政府筋)という楽観論も出ている。

これに対し経済界でも、政府の要請を深刻に受け止めている。経団連の榊原定征会長は時間外手当の大幅減少分を原資とした従業員への還元が必要だとして「消費性向の高い子育て世帯への重点配分ということも、労使で知恵を出して考えていくべき」(10月26日の経済諮問会議での発言)と述べている。

経団連は、政府の要請を踏まえ、春闘での対応方針を検討中だ。12月4日の正副会長会議で労使交渉の指針案を示し、来年1月に春闘の指針となる「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を決定する。

<一時的手当てでの還元に違和感>

ただ、労組側やマクロ経済の専門家からは、政府や経済界が「手当て」などでの補てんを議論の対象としていることに疑問の声が挙がっている。

連合総合労働局の冨田珠代局長は「残業規制に伴う働き方の工夫は、労使の知恵の出し合いによるもの。(労働時間の短縮が可能になったということは)生産性が向上したということであり、月例賃金引上げで還元すべきだ」と主張。手当てではなく月例賃金の引き上げで対応すべきと主張する。

日本総研理事の山田久氏の分析では、所得の増加分を消費に回す割合でみても、所定内給与なら9割に対し、一時的なボーナスなどでは4割程度にしかならない。連合では、これを踏まえて「一時的な手当てでは将来不安が消えない。持続的な賃上げで対応する方が経済の好循環につながりやすい」(冨田氏)との見方を示している。

その山田氏は「3%の賃上げを目指すなら、名目成長率がそれ以上でなければ企業は動かない。月例賃金アップを継続するためには将来の展望が必要だが、成長産業に人材を振り向ける雇用流動化や、国内市場縮小を食い止める人口減対策への本腰を入れた取り組みは遅れている」と指摘。「春闘賃上げや残業減など、安倍政権の政策は部分的には正しいが、全体像が見える形になっていない」と見ている。

目先の対策ばかりで、本来取り組むべき根本的な課題が残されたままでは、いずれ効果にも限界がくると警鐘を鳴らしている。

中川泉 編集:田巻一彦

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